ようするに、2030年、世界人口の3分の2は水不足に悩まされる(1)


『2030年 ジャック・アタリの未来予測』
不確実な世の中をサバイブせよ!
ジャック・アタリ   プレジデント社  2017/8/9



<80億人(2030年の世界の人口)>
・「起きるわけがない」と決めつけても、どんなことだって起こりうる。そうした最悪の事態を予測することこそが、最悪を回避する最善の手段なのだ。

<無秩序は大混乱に変わるだろう>
・世界全体の消費に占めるアジア地域の割合は、今日の10%から2030年には59%になる。年収が1万ドルから3万ドルまでの中国人世帯数は、2億2000万人以上になる。
 こうして、住宅、インフラ、医療、テレコミュニケーション、不動産、教育、娯楽、観光、贅沢のブームが世界中に起きる。そしてさらに、平和、秩序、自由、民主主義、人権に対する要求が高まり、これらの要求がイノベーションと独創力を促す。

<このままでは、世界は大混乱へと向かう>
・まったく逆に、先ほど述べたポジティブと思われる要素は害悪をもたらし、われわれは最悪へと向かう。
 世界経済が審判のいない市場に支配され続ける限り、それらの要素は権力者たちに横取りされ、現在の不均衡を悪化させるだけなのは理論的に明白だ。
 まず、技術進歩がどれだけ魅力的であっても、技術進歩によって雇用は破壊され、富のさらなる集中が加速する。
 次に、中産階級は自分たちの所有権が尊重されないことや、不法行為や犯罪が野放しにされることに不満を募らせる。中産階級は自分たちの子供の暮らしぶりが自分たちよりも悪くなり、民主主義が捨て去られるのではないかと心配する。

・最後に、地球規模の法整備がなければテロ活動は活発化し、集団と国家との紛争解決は困難をきわめるだろう。
 ようするに、それらのプラスの要素にもかかわらず、このように理論的に分析すると、2030年には、この世を耐え難く思う人々が現在よりも圧倒的に、ほとんどの人々がそのように感じると予測できる。あらゆる方策を講じても、経済、イデオロギー、政治に関する些細な危機が発生すれば、2030年、世界は大混乱に陥る。

<危機の洪水>
・世界が地球規模の法整備のない状態でマネー崇拝と利己主義というイデオロギーに支配され続け、われわれが自分たちの精神と「歴史」の方向性を軌道修正するために迅速に行動しなければ、つまり、地球規模で利他主義が根づくことがなければ、調和のない世界になるどころか危機が次々と訪れるだろう。

<人口学的観点からみたマイナス傾向>
・2015年から2030年にかけて、世界人口は高齢化する。世界人口の平均年齢は29歳から32歳になる。世界人口に高齢者が占める割合は、12%から18%になる。

・人口学の観点からは、世界人口の高齢化以外の切迫した問題も浮かび上がってくる。たとえば、東アジアと南アジアでは、女性の人口は男性より1億6000万人少ない。女性不足は、とくに中国、インド、パキスタン、バングラデシュで深刻化し、2030年には2億3400万人になる。これは、社会的緊張、移民、紛争などの原因になる。

・人口問題は、とくに破綻した国や機能不全に陥った国にきわめてネガティブな影響をおよぼす。

・たとえば、ニジュール国内にある農業に適した土地は、国土全体の12%にすぎない。独立当時は300万人だったニジュールの人口は、2016年には2000万人になり、2030年には3500万人になる見込みだ。サヘル地域の1人当たりのGDPは減少し、この地域の多くの若者たちは故郷を離れるだろう。
 したがって、人口学の観点からみると、未来は非常に暗く、そうした陰鬱な見通しはさまざまな予測に重くのしかかるのである。

