最低賃金が低いこと。ここにすべての問題の根源があります。(1)


『日本人の勝算』
人口減少 × 高齢化 × 資本主義
デービッド・アトキンソン   東洋経済新報社 2019/1/11



<デフレスパイラル>
・たしかにアベノミクスによって、行き過ぎた円高が是正され、時価も大幅に上昇しました。また、日本企業の中には過去最高の利益を稼ぎ出すところも少なくありません。やらないよりもやったほうがよかったのは明らかです。一見すると、アベノミクスによって日本経済は快方に向かっているように映ります。
 しかし、今の状態は一時的に成果が出ている踊り場のようなものです。私は、経済政策を大きく変えなければ、今後これまで以上に深刻なデフレが襲ってくると分析しています。

・これから高齢化によるデフレ圧力が高まり、2020年以降にピークを迎えます。2020年以降は人口減少によるデフレ圧力がますます深刻化します。デフレスパイラルが訪れる可能性が高いのです。

<まず「最悪のシナリオ」を想定して事前対応しよう>
・先ほど述べたように、今ここで政策を大きく転換しないと、日本はこれまで以上に深刻なデフレの世界へ突入します。最大斜度の急降下は目の前に迫っているのです。今回こそ「事前の対応」が求められるのです。

<最新の研究では、日本の「デフレリスク」は最強:需要要因>
・日本がこれから体験する急降下の需要サイドの要因は、2つあります。1つは高齢化、もう1つは言うまでもなく人口の激減です。

・世界全体では、2060年までに人口が36.1%増加すると予測されています。欧米全体で見ると、少子高齢化は進んでも、人口は減りません。「欧州の中には、人口が減少する国もある」と反論される方もいるかもしれませんが、日本とは規模がまるで違います。
 アメリカは2060年までに、人口が25.2%増えます。日本を除くG7は14.9%増です。韓国も日本と同じように人口が減って大変だとよく言われていますが、それでも5.6%減です。一方の日本は32.1%減で、まったく次元が違います。
 本来であれば、日本の研究者は、人口減少と経済について世界でもっとも先端的な研究をしているべきなのですが、私にはそうは見えません。

・「日本は少子高齢化と人口減少問題を同時に考えなくてはいけない、唯一の先進国である」。これが重要なポイントです。
 海外の分析をまとめると、人口減少はそれだけで強烈なデフレ要因です。少子高齢化は人口減少によるデフレに拍車をかけ、さらにデフレを深刻化させます。そうしてデフレは雪だるま式に膨らんでいき、どんどん深刻化していきます。
 いったんこの負のスパイラルが始まってしまうと、そう簡単に止めることはできなくなるのです。

① 人口減少は最強のデフレ圧力
・日本経済のデフレリスクの主因は人口減少にあります。

・人口動向とインフレ率は、主に不動産の価格から発生するメカニズムによって結びついています。

・つまり、不動産ストックはなかなか減らないので、人口減少が始まると不動産の価格が下がり、物価全体に与える影響が増大すると考えられるのです。

・日本ではこれから本格的に人口が減るので、対策を打たなければ、不動産部門から強烈なデフレ圧力を受けることは必至なのです。

② 少子高齢化によるデフレ圧力
・これらの分析結果をトータルして考えると、人口減少のほうが大きな影響を及ぼすものの、少子高齢化もデフレ要因になると判断していいでしょう。日本の人口動態を見れば、ほとんど最悪の組み合わせに近いと言っても過言ではありません。

③ 政治的なデフレ圧力
・1つは政治的なデフレ圧力です。主な収入源が給料である若い人はインフレを好む傾向がある一方、65歳以上の高齢者層は、資産を持っていますが収入は少ないので、デフレを好む傾向があるというのです。

④ 産業構造の変化によるデフレ圧力
・日本は他国にさきがけて高齢化が進んでいるので、介護などの需要が先行して増加しています。これらの分野は国の規制が強く、生産性がきわめて低いため、やはりかなりのデフレ要因となると考えられます。

⑤ 外国資産売却によるデフレ圧力
・資産の中には外国資産も含まれます。これらが売られることにより、円高につながって、デフレ圧力が増すと考えられます。

<最新の研究では、日本の「デフレリスク」は最強:供給要因>
① 起業の生き残り競争によるデフレ圧力
・日本ではこれから人口が減るので、学校、美容室、食料品、車、住宅などなど、人間の数に依存するモノとサービスの需要が減ります。

