財政破綻の確率を知る格好の指標があるよ。それは、各国の国債の「クレジット・デフォルト・スワップ」、略して「CDS」のレート、つまり保証料率を見ればいい。(1)


財政破綻の確率を知る格好の指標があるよ。それは、各国の国債の「クレジット・デフォルト・スワップ」、略して「CDS」のレート、つまり保証料率を見ればいい。


『日本の「老後」の正体』
高橋洋一 幻冬舎 2019/3/28



<この国に蔓延している日本経済危機説>
・一方で、年金制度は厳密な計算の上に成り立っていて、最初から破綻しないように設計されています。そのため、「年金は将来、破綻する」といった言説を真に受けて、年金を払わないでいるのは、老後のリスクを大きくするだけです。
 国が経済危機を迎えたからといって、簡単に破綻するようでは、その役割は果たせません。
 それ以前に、そもそも、この国に蔓延している日本経済危機説は、本当に正しいのでしょうか?
「国の借金が1000兆円もあるから、日本の財政は危機的状況にある」
「日本はもう右肩上がりの経済成長はできない」
 このような見解が、精緻にデータを検証した結果、「誤り」あるいは「真っ赤な嘘」だとしたら、あなたはどう思うのでしょうか。

・本書では、そんな壮大な取り越し苦労を避け、それによる損失を少しでも減らすために、日本の今後に関わる経済問題について、分かりやすいデータとともに丁寧に解説していきます。

・本書を通して、あなたに「老後について必要以上に不安がる必要はないな」と感じていただければ幸いです。

<最も景気がいい状態とは?>
・(先生)景気と物価、失業率の動きを整理すると次のようになる。
・景気が回復→物価が上昇する(インフレが起こる)→インフレ率が上がり続け、失業率が下がり続ける→インフレ率が一定以上、上がりきったら、失業率が下げ止まる
・景気が悪化→物価が下がる(デフレが起こる)→失業率が上昇し続ける

<「最も景気がいい状態」とは、ずばり完全雇用を達成している時だ>
・(先生)日本の場合、失業率が下げ止まるのは大体2%ちょっとに達した時で、この際のインフレ率の上限は大体2%。つまり、インフレ率2%程度が日本経済にとって一番の理想であり、最も景気がいい状態なんだよ。
 また、別の観点から言うと、現実のGDP、つまり国内総生産が、潜在のGDPの上限である完全雇用の状態に到達した時も、景気がピークに達した状態だ。
 現実のGDPが潜在GDPに到達したということは、ヒト・モノ・カネからなるその国のリソースがフル稼働している状態であり、同時にフルに消費されている時だよ。

<バブル後のデフレは「いいデフレ」?>
・(高校生) 実際、デフレにもいいところはないんですか?
(先生) その答えはノー。バブル崩壊後のデフレも、明確に「悪いデフレであった」と断言できるよ。まず、価格が下がるからいいというには、所得が下がらないという前提が必要。でも実際には、その期間に所得は下がった。それと、「失われた20年」のデフレは、その深刻度の高さから、多くの人の命を奪ったからだ。
(高校生) デフレが、人の命を奪った……?
(先生) まず、左の図13を見て欲しい。
 これは完全失業率と自殺率の関係を示す図だが、見ての通り、2つの推移はほぼ重なっている。すなわち、失業率が上がると自殺率も上がるんだ。そして、バブルが崩壊した1990年以降、失業率と自殺率が急増していたことが分かる。
(高校生) ほとんど直角に上がってる!
(先生) 警察庁では、自殺者が出た際、その原因・動機は、家庭問題、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、男女問題、学校問題、その他に分けて扱っている。遺書などの裏づけ資料があり明確に推定できるものを、自殺者1人につき3つまで計上可能とし、慎重に統計をとっているんだ。
 その結果、先に挙げた原因・動機のうち、経済・生活問題と健康問題以外が占める割合は、それぞれ大きな変動を見せていないことが分かっている。
 しかし、経済・生活問題と健康問題は、年ごとに大きく変動し、その度合いは景気の悪化と密接に関係してるんだ。この観点から見ても、景気が悪化すると生活苦から自殺してしまう人が増えるというのは明らかだね。