<ますます悪化する公害>
・国連環境計画(UNEP)によれば、アフリカとアジアの途上国の都市部で発生するゴミの量は、今から2030年にかけて2倍になる。大半のゴミが放置されるため、大気、水、土壌が汚染される。海洋に漂うゴミの量は、現在の魚5トンにつきゴミ1トンの割合から、2025年には魚3トンにつきゴミ1トンにまで増える。このような海洋汚染により、世界中で毎年400億ドルの被害が生じる。

・国際的な対策を講じなければ、2030年ごろまでに大気中の温室効果ガスの濃度は37%増加する。そのころには対流圏オゾンの濃度の上昇によって早死にする人の数は、2000年と比較して4倍になっているだろう。同時期に、微粒子状物質が原因で早死にする人の数は2倍になる(2030年には360万人)。

・個人、地域、国、さらには世界レベルで、現時点では想像もできない大規模な行動を起こさなければ、今から2030年までに地球の二酸化炭素排出量は25%増える。排出量が増える主な地域はアジアだ。気候変動を抑制するには、2016年のだい21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)のパリ協定締結だけでは不充分だろう。

<気候変動による影響は深刻化>
・したがって、世界中で地球温暖化による影響が深刻化する。2035年ごろ、平均気温は0.5度上昇し、乾燥地域では降水量が減って熱波が頻繁に訪れ、高緯度地方では豪雨が増える。世界銀行によると、何の対策も講じなければ今から2035年までに、平均気温は2度も上昇するだろうという。
 アフリカのサブサハラ地域の平均気温は、今から2035年までに1.5度上昇すると予測されている。中央アジアと東ヨーロッパの永久凍土層は、こうした平均気温の上昇によってとけだし、土壌に閉じこめられているメタンガス(温室効果は二酸化炭素の25倍)が大量に噴出する恐れがある。2050年までにロシアの大気には、そうしたメタンガスの20~30%が放出されると予測されている。

・よって2030年ごろ、海面は少なくとも15センチメートル上昇すると思われる。地中海の海面が20センチメートルから50センチメートル上昇すると、最悪の場合では180万人のモロッコ人が洪水の犠牲になる。

・東南アジアの海面は、2030年ごろには75センチメートル、2080年ごろには110センチメートル上昇し、2100年頃にはバンコクの3分の2は水没するかもしれない。

・2016年の時点では、サンゴ礁には海洋生物種の30%が生息するといわれている。海水温の上昇も悪影響をもたらす。ほぼすべてのサンゴ礁が白化ないし絶滅してしまうのだ。そうなれば、5億人の人々の食糧事情は、深刻な事態に陥る。

<水資源の枯渇>
・世界人口の半分に飲料水を供給する地下水は、これまで以上に過剰に採取されるだろう。というのは、2030年までに水の需要は、35%増加するからだ。世界の水資源の1人当たりの年間利用可能量は、2030年には少なくとも5100立方メートルにまで減るだろう。ちなみに、1950年はその3倍、2016年はその2倍だった。
 ようするに、2030年、世界人口の3分の2は水不足に悩まされる。水不足の理由は、汚染された水は生活用水に適さないからである。
 水不足に悩まされる人々が今日の10億人から30億人になるのだ。
 そして「深刻な水不足」が発生する地域に18億人が暮らすことになる。たとえば、パキスタン、南アフリカ、インドと中国のいくつかの地域である。水は、石油をはじめとする一次産品よりも希少な財になるのだ。

<悪化する食糧事情>
・気候変動は、ロシア、カナダ、ウクライナにはプラスの影響をもたらすだろう。これらの国では農業生産性が向上する。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、21世紀、これらの国々とは反対に世界全体では、気候変動によって農産物の収穫量は10年ごとに2%減るという。国によっては、気候変動と水資源の枯渇により、多くの水を必要とする作物の収穫量は50%近くも急減する。
 