・もちろん該当する市場は縮小を余儀なくされますので、企業間の生き残り競争は厳しさを増します。

・生き残りのためのもっとも安易な戦略は、価格を下げて他の企業の体力を奪い、倒産に追い込むことです。最後まで残った企業は競争相手がいなくなるので、大きな利益を得ます。これを「Last man standing利益」といいます。

② 労働分配率の低下によるデフレ圧力
・日本でも労働分配率は著しく下がっています。財務省が2018年9月に発表した2017年度の労働分配率は66.2%で、43年ぶりの低水準となりました。

③ 最低賃金が低いことによるデフレ圧力
・日本の場合、最低賃金が国際的に見てかなり低いことも、デフレの大きな要因になっています。

・このように、企業の生き残りのしわ寄せが労働者に回ってきているのが、日本という国です。人口が増えていた時代とは違い、人口減少により需要が減る中では、商品の価格を下げても総需要の喚起につながりません。賃金のさらなる引き下げは、デフレスパイラルの引き金となるだけです。そのため、最低賃金の低さがデフレ圧力の根源となるのです。
 その証拠に日本では、実際に最低賃金で雇用されている人が増えています。このまま放置すれば、今後さらにデフレ圧力が強まる可能性が高いでしょう。

④ 低賃金の外国人労働者を迎えることによるデフレ圧力
・結果として、途上国からの労働力が増えれば増えるほど、日本という国は「途上国」になっていきます。

・日本では今後、最強のデフレ圧力となる人口減少に加え、さまざまなデフレ圧力が複合的に強まっていきます。政策的な供給調整をしなければ、企業は市場原理に基づいた生き残り戦略をとるため、今まで以上にデフレ圧力が生じることは避けられません。

<量的緩和の効果と人口動態>
・一方、「金融政策でインフレ誘導できる」と主張する人もいます。

<世界的にマネタリズムの効果は薄れている>
・いずれにしても、インフレ率は金融政策だけでは決まらないというのが、最近の経済学のトレンドになってきているのは確かです。しかし、日本の学者と民間エコノミストの多くは考え方が古いようで、相変わらず人口は関係ないと言い張っている人が多く、世界のトレンドに追いついていません。

<人口減少化には量的緩和は効かない>
・つまり、量的緩和で物価が上がると主張している人は、需要者が一定であると想定しているのです。日銀の2%インフレ目標が実現されない最大の理由はここにあると思います。人口減少問題を抱えている国では供給調整を行わない場合、通貨の量を増やすだけでは、人口が引き続き増加している国々と同じ2%インフレを実現することは非現実的でしょう。

<人口減少と高齢化と総需要>
・つまり、人口が増えて平均年齢が低い場合には量的緩和の効果は大きい一方、人口が減って、なおかつ高齢化している場合、銀行からの借入れニーズが減るので、その効果はきわめて限定的になるのです。

<空き家比率と金融緩和の現界>
・しかし、日本はアメリカのようにはなりません。人口が激減するからです。しかも、高齢化も進んでいます。すでに住宅を所有している人が多い上、少子化によって、これから住宅を購入する層はどんどん減っていきます。しかし、住宅の数はすぐには減らないので、空き家比率は上がる一方です。

<必要なのは継続的な賃上げ>
・それが「賃上げ」です。通貨量をきちんと増やしながら、賃上げを継続していく。それができれば、総需要は縮小せず、モノとサービスの均衡が回復して、インフレを実現することも可能です。

<高付加価値・高所得」資本主義への転換>
・日本は福祉制度を維持するためにも、生産性向上を継続的に実現する経済モデルに切り替える必要がある。
 今の人口増加経済モデルから、人口減少経済モデルである「高付加価値・高所得」資本主義に切り替えることが不可欠だ。

<デフレ圧力の常態化>
・人口減少と高齢化によって日本経済のデフレ圧力はこれからいよいよ本格化し、常態化する。金融政策だけでは対処できない。必要なのは「賃上げ」によるインフレ誘導策だ。