・さらにこの図を見ていくと、1980~2014年の失業率と自殺率はほとんど同じ動きをしていることが分かる。具体的数値を見ると、景気が悪化し失業率が1%上昇すると、3000人程度自殺者を増やしてしまうことになる。
 1990年以降の「失われた20年」の間、失業率の増加に伴い、自殺者数は年間8000~1万人ほどのレベルで大きく増えていたんだ。

<中国からの輸入品がデフレを招く?>
・(高校生) それにしても、つくづくもったいなかったですね。間違った考えで、長い間、日本が不況だったなんて……。
(先生)経済の世界では、ほかにも間違った情報が世間に垂れ流されてきたからね。
(高校生) え、まだほかにもデマまがいな話があるんですか?
(先生)例えば、「いいデフレ説――デフレはいいことなのだから止める必要はない」「日銀の金融緩和はデフレには効かない説」
 この2つの説については、データとともにすでに解説済みだね。
 ここでもう1つ、新たに説を紹介しよう。それは、「日本で起きるデフレは、中国から流れる安価な商品が原因である」という説だ。

・確かに、中国から安価な製品や、日本の企業が中国の労働力で安価に生産した製品が市場に出回ると、全体の物価が下がりそうな印象を受けるよね。
 でも、どんな時も経済を印象で語っちゃダメなんだ。この説の成否を確かめるためには、2つを検証する必要がある。
① 中国からの輸入量が増えたらデフレに陥るのだとしたら、先進OECD諸国の中で中国からの輸入量が増えている国はどこか? その国はデフレに陥っているか?
② 中国からの輸入量が多くてデフレに陥るのだとしたら、先進OECD諸国の中で日本より中国からの輸入量が多い国はどこか? その国は、日本のようにデフレが生じているか?

① の「先進OECD諸国の中で中国からの輸入量が増えている国はどこか?」というと、実はすべての国で中国からの輸入量が増えている。では、日本以外の国でデフレに陥っている国はあるか? 答えは「ない」である。
では②の「日本より中国からの輸入量が多い国はどこか。その数字は、先進OECD諸国の中で、中国からの輸入量の対GDP比が日本より高い国を見れば分かる。
 該当する国は、韓国、ニュージーランド、チェコ、ハンガリーである。では、それらの国でデフレが生じているだろうか? 答えは否である。

・中国からの輸入量が増えた国、また日本よりも中国からの輸入量が多い国において、いずれもデフレは生じていないんだから。もしも中国からの安価な輸入品がデフレの原因だとしたら、これらの国々もデフレに陥っていなければ、理屈に合わない。すなわち、日本で起きるデフレの原因は、中国からの安価な輸入品“以外”にあるということだ。
 何よりも、日銀が黒田・岩田体制になって以降、日本の物価はデフレから脱し、安定的で緩やかなインフレの基調に入っていったが、この間に中国からの輸入量が減ったという事実はない。この観点から見ても、中国からの安価な輸入量がデフレを招くという説は、明確に誤りであることが分かるよね。

・(先生)つまり、確かに中国製の商品が増えたことで、その部分の物価は下がった。ただ日本人は、安価な中国製の商品で消費を抑えたとしたら、その浮いた分のお金はほかの何かに使うことが多いので、全体での消費額はさほど変わらなかった。
 これが、「中国発デフレ原因説」が間違っているという根拠だよ。

<生産年齢人口の減少がデフレを招く?>
・(先生)デフレの原因として、もう1つ日本で多く語られたのは、「生産年齢人口の減少がデフレの原因である」という説だ。「生産年齢人口」とは、「働く現役世代」とされる15歳以上65歳未満の人口のことで、最も消費を行う世代でもあるんだよ。