・アフリカでは1850年に存在した食物種の半数は絶滅し、トウモロコシ、キビ、モロコシなどの耕作地の半分がなくなる恐れがある。
 ラテンアメリカでは、春にアンデス山脈の雪解けによる水量が減り、5000万人の農民に影響が生じる。最貧層はミルクを購入できなくなる。
 魚に関しては、2030年ごろに、フィリピン南部の漁獲量は30%減る。
 一方、土壌汚染が進む。そして土壌の質とは関係なく、農産物の質は著しく低下する。
 要するに、世界の食糧事情は2040年ごろに最盛期を迎え、その後は悪化の一途をたどるのだ。その結果、農産物価格は急騰する。
 パキスタンとネパールは食糧を自給自足できなくなる。食糧を自給自足できなくなった国では、飢饉が再び蔓延する。

<移民の増加>
・気候変動、ヒトの移動の自由、地域間の生活レベルの違いなどの理由から、人類はこれまで以上にノマドになる。出生国を離れて暮らす人々の数は、2015年の2億4400万人から2030年には3億人になる。
 気候変動の影響を最も受けやすい国の一つとみられるバングラデシュからは、5000万人から6000万人の移民が発生すると思われる。フィリピンとアフガニスタンの人口の10%以上も、自然災害が原因で移民を強いられる。インドは700万人、中国は2200万人が毎年祖国を離れる。サヘル(マリ、グルキナファソ、ニジュール、ナイジェリアなどのサハラ砂漠南縁部に帯状に広がる地域)地域の人口の30%以上は、自然災害のためにこの地域から離れようとする。
 とくに、途上国から途上国への移民が急増する。アフリカのサブサハラ地域とアフリカの角(ソマリア全域とエチオピアの一部などを占める半島)からの大量の移民がアジアへ押し寄せる。
 国連によると、移民の純流入量は、北アメリカは1800万人、ヨーロッパは少なくとも1300万人になるという。

<イノベーションが労働市場に衝撃をもたらす>
・地球規模の法改革が行われず、人生や労働に新たな意義が見いだされないのなら、2030年には、技術進歩によって現在の雇用の半数以上は失われるだろう。まずは単純労働がなくなる。だが、これを埋め合わせるだけの雇用は創出されない。

・新たなテクノロジー、娯楽、教育、医療、ロボット工学などの分野で新たな雇用が創出されるが、それらだけでは失われた雇用を補填できない。

<富は集中し続ける>
・労働者間の競争により、賃金には下方圧力がかかり、労働組合は弱体化する一方だ。さらに、15年後には都市化率が50%から66%になるため、人々の絆は弱まり、格差社会における富の偏在は加速する。
 貧困は解消されるどころか増加する。
 2030年、アフリカ人口の40%の収入は1日当たり1.25ユーロ未満だ。彼らと対極にあるピラミッドの頂点に立つ世界の最富裕層の1%だけで、世界の富の54%を牛耳る。ちなみに、2015年は50%だった。
 こうした富の偏在は、とくに北アメリカにおいて顕著になる。北アメリカでは、最富裕層の1%が所有する富は、現在の富全体の63%から69%になる。

<不均衡の増幅>
<個人の自由の正体>
・個人の自由が行き過ぎると、個人的な楽しみが際限なく正当化される。そうなると誰もが自分のことしか関心を抱かなくなる。
 第一に、次世代に自由を保障するためなら、自分の命をなげうってでも成し遂げようとする者は現われなくなる。
 どんな人生であっても称賛に値し、すべての死は非業であり、個人の悲劇は国民的物語になる。死はまったく許容できないものになるのだ。
 軍隊は「戦死者ゼロ」を要求されるため、ロボットやドローンを利用する。兵士は、自分たちの代わりに戦うドローンや地上ロボットを遠隔操作する。
 2030年、ドローンは、偵察、分析、計画、反撃し、人間の介入なしに軍事的な決定を下すようになる。安全を確保するためのあらゆる業務において、数億台のドローンが兵士や警察官の補助をする。