<海外市場を目指せ>
<供給過剰を調整するための輸出振興>
・デフレ圧力を緩和するには、人口減少と高齢化による供給過剰を調整することが必要だ。
 過剰になった供給の一部は、輸出に振り向けることによって調整できる。
 輸出は生産性向上にも大きく寄与するが、輸出するためには事前に生産性を向上させる必要がある。

<日本は輸入比率がきわめて低い>
・なぜ、ここで私が輸入と生産性の関係を分析した結果を紹介しているかというと、日本の輸入比率が輸出比率よりもさらに低く、世界的に見てもきわめて低い水準だからです。
 以前は原材料以外に関して、輸入は少ないほうがいいと考えられてきました。しかし近年、技術の進歩とグローバリゼーションの進展にともない、先進国から中間財を賢く輸入する政策には、大きなメリットがあることがわかってきました。

<観光業も、まずはアジアからだった>
・日本の輸出を増やすのは、人口が減って過剰になる設備を有効利用する1つの方策になります。しかし、各種の分析の結果を見るかぎり、輸出を増やすのには、まず生産性を高めてからでないと難しいという結論が導かれます。
 日本の生産性は、他国と比較すると相対的にかなり低いので、今のところ、多くの企業の場合、日本より生産性の低い国、すなわち途上国に輸出するのがもっとも現実的でしょう。

<企業規模を拡大せよ――「日本人の底力」は大企業でこそ生きる>
<日本には小さな企業が多すぎる>
<企業規模拡大のためのM&A促進>
・日本の生産性を高めるためにもっとも重要なのは、企業の平均規模を大きくすることである。
 今の平均規模はあまりにも小さく、生産性に大きな悪影響を及ぼしている。
 人口が減少する中、企業規模を拡大するには「企業の統合促進」が不可欠である。

・ならば、なぜ人材評価で世界第4位の日本の生産性が、第28位なのか。ずっとその原因を探ってきたのですが、きわめて小さい企業に働いている日本人の割合がスペインやイタリアとあまり変わらないことを発見し、その謎がやっと解けました。大発見だと思います。
 逆に、アメリカの人材評価は第24位ですが、生産性は第9位となっています。これを企業規模で説明できます。従業員数が250人以上の企業で働くアメリカ人労働者の比率が49.8%にのぼるのに対し、日本はたった12.9%にすぎないのです。この発見もきわめて重要です。

・この本ではさまざまな分析を紹介していますが、生産性、女性活躍、研究開発、輸出、技術の普及率、人材育成トレーニング制度など、日本が抱えているさまざまな問題の根源を究極的に探っていくと、小規模企業に勤める労働者比率の高さに行きつきます。

<企業規模の拡大は原因ではなく結果>
・ただ単に規模が大きければ生産性が高まるのではなく、生産性を追求することによって、結果としてある程度の規模が必要とされる。

<サービス業こそ、企業規模が大事>
・同じカナダ銀行の論文に、大変興味深い記述がありました。付加価値に関しては、大企業と中小企業の差は、製造業よりサービス業においてより大きいというのです。

<企業統合は社員の給料を上げる>
・企業の規模が大きくなると、その企業の安定性と持続性が高くなり、生産性も追求できます。存続が難しい中小企業が統合し、規模を大きくすれば、生産性が上がって持続性も高まり、給料も増やせます。

<企業統合促進策>
・国が生産性向上を国策として宣言し、企業統合促進のための政策を実行することによって、明確な方向性を示すと同時に民間にインセンティブを与えることができます。しかし、人間は正論だからといって、素直に動いてくれるとはかぎりません。

<最低賃金を引き上げよ――「正当な評価」は人を動かす>
<最低賃金引き上げで生産性を高める>
・世界経済の成長は、ますます生産性向上に依存するようになりつつある。
 最低賃金を継続的に引き上げることで、生産性をつり上げることが可能だろうか。今、世界中で実験が行われている。

<最大の問題は経営者にある>
・マッキンゼーも指摘していますが、生産性向上は以前のように各企業に任せておける問題ではなくなりました。先進国ではすでに、国策として国が主導しなくてはいけない時代を迎えているのです。

<生産性と最低賃金>
・現在、欧州を中心に、生産性を向上させる効果がもっとも期待され、実施されている経済政策は、継続的な最低賃金の引上げです。最低賃金と生産性の間に、強い相関関係が認められるからです。