・高齢者が増えて現役世代が減ることで、消費が減り、物価の下落が生じるという内容だ。
 
・では、この説は正しいのか? 答えは「ノー」。これも明確に誤りだ。なぜかというと、そもそも黒田日銀による金融緩和政策以降、日本の物価は上昇してデフレを脱し、緩やかなインフレの状態に突入しているからだよ。
 ただ、残念なことに、2014年4月の消費増税で、インフレ率の上昇も腰折れしてしまったのも事実。それで、生産年齢人口の減少でデフレという誤った考えを今でも信じている人が少なくない。特にマスコミ。

・いずれにしても、もしもデフレの原因が「生産年齢人口の減少」にあるのだとしたら、インフレに転じた原因は、「日本の生産年齢人口が増加に転じたため」となるところだが、そんな事実はまったくないので、完全に棄却される説なんだ。

・この図を見ると、確かに生産年齢人口(15~64歳の人口)はコンスタントに減少し続けているけど、黒田・岩田体制の金融緩和「黒田バズーカ」を実現させることになる安倍政権の発足以降、労働力人口と就業者数が増加に転じていることが分かる。

<人口が減少するとデフレが起きる?>
・(先生)また、デフレ原因説のもっとも単純なものとして、「人口そのものが減っているから、デフレが生じている」という説もある。

・この「人口減少デフレ原因説」は、日本に根強くあるんだけど、これも間違いだ。そもそも黒田バズーカ以降、実際に日本で緩やかなインフレが起きた際、人口が増加に転じたという事実はないからね。

・そして何よりも、「人口が減少するとデフレが生じる」という説が正しければ、人口が減少している多くの先進国において、物価が下落していないとおかしいよね。
 そこで、実際のデータを上の図23で確認してみよう。この図は、IMFの統計に基づいて、先進国34カ国の人口増加率とインフレ率を表したものだ。
 ちなみに先進国とは、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、香港、アイスランド、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、シンガポール、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、イギリス、アメリカが含まれるんだ。
 結果 、相関係数―0.01と関連性はほぼなく、人口増加率とインフレ率は無関係の動きをしていることが分かる。

<金融緩和をするとハイパーインフレが起きる?>
・(先生)しかし、実際大規模金融緩和が始まった時は、さぞ不安を覚えたことだろう。しかし、実際大規模金融緩和で、ハイパーインフレが起こっただろうか? ご存知の通り、そんな事実は一切ない。つまり、この説も間違いだったんだ。
 私は随分前から「大規模金融緩和によってハイパーインフレなど起こらない」と説明してきた。

<これまでの日銀の愚策>
・(先生)これまで「失われた20年」の大きな原因は、日銀による誤った金融政策にあることを証明してきたが、この章の最後に、それを裏づける衝撃的なデータを紹介したいと思う。

・左の図24は、日銀が金融政策をとる際の指標となるコアコアCPIの推移だよ。黒田・岩田体制になる以前の日銀が、その時々でどのような金融政策をとってきたか、ひと目で分かるようになっている・
 ここから分かることは、コアコアCPIがプラスの領域に入ろうとすると――すなわち日本経済がデフレから脱しようとする度に、日本の金融政策を、ただ唯一司る存在である日本銀行が、「ゼロ金利解除」や「量的緩和解除」「CP・社債買入停止」といった、金融“引き締め”政策を行なってきたことが分かる。

<今後バブルが生じたら、どういう対応が必要か>
・(先生)ちなみに、「資産バブルを潰すために金融引き締め政策を行ってはいけない。その時に金融引き締め政策を行うと、景気や失業率などの実体経済の方を傷つけてしまう」という話を前にしたよね。
 それではバブルが起きた際、その国の中央銀行はどういう対応をとるのがベストだと思う?