<地政学的秩序の崩壊>
・他の大陸と比較してアジア諸国が急速に発展するため、国家間の均衡は急速に変化する。そうはいっても、2030年に政治、メディア、文化、イデオロギーの面で世界最大の勢力はアメリカだ。とくに、アメリカはGDP24兆ドル(2010年のドル換算)の世界最大の経済大国であるだろう。
 しかし、世界経済に占めるアメリカの割合は、2015年の23%から2030年には20%になる。アメリカとは反対に、中国とインドの割合は増加する。購買力平価換算のGDPでアメリカをすでに追い抜いた中国のGDPは18兆9000億ドル、インドのGDPは7兆3000億ドルに達する見込みだ。トップ集団の後続は、日本の6兆5000億ドル、ドイツの4兆3000億ドル、さらに下がってフランスの3兆5000億ドルだ。

・市場が民主主義を凌駕するという理論が語るように、企業はそれらの国家よりもさらに強力になる。トップ企業の売上高は大国のGDPを上回る。たとえば、アップル社の売上高は、2024年に4兆5000億ドルに達する(この会社が過去10年間の成長率を維持する場合)。これは2015年のフランスの2倍以上であり、2030年のインドのGDPの半分以上に相当する。2024年のアマゾン社の売上高は1兆ドルに達すると思われる。2025年の『フォーチュン500』にランキングされる上位6社(アップル、フェイスブック、アマゾン、グーグルなど)の売上高は、各社とも1兆ドルを超えるだろう。

<公的債務の膨張と財政支出の漸次削減>
・そうした状況において、国民は増税に反対するが、公的サービスを減らしたいわけではない。つまり、国民はますます利己的になり、公的サービスの財源を賄う重要性を理解しなくなるのだ。よって、政府は思うように増税できない。こうして公的および民間の赤字が増える。すなわち、公的および民間の債務が膨張して史上最悪の状態になる。
 この傾向が続くと、2035年ごろに世界の公的債務は、世界のGDP比で98%になる。2030年のアメリカの公的債務のGDP比は116%、日本は264%、ユーロ圏は97%だろう。公的債務の膨張により、金融関係者には巨額の資金が供給されるため、資産価格は期待収益とは関係なく急騰する{バブルの発生}。
 要するに、公的サービスの財源を賄うのがますます難しくなるのだ。

<公的サービスの衰退>
・こうした人口学的、財政的な状況において、国の財源は乏しくなり、公的サービスに対して高まる需要を賄えなくなる。
 第一に、インフラ設備のメンテナンスが困難になる。

・同様に、国民全員が利用できる医療体制は優先課題なのだが、これを維持するための財源が枯渇する。新たな医療技術や治療法を利用できるのは富裕層だけだ。医療格差が生じるのである。

<市民民主主義という理想の再考>
・民主主義に対する批判の声は次第に高まり、ついに民主主義は否定される。なぜなら、民主主義は意義を制御不能に陥るからだ。
 たとえば、民主主義の社会では、長期的な課題に対処できない、不人気な決定は下せない、技術進歩を一部の人のためにしか利用できない、気候変動に対処できない、移民を制御できない、社会の調和を保てない、国民の声を広く反映させられない、ましてや将来世代を考慮できない。