・最低賃金を引き上げている国には、ある共通の特徴があります。それは、今後大きな人口の伸びが期待できないことです。つまり、人口が増えることによって経済が成長することはもう期待できないので、かわりに生産性を向上させることに対して、強い関心を抱いているのです。

・最低賃金が注目されている理由はもう1つあります。経済への影響度合い、普及率です。最低賃金は非上場企業を含めて、すべての企業に影響を及ぼします。だから政策として使うのに都合がいいと考えられているのです。

<最低賃金引き上げが望ましい6つの理由>
① もっとも生産性の低い企業をターゲットにできる
② 効果は上に波及する
③ 消費への影響が大きい
④ 雇用を増やすことも可能
⑤ 労働組合の弱体化
⑥ 生産性向上を「強制」できる

<イギリスの最低賃金導入の経験>
① イギリスには「最低賃金」がなかった
② イギリスは生産性が引くかった
③ 徹底的な検証がなされている
④ 経済規模が大きい

<最低賃金を引き上げると失業者が増えるのか >
・日本で最低賃金を引き上げるべきだという議論をすると、「最低賃金を引き上げたら、失業者が大量に増える」という反論が巻き起こります。

・その結果、もともと最低賃金が設定されていた場合、最低賃金の水準を引き上げても、総じて雇用が減少することはないと断言しています。ただ、全体としては雇用へ影響がないものの、たとえば女性パートタイムワーカーなど、特定の分野では影響が確認された分析もあるといいます。

・この論文ではさらに、最低賃金の引き上げ率は15%がベストだと推測しています。
 これ以上になると次第に悪影響が出始め、24%の引き上げともなると、雇用は2.75%減るとの分析結果が示されています。

<韓国の2018年の最低賃金の教訓>
・先ほど、最低賃金の極端な引き上げは雇用に悪影響をもたらすという研究結果を紹介しました。それをやってしまった国があるので、ご紹介します。
 日本の最低賃金を引き上げるべきだと主張すると、必ず反論が沸き上がります。その反論の根拠として使われるのが、韓国で2018年1月に実施された16%の引き上げです。

・韓国とは対照的に、イギリスでは最低賃金を導入し、徐々にその水準を上げていますが、雇用に悪影響は出ていません。イギリスは今まで20回にわたって、平均して年間4.17%引き上げてきました。もっとも大きい引き上げ率は2001年から2002年の10.81%ですが、それ以降、3回も7%の引き上げを実施しています。にもかかわらず、雇用への悪影響は出ていないという事実は、見逃すべきではないでしょう。

<生産性向上か、価格転嫁か、利益減少か>
・日本では、最低賃金を大きく引き上げるべきだという指摘をすると、必ずと言っていいほど「雇用が減る」という反論が返ってきます。しかしイギリスでの調査によると、生産性を高めると答えた経営者は、社員数を減らすと答えた経営者の約2倍にのぼりました。これは注目すべき結果だと思います。

<技術革新の普及と最低賃金>
・先ほどイギリスの例として、最低賃金を引き上げても、相当数の企業では雇用が減らず、利益が減っても廃業は増えなかったと紹介しました。これらの事実から、そもそも最低賃金で働く労働者の大半が、企業に「搾取されていた」という結論が導かれています。

<アメリカと最低賃金>
・しかし、アメリカの学会では、最低賃金に猛烈に反対する機運があります。「貧困撲滅には効果がない」「失業者が必ず大きく増える」などという指摘がいまだに挙げられています。

・最低賃金で働いている人の属性から考えると、アメリカにおける最低賃金引き上げは白人から黒人・ヒスパニックへの所得移転という側面があり、政治的に複雑なのです。
 このような条件の下、アメリカでは福祉制度もあまり充実していません。もしかしたら、アメリカのような極端な自由資本主義の国には、最低賃金という政策自体が馴染まないのかもしれません。

・新古典派の経済学が示唆する単純で非現実的な理屈が否定された今、上手に最低賃金を引き上げる政策が、経済成長、女性活躍、格差の是正、福祉問題、財政問題など、ありとあらゆる分野における問題の解決に大きく貢献するのではないかと期待されています。