・(先生)バブルが生じた時の金融政策の正しい対応の答えは、意外だろうけど、「放置する」だ。もう少し厳密に言えば、一般物価、つまり消費者物価指数が、スタグフレーションを起こすぐらい上昇していたら、「消費者物価指数を適正な範囲内に収めるための金融引き締め政策を行う」のが正解だけど、消費者物価指数が適正な範囲内なら、バブルが起きていても、中央銀行が対応に当たる必要はないんだ。
(高校生) バブルを放置するって、結構勇気が要りそうですね?
(先生) 心情的にはそうだろうけど、資産バブルを潰す目的で金融引き締め政策を行ってしまうと、一般の人たちの生活に直接関係する消費者物価指数を必要以上に下げることになってしまうからね。特に何もする必要がないと心がけておけば、1990年代前半に起きたバブル崩壊と同じ轍を踏まずにすむんだ。
 ただ、もしも日本の80年代のバブル期のような法律違反みたいなことが発生したら、政府として金融政策以外で対処するのは当然のことだよ。

<なぜ日銀の政策はうまくいっていないのか>
<安倍政権の経済政策は何点か>
・(先生)確かに「2年間でインフレ率を2%まで上げる」という基準では、それには失敗したとは言えるだろう。ただ、ほかの経済パフォーマンスを
見ると、完全なる失敗だったかと言えば、まったくそうとは言えないんだ。
 それは、各種経済指標の改善具合を見ても分かるし、他にも失業率、就業者数の約6年間の変化を見ても分かるよ。これを見ると、雇用の改善が一目瞭然だ。

・最も重要な自殺者数はどうかというと、2017年の段階で、2万1321人。1997年以降、3万4427人にまで増加していた自殺者数が、以前の水準にまで戻っているよね?

・総合すると、私は安倍政権の経済政策の点数は、2018年末時点で70点だと考えている。

<なぜ日銀の金融政策はうまくいっていないのか>
<財政政策とは何か>
・(先生)消費増税という「財政政策」がなされたことで、上り調子だった景気の腰が折れてしまったんだよ。

<2014年の消費増税がもたらしたもの>
・(先生)では、安倍政権の経済政策の、何が間違いだったのか?それは、景気がまだ回復途中にもかかわらず、消費税の増税を行ったことだ。
 増税は、本来景気の過熱を抑制するための政策だ。しかし、景気がまだ上昇しきっていない2014年4月の段階で行ったことで、景気回復に水をさし、単なるマイナスの効果しかもたらさなかったんだ。
(高校生) 最悪のタイミングで、消費税をアップしちゃったってことですね。

<誰が自殺者を増やしたか>
・(先生)実は、過去に一度その例がある。1997年4月、3%から5%への消費増税が行われた時のことだ。その時、何が起きたかというと、翌年にかけて景気が悪化し、自殺者数が、2万4391人から3万2863人に、つまり8500人弱も増加してしまったんだ。
 もちろん、増加した自殺者数のすべてが景気の悪化によるものとは言わないけど、自殺者数と景気の悪化が関連することは間違いないからね。

<構造改革とは何か>
・多くの人がイメージのみで捉えてきたものの典型が、「構造改革」という言葉だと思うんだ。しいて言えば、いわゆる構造改革の中身は、次の3つに大別される。
・公的企業や特殊法人の民営化
・各種規制緩和
・地方分権の推進

・(先生)まず「公的企業や特殊法人の民営化」についてだけど、これは郵政民営化や道路公団民営化などを指すよね。なぜ「民営化」を推すかというと、国が運営していると「親方日の丸」と揶揄されるような非効率が生じるからだ。つまり、国家による運営は生産性が低いから、これらの事業を民間に委ねることで、無駄を省いて生産性を上げるのが目的だ。
 次の「各種規制緩和」とは、一般企業の規制を緩めようというものだ。国が決めているさまざまな規制で、企業の身動きが取れなくなっているため、非効率が生まれているという前提のもと、無駄な規制を取り払ったり基準を緩めたりして、経済活動の生産性を上げるのが目的だよ。
 最後の「地方分権の推進」というのは、地方自治体に多くの権限を持っていると、そこにも非効率が生じるからね。国が持っている権限やお金を地方に渡すことで、経済活動の生産性を上げることが目的なんだ。