<激化する軍拡競争>
・一部の国(ロシア、中国、イラク、北朝鮮、シリア、イラン、インド、パキスタンなど)は、生物兵器の研究および製造の拠点をもち続ける。

<世界中で怒りが爆発>
<経済と金融の世界的危機を引き起こす6つの火種>
1、 中国では、不動産部門、公営企業、規制の対象外の金融業者の借金バブルがはじける。すると株式市場が暴落し、人民元が大幅に切り下げられ、世界の為替市場は危機に陥る。当然の結果として、クーデターが勃発する。最悪の場合では、中国は国境を封鎖し、保護主義という大波を引き起こす。中国の製造業は崩壊し、これが1次産品の価格を急落させる。そうなれば、世界経済は危機に陥る。
2、 保護主義の激化によって危機が発生する。競争と不況に直面し、保護主義と国家主権主義に閉じこもる国が増える。とくにEUとアメリカは、アジア地域からの輸入品や、メキシコ、中東、サヘル地域からの移民が大量に押し寄せるという恐怖心から、国境を閉じてしまおうという誘惑に駆られる。こうした傾向が顕著になれば、国際貿易は大きな危機を迎え、世界経済は崩壊する。
3、 ヨーロッパの危機は、次のように展開する。イタリアやドイツの銀行システムが崩壊する、あるいはユーロ圏の国が自国通貨への回帰を問う国民投票を行うため、それらの国から預金が流出する。この危機もヨーロッパだけにとどまらず、すぐに世界全体に波及する。
4、 国の巨額債務バブルの崩壊は、中央銀行が大量に供給する調達コストがほぼゼロの流動性によって引き起こされる。いずれにせよ、巨額の債務は維持できなくなり、金利と物価は急上昇する。とくに日本が抱えるリスクは著しく高い。その理由は、日本はすでにマネタイゼーション(日銀の国債買い入れ)を積極的に行なっているからであり、また、人口に占める退職者の割合が増えるため(彼らは生活のために預金を取り崩す)、今後5年の財政収支は赤字で推移するからだ。日本の危機により、日本円の価値は大幅に下落する。円暴落は、すべての政府の資産クラス[同じようなリターンやリスク特性を持つ対象投資になる資産の種類および分類]に影響をおよぼし、現金やゴールドへの逃避が加速し、世界経済は崩壊する。
5、 アメリカの金融危機は、アメリカ企業を含む企業に対してきわめて投機的なポジションで投資するシャドー・バンキング・システムの主要プレーヤーの破綻によって引き起こされる。この破綻によってアメリカの金融システムは崩壊し、未曾有の世界的な危機が発生する。
6、 原油価格に絡む危機は、テロ集団や海賊、さらには原油価格を1バレル当たり100ドル以上で推移させようと企む国が、ホルムズ海峡やマラッカ海峡を閉鎖することによって勃発する。この危機も世界経済に壊滅的な影響をおよぼす。

 それら6つの火種のどれかが危機を引き起こす可能性は日増しに高まるが、こうした地球規模の危機が一体どのくらいの被害をおよぼすかは、誰にもわからない。いずれにせよ、この危機により、少なくとも10年間は不況やデフレに見舞われる。

<世界大戦を勃発させる6つの起爆剤>
・次に、発生確率の高い順にそれらのシナリオを記す。
1、 東・南シナ海の危機
・この地域に位置する国々からさまざまな危機が発生する恐れがある。中国の現体制は、2022年に人口規模で追い抜かれるインドとの競争に脅威を感じる。中国の南沙諸島に人工島を建設していると主張するように、中国は世界最大勢力の座を早急に手に入れるために、尖閣諸島などがある日本の領海に人工島をつくるなど、挑発的な行動に出る。

・アメリカは日本を支援する一方、中国は北朝鮮を支援する。北朝鮮はアメリカに対して本格的な核攻撃を開始するかもしれない。そうなれば北アメリカでは5000万人の死者と2500万人から5000万人の負傷者が出る。

・北朝鮮は核兵器を使って日本も攻撃しようとする。そうなれば戦争になり、日本の同盟国であるアメリカも参戦する。

2、 旧ソビエト連邦における危機
・まず、ロシアはシベリアの管理をめぐって中国と衝突する。シベリアは温暖化の進行によってまもなく肥沃な大地になる。ロシアはクリミアとウクライナ東部の独立派の拠点地域を結ぶ細長い一帯を、またしても占領するだろう。アメリカとヨーロッパは、ロシアのこうした侵略を思いとどまらせるためにウクライナへの支援を強化する。ウクライナに武器を供与し、北大西洋条約機構(NATO)にウクライナを加盟させることを検討する。アメリカとヨーロッパのこうした動きを開戦事由と解釈するロシア政府は、アメリカに向けて先制攻撃を仕掛ける。