<日本に好循環をもたらす「要石」の政策>
・あまりにも影響が巨大な人口減少・高齢化に対応するためには、全企業が賃上げに向かうことが不可欠である。
 政府にとっては、全員を動かすためにどうすればいいのかが最大の課題だ。
 それには継続的な最低賃金引き上げの役割が絶大。できなければ、国が破綻する。

<潜在能力だけでは飯は食えない>
・先ほど説明したように、日本には優秀な人材が山ほどいるのに、生産性は先進国最低水準です。
 このことを別の言葉で表現すると、日本は潜在能力はすごいけれど、成果や実績が出せていないということになります。

・繰り返しますが、日本は、人材評価は第4位ですが、生産性は第28位です。潜在能力が十分に発揮できていないのは明らかです。

・私がこういう意見を言うと、「ただの白人のお金儲け主義ではないか」と言われそうですが、そういうことはありません。年金、借金、医療費、子どもの教育費などは、潜在能力では支払えないと言いたいのです。世界一特許が多いと言っても、世界一使われていないのならば、ただの自慢でしかありません。

<国家として許せなくなった「美徳」>
・財政にも同じことが言えます。財政が厳しいから、税率を引き上げる。これが、政府や財務省がいつも言っている理屈です。
 しかしながら、税率を引き上げるだけではなく、政府がとれる選択肢はもう1つあります。所得を引き上げれば、税率を引き上げなくても財政は改善するのです。

<最低賃金と移民政策>
・企業がビジネスモデルを変えずに、今までどおりに人手依存型の構造を継続すると、日本人労働者の減少によって人手不足になります。当然、労働者の給料水準は上がり始めます。
 ここで対策として生産性向上を図ればいいのに、現状を維持したまま足りなくなった日本人を外国人労働者で代替えしようとするのが、多くの日本の経営者です。

<技術革新は日本を救わない>
<最低賃金が低いこと。ここにすべての問題の根源があります。>
・組織や仕事のやり方を刷新できるか否かは、企業の「機敏性」がものを言います。

・実は生産性向上と「技術革新」の相関係数は意外に低く、0.56です。

・日本はすでに、過当競争だと評価されています。しかも、これから人口が減って、需要が少なくなります。適切な政策を打たなければ、過当競争の度合いが、さらにひどくなる可能性が非常に高いのです。

<日本の生産性問題はどこにあるのか>
・この全要素生産性は、日本のいちばんの弱みかもしれません。人と機械をどう組み合わせるか。技術革新がどこまで多くの企業に普及しているか。新しい技術を活用するために今までの組織、仕事のやり方を変えられるか。技術進歩によって廃れた仕事を業界の反対を押しつぶしてでもやめられるか。

<「解雇規制緩和は生産性を高めない」のは世界の常識>
・解雇規制を緩和したら、生産性は言われているほど上がるのでしょうか。
 実際に相関関係を算出してみると、先進国の場合、解雇規制と生産性の相関関係はあまり強くないのがわかります。実は、解雇規制と生産性の相関係数を計算すると、かなり低い0.32でした。

<今ならまだ、日本人には「勝算」があります>
<最低賃金の継続的な引き上げ>
・まずは所得を継続的に上げる事です。その結果、生産性が上がります。それには企業の規模を大きくする必要がある。それによって輸出もできるようになる。技術の普及も進む。所得が増えるから、税収が増える。株価も上がる。財政が健全化する。要するに、今の悪循環を好循環に変えることができるのです。

・あまり意識している人はいないようですが、日本は世界でいちばん、経済成長を生産性向上で賄わなくてはいけない国なのです。



『新・生産性立国論』
デービッド・アトキンソン  東洋経済新報社 2018/2/23
人口減少で「経済の常識」が根本から変わった



<人口減少はすべてを変える>
・人口が減少しても、ロボットやAIを活用したり、移民を受け入れたりすれば、何とかなると主張する人がいます。しかし、この主張は明らかに日本の人口減少問題の深刻さを過小評価しています。
 人口減少によって、今までの常識はすべて覆されます。人口激増が可能にした寛容な社会も、曖昧な制度も、日本的資本主義も、すべて根底から崩れ去ります。経済の常識も、企業と労働者の関係も、政治のあり方も、これまでとはまったく異なるものになるでしょう。