・(先生)だから私はずっと日銀による適切な金融緩和を求め続けてきた。「日銀の金融政策の誤りが日本経済低迷の原因ではない」「日本には構造的な問題があるから、もう経済成長はできない」という説は、間違いもいいところで、日本経済を不幸のどん底に叩き込んでいた大きな原因になっていたんだ。
 とはいいながら、ここからがちょっと複雑なんだけど、「日本の潜在GDPを上げる」ことはつまり、「未来の日本経済の底力を上げる」ということになるので、“いいこと”ではあるんだ。
 そこでまとめると、不況時に日本がするべき正しい処置はこうだ。
 まず足元の消費と投資を伸ばし、現実のGDPを増加させ、現実に起こっている日本の不況を止める「適切な金融緩和政策と財政政策」を行う。
 そうすることでデフレ不況を抑制し、さらに並行して「日本経済の未来の底力である潜在GDPを上げるための適切な構造改革を進めていく」というのが理想なんだ。

<「国の借金1000兆円」はやっぱり嘘でした>
<財政破綻の危険性を測る方法>
・(先生)財政破綻の確率を知る格好の指標があるよ。それは、各国の国債の「クレジット・デフォルト・スワップ」、略して「CDS」のレート、つまり保証料率を見ればいい。

・CDSの売り手にとっては、倒産確率が高ければ高いほど、保証する確率が増えてリスクが高いため、そのリスクに見合ったレートになっているんだ。つまり倒産確率が上がれば上がるほど、レートも上がるという特性を持っている。
 そしてこのCDSは、各国が発行する債券・国債に対しても売り出されている。これは金融機関と投資家が身銭を切って市場で取引しているものなので、より客観的な確率と言えるんだ。

・ちなみに、最近のCDSレートの数字は、アメリカ0.21%、イギリス0.40%、ドイツ0.15%、日本0.23%、フランス0.40%、イタリア2.22%となっている。
 世界から見る日本の国債の破綻確率は5年で1%程度だ。市場全体からしたら、日本国内で言われているほど危険とは見なされていないんだよ。

<世界から日本はどう見えている?>
・政府の債務超過額は約484兆円だったが、日銀は443兆円の資産超過、政府と日銀を一体として考えると、債務超過額はたったの41兆円。つまり、日銀も含めた連結ベースで国家財政を考えると、結局日本政府の純債務は約40兆円ということになる。

・日本国債のCDSのレートが低い理由は、このように、会計学的に正しい方法で日本の財政赤字の状況を眺めているからなんだよ。こんな知識があると、日本の財政破綻は滅多なことでは起こらないと分かるんだ。

<年金破綻論の正体>
・大事なのは、メディアの情報に惑わされず、年金について正しい知識を身につけることだ。そうしないと「大きな損」をしかねないし、何より、無駄な不安に苛まれつつ日々を送るなんて、もったいないからね。

<年金は破綻しないように設計されている>
・結論から言うと、日本の公的年金制度は破綻しない。今後、よほど酷い制度改悪がない限り、まず大丈夫だよ。

<「消費増税やむなし」を問う>
・「財政再建のためには消費増税やむなし」という考えが、どれほど危険なことかは、もう十分お分かりいただけたと思います。

・では、日銀法をどう改正すればいいのか? 現在の日本では、金融政策の目的は「物価の安定」のみとされているので、それにプラスして、「物価の安定とともに失業率の安定をはかる」という方向への改正が必要です。
 そうすれば、日銀執行部の人間がいくら変わろうとも、またその時々の政権与党がどんなに変わろうとも、日銀は完全雇用を目指してしっかり金融政策を行うようになるはずです。