3、 パキスタンの核戦略
・パキスタン出身のテロ集団がインドに攻撃を仕掛けるのであれば、インドの精鋭部隊は従来型の攻撃を開始し、国境近くに位置する核弾頭が格納してあるパキスタンの軍事基地を攻撃しようとする。そうなれば、パキスタンはインド軍の侵攻を食い止めるために、自国の戦術核兵器を利用する武力行使を決断する。一方、インドは、「戦術的利用」と徹底的な破壊を目的とする戦略的利用を区別せず、核兵器による全面的な反撃に出る。この戦争によっても世界規模の核戦争が勃発する恐れがある。

4、 中東の危機
・中東の危機にはいくつかのシナリオが考えられる。
 まず、シリア発の危機を語る。シリア政権は、2030年以前に崩壊する恐れがある。シリア政権が崩壊すれば、イラン政権は強化され、レバノンで内戦が起き、パレスチナはイスラエルを追い出そうとする。そうなれば、イスラエルは、アパルトヘイト時代の南アフリカ共和国のような国になるか、パレスチナによる核攻撃を受けるかである。

5、 サヘル地区とアフリカの角{ソマリア全域とエチオピアの一部}における危機
・コートジボワールからケニア、そしてニジュールからエチオピアと、アフリカ全土でテロ組織の活動が活発化する。

6、 イスラーム国
・イスラーム国が内戦を起こそうとして疲弊するまでの間、西洋とイスラームの全面戦争の環境がつくり出される。

<異常事態>
・人類を全滅させる大惨事は他にもたくさんある。それらは2030年以前に明かになるだろう。たとえば、数十億人の人々が水不足に襲われる、大勢の人々が命を落とすまで治療法のわからない新型ウイルスが発生する、地球温暖化が予想を上回る速度で進行する、遺伝子工学の実験室で取り返しのつかない失敗が起きる、人工知能が人類を消滅させる決定を下す、狂った武器商人が顧客に掘り出し物の兵器を使うようにそそのかすなどだ。2030年までにこれらの異常事態のいくつかが起きるかもしれない。そうなれば20世紀に2度起きた世界大戦が再び勃発する恐れがある。

<不透明な中国の経済成長>
<中国がアメリカの超大国としての地位を継承することはない>
・中国では、過剰投資が継続し、内需不足であり、生産設備に恐ろしいほどの無駄がある。貧富の差は拡大している。とくに都市部と農村部では収入が3倍も異なるなど、国民の間に著しい格差がある。企業と銀行は過剰債務であり、破綻寸前だ。
 天然資源の希少性は高まっている。中国の原油輸入依存度はすでに58%だ。国内の耕作可能な土地の20%はすでに汚染されているため、中国は食糧のさらなる輸入を強いられている。

・中国では公害により、毎年160万人が早死している(死者の17%に相当)。1日当たりの計算では4400人になる。中国の大都市で暮らすのは、1日当たり40本のタバコを吸うのに等しいくらい健康に悪い。
 国家主席になった習近平は、前任者たちと異なり、安定的な支持基盤をもたない。その理由は、国家主席に就任して以来、多数の高官を逮捕し、相次ぐ大規模抗議デモを暴力でねじ伏せ、そしてメディアの規制を強化したからである。



『世界がもし100億人になったなら』
スティ-ブン・エモット  マガジンハウス  2013/8/26



<わたしたちはこれから、どうなるのでしょう。>
・(食料)現在の農業のやり方と消費のペースで、100億人を食べさせられる手段は、今のわたしたちにはありません。

・(水)今世紀末までに地球上のかなりの場所で、使える水が満足に手に入らなくなり、数十億人が極度の水不足で暮らすことになります。

・(エネルギー)エネルギー生産を今のまま石油、石炭、天然ガス中心にするなら、3万6000基の火力発電所が必要です。

・(病気)日々、数百万人の人が世界中を移動することで、感染性の疾患の新たな大流行が起こりやすくなっています。

・(気温)世界の平均気温は4~6℃上昇する可能性があり、そうなったら、地球は地獄と化すでしょう。

・よほどの馬鹿でないかぎり、地球が支えられる人口には限度があることは否定しないでしょう。問題は、それが70億(現在の人口)なのか、100億なのか、280億なのか、ということです。もう限度を超えている、とわたしは思います。それを大きく超えていると。