<かつて、これからの日本と同等の「人口減少」を経験した地域があった>
・実は人類の歴史上、これからの日本と同じように比較的短い期間に人口が激減し、その結果、社会がガラッと様変わりしてしまった先例があります。それは1348年以降、欧州で起きた黒死病、ペスト大流行の時代です。ペストが流行した後、30年ほどで欧州では人口の約半数が亡くなりました。その結果、欧州の社会は激変し、社会制度が根っこから崩壊しました。

<労働者の質が高い日本なら人口減少に勝てる>
・国連などのさまざまな調査で、日本の労働者の質は世界最高レベルと太鼓判が押されています。しかし、日本の生産性は先進国最低レベルです。これは、日本の経営者が奇跡的に無能であるということを意味しています。

・生産性を向上させることによって、日本の労働者は豊かになり、ワーキングプアは消え、貧困に窮している子供たちが救われ、日本社会全体が幸せになります。

<「日本は特別」という幻想を捨てよう>
・しかし私は、日本が成し遂げた戦後の大きな成長は、人口の激増とそれにともなう内需の拡大が主要因だったと分析しています。たとえば日本では昭和30年から昭和40年たった10年の間に、労働者が1000万人から2100万人まで増えました。だからこそ、日本は高度成長を果たしたのです。

<日本が経済大国なのは「人口大国」だから>
・日本人が勤勉なことや、高い技術力があることは先進国になるための必須条件なのであって当たり前。高度成長の秘密として大々的に取り上げるべき主因ではありません。
 一方、日本がGDPで世界第3位の経済大国になっている主な要因として決して忘れてはいけないのが、人口の多さです。

・日本や日本企業が特異だから、日本経済が戦後急速な発展を遂げたのではなく、他の国にも共通する、ごく普通の理由によって日本経済が成長したという前提に立てば、日本も他の先進国と同じように、普通の方策で改革できます。

・「日本は特別だから普通の経済合理性があてはまらない」という考え方があっからこそ、普通の国では考えられない「失われた25年間」があったのです。実際、世界銀行のデータによると、1990年から2014年までの日本の生産性向上率は世界156カ国中第126位でした。先進国では最低で、アフリカ諸国並みの低さです。

<「事実」を重視すれば日本経済は甦る>
<人口問題はすべて「数字」で語れる>
<問題の根源は「高齢者が減らない」こと>
・生産年齢人口のほうが国民全体より大きく減るのは、高齢者が減らないからです。生産年齢人口が減ることのほうが、国民全体の減少より経済に大きなインパクトがある。

<「5人に2人が移民」に耐えられるか>
・どの程度の規模の移民が必要かを試算せず「移民を迎えればよい」と主張するのは、感覚的な空論です。
 日本の経済を維持するのに必要な3419万6000人の移民を受け入れようとすると、日本中で大反対の声が沸き上がるでしょう。

<「日本は巨大国家である」という自覚を持とう>
・たしかに今後、多くの先進国でも人口減少が予想されています。しかし、2060年までの減少規模はドイツで1052万人、イタリアで504万人、スペインで323万人です。日本の4101万人減は、まさしく桁違いの規模なのです。

<高齢者を働かせても「数」が合わない>
<生産性を上げないと「1日17時間労働」?>
<女性活躍を進めないと男性は「1日21時間労働」?>
<結局、「生産性」を上げるしかない>
<なぜ「経済規模」を維持する必要があるのか>
・つまり、高齢者の数が減らない以上、GDPの規模を維持する必要がある。これが1つ目の理由です。もう1つは借金です。
 日本は国として1200兆円の借金を抱えています。1200兆円という金額だけ聞いても、巨額すぎてピンとこないかもしれませんが、簡単に言うと、日本の国家予算の10年分以上。いずれにしてもとてつもない金額です。

<経済規模を維持しないと「親を見殺しにする国」になる>
<「痛みをともなう改革」は自業自得だ>
・これまでの常識を全否定し、改革を進めるためには、相応の負担を日本国民全員が負わなくてはいけなくなります。中には痛みのともなう負担もあるでしょう。

<「生産性」を正しく理解し、目標を立てよう>
<「世界第3位の経済大国」なのは技術があるから?>
・しかし、この考え方は国の経済規模を左右する重大な要素の存在を見逃しています。人口の違いです。

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