<わたしたちが今置かれている状況は、まさにかつてない危機と呼ぶにふさわしいものです。>
<現在、10億人以上の人々が、深刻な水不足の状況のもとで暮らしています。>
・その一方で、わたしたちの水の消費は急激に増えています。
地球上で手に入る真水の実に70パーセントが、農業用の感慨に使用されています。

・この水の多くは、「帯水層」と呼ばれる地下の水脈から来ています。この地下水がいまや、補充される量をはるかに上回るペースで消費されています。しかも、わたしたちは今世紀中に、大幅に灌漑を増やさなければなりません。

・100年前の世界の水使用量は、年に約600立方キロメートル(㎦)でした。現在は(控えめに見積もっても)年に4000㎦です。2025年には、少なくとも年に6000㎦に達するとみられます。水の使用量は、人口増加の倍のペースで増加しています。

・わたしたちの水の使用は、べつの形でも急激に増えています。重要でありながら、あまり知られていない水使用の増加の要素に、「仮想水(バーチャルウォーター)」というものがあります。

・「仮想水」とは、わたしたちの消費する鶏肉や牛肉、綿、自動車、チョコレート、携帯電話など、ふつうは水を含んでいると考えられていないものをつくるために使われる水のことです。

・たとえば、ハンバーガーを1個つくるのに、およそ3000リットルの水が必要です。2012年には、イギリスだけで約50億個のハンバーガーが消費されました。つまり、イギリスだけで15兆リットルの水がハンバーガーのために使われたということです。アメリカでは、2012年に約140億個のハンバーガーが消費されました。ハンバーガーをつくるために、アメリカでおよそ42兆リットルの水が使われたのです。たった1年間で。

・食用のニワトリを1羽育てるのに、およそ9000リットルの水が必要です。2012年には、イギリスだけで約10億羽のニワトリが消費されました。

・1キログラムのチョコレートをつくるのに、およそ2万7000リットルの水が必要です。板チョコ1枚あたり、約2700リットルの水が使われるということです。

・ところで、パジャマについても残念なお知らせがあります。綿のパジャマを1着つくるのに9000リットルの水が必要なのです。

・何より皮肉なのは、1リットルの水を入れるペットボトルをつくるのに、およそ4リットルの水が必要だということです。2012年、イギリスだけで90億本の水のペットボトルが買われ、飲んだあと捨てられています。

・半導体チップをひとつつくるのに、約72リットルの水が必要です。2012年にはざっと30億個ほどのチップがつくられました。半導体チップにおよそ2000億リットルの水が使われたのです。

<ようするに、わたしたちは食料と同様、明らかに持続不能なペースで水を消費しているということです。>
<「ピークオイル」という言葉をよく耳にするようになっています。>
・これは石油の採掘量が最大(ピーク)に達する時点のことで、それを過ぎると、石油のとれる量は減少していくと言われます。

・一般には、ピークオイルはすでに過ぎていて、まもなく石油や天然ガスが枯渇し、世界的なエネルギー危機が到来するという説が信じられています。しかし、これはほぼ確実に誤りです。

・まだ膨大な量の石油と天然ガスが残っています。しかも、ブラジルや北極で、毎年のように大規模な油田やガス田が新たに発見されています。さらには、世界のエネルギー情勢に革命を起こしたシェールオイルとシェールガスもあります。したがって、わたしは化石燃料が尽きてしまうことは心配していません。

・石油や天然ガスの消費量が世界的に増えているだけではありません。石炭の使用量も増えています。イギリスでさえ、エネルギー生産に使用する石炭の量を2012年に31パーセントも増やしています。

・政治家と企業のせいで、そしてわたしたち自身の愚かさのせいで、わたしたちがこれからも、石油や天然ガスや石炭への致命的な依存をやめられないだろうと思える一方で、数億人という人々が毎日、生活のために木を燃やしていることも指摘しておくべきでしょう。

<ブラックカーボン>
・現在、煮炊きへの薪の使用が、アフリカの一部では深刻な森林破壊の原因となっています。アフリカやアジアで薪や炭が広く煮炊きに使われているせいで、いわゆる「ブラックカーボン」、つまり煤がかつてない量で発生しています。現在、毎年発生するブラックカーボンの量は、中世全体で発生した総量を上回ります。

<短期的な気候不順と長期的な気候変動の両方の重要な一因>
・しかし、ブラックカーボンは、毎日の生活のために薪や炭を燃やしている貧しい国の貧しい人々からだけ発生しているのではありません。豊かな国(イギリスやドイツやアメリカやカナダやオーストラリア)の豊かな人々(つまりわたしたち)が、自動車や船や飛行機で移動したり、様々な品物を運ぶことによっても発生しています。

<「褐色雲」>
・発展途上国で薪や炭を燃やすことにより発生するブラックカーボンと、先進国で自動車や船や飛行機や工場により発生するブラックカーボンが合わさって、「褐色雲」と呼ばれる大気汚染物質が生まれています。

・この褐色雲は、呼吸器系の疾患や寿命の短縮という形で、人の健康にきわめて重大な悪影響を与えています。褐色雲による汚染の影響を受けている人は、世界中で約30億人とも言われます。

・主要な二酸化炭素排出源のひとつである石炭の使用量は、年々増えています。わたしたちが消費するさまざまな品物をつくって運ぶために使われているのです。アメリカから中国への石炭輸出量は2011年から2012年にかけて倍増しました。アメリカ人が消費するものをつくる工場に電力や動力を供給するためです。できた品物はアメリカに輸出されます。ようするに、アメリカは二酸化炭素排出を輸出しているのです。わたしたちはこれからも、石炭、石油、天然ガスに依存し続けるでしょう。

<1900年以降に製造された自動車の総数は、20億台を越えます>
・そして、現在の需要に基づくと、今後40年で、さらに40億台の自動車が製造される可能性があります。

<車1台にどれだけのコストがかっているのか見てみましょう。>
・まず、自動車の車体の原料となる鉄鉱石を、オーストラリアかどこかで掘ってくる必要があります。次に、それを大きな汚染のもととなる巨大な船で、インドネシアやブラジルに運び、鉄鋼を生産します。

・タイヤも製造しなければなりません。ゴムはマレーシアやタイやインドネシアで生産されます。生産されたゴムは、タイヤを製造する国に運ばれます。

・車のダッシュボードの原料となるプラスチックは、もとをたどれば地中の石油です。

・車のシート用の革は、動物からとられます。革をとるために牛には、多くの水と多くのえさが必要です。

・バッテリーが使われる鉛は、まず中国などで掘り、それから輸送して、バッテリーを製造する必要があります。

<1台の車が組み立てられる前に、これだけのことが起きています。>
・しかも、これはあなたがその車に1リットルのガソリンも入れず、気候問題のさらなる悪化に手を貸していないうちの話です。
 さて、車1台にどれだけのコストがかかっているでしょう。間違いなく大金です。

<車1台を生産する本当のコストは、いずれ誰かが払わなければなりません>
・しかし、あなたは本当のコストを、つまり環境悪化、鉱物の採取や生産加工や輸送による汚染、それによる生態系の破壊と気候変動によるコストを払う必要はありません。それは経済学者の言うところの「外部性」というものです。

<どの方面に目を向けても、人口100億人の地球は悪夢以外の何ものでもありません。>
・さらに心配なことに、地球の生態系が壊滅的なティッピング・ポイントを迎える可能性があるというだけでなく、すでにそのような域に近づきつつあるという有力な証拠もあります。

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