<一人ひとりができること>
・経済成長というものは、待っているだけで成立するものではありません。
 企業や地方の努力に加え、一人ひとりの個人が正しい意識を持つことで、明るい将来につながっていくものなのです。
 そのためには今後、「誤った消費増税を支持・推進するような組織、政治家や政党を選挙で通してはいけない」し、「正しい金融政策」をどの時代でも、どの政党が与党になっても、いつでも求め続けなければならないのです。



『愛国のリアリズムが日本を救う』
「何のために」を見失った日本人への骨太の指針!
高橋洋一   育鵬社 2018/9/5



<今こそ国益と政策的合理性の追求を>
・右と左の観念論を論破し、既得権益に固執する官僚とご都合主義に走る業界を糺す。

<愛国に右も左もない。あるのは日本に対する責任感だ!>
・戦後教育にどっぷりとつかり、学界やマスコミ界という「ムラ社会」の掟と徒弟制度のしがらみから抜けられない学者やジャーナリストなどは、強い思い込みというイデオロギーの世界にはまり込んでおり、現実を直視できていない。

<国益と政策的合理性の追求>
<筆者は、「国益を守る」ということが愛国だと思っている。>
・国という共同体において、そこに生きる人々の雇用が確保され、生きがいを持って仕事に打ち込み、相応の賃金が確保されることは、経済政策の根本だ。相応の賃金の総和が国の豊かさであり、それを実現することが国益の追求となる。

・むしろ、戦争にならない確率をどう高めるかが現実的な課題となる。筆者は、過去の戦争データなどを検証した結果、集団的自衛権を行使した方が戦争になる確率は低いと見出した。

・また、「もう日本は経済成長しない」「金融緩和政策では経済成長はあり得ない」などと言う人もいるが、バブル経済崩壊に伴う「失われた20年」は、日本銀行が間違った金融引き締めを行っただけであり、金融政策をセオリー通りに行っていれば景気の低迷はなかった。リーマン・ショック後も他の先進国が経済成長を果たしている中で、日本だけができない理由はどこにもなかったのだ。
 金融引き締めという高金利政策のもとでは、銀行は利ザヤを稼ぎやすくなるため、「銀行ムラ」に所属する経済学者やエコノミストは、自ずと金融緩和政策を否定する。

・特にアベノミクスを批判してきた左派やリベラルの政党、左派系マスコミでは、これらの状況をどのように理解しているのか。「貧富の格差をなくせ」と言うが、まず失業率を低くし雇用が確保されれば、人材不足に陥った企業は自然に賃金を上げざるを得ないのだ。左派・リベラル政党こそ、やるべき政策だったのである。

・一方、わが国の財務省は「財政再建のため消費増税は必要だ」と言う。
 しかし、これは彼らの天下り先である特殊法人や独立行政法人を民営化、もしくは廃止して投資を回収するという手段を考慮し、統合政府の考え方で国の子会社である日本銀行をバランスシートに加えれば、日本の財政は健全であることに目を向けようとしない。景気低迷から今まさに脱却しようという途上で、消費増税などというのは、角を矯めて牛を殺す議論でしかない。

<総理大臣は雇用と外交で評価される>
<名宰相の条件>
・当たり前の話だが、首相は日本の国益を最優先して考え、実行していかなければならない。国際社会と協調できず、国民の安全と生活を保障できないようでは、どんなに素晴らしい理想を持っていたとしても、首相としては不適格者だ。

<経済政策の主眼は「雇用」に鈍感だった民主党政権>
<時の政権が見誤った政策の顛末>
・時の政権への批判は野党の重要な仕事であるから大いにやってもらいたいものだが、安倍政権の政策に対して対案を出すにしても、左派系野党の基礎的な学力と分析力、先見性がないとしか言いようがないから、議論しようにもできない。
 つまり経済・社会状況や国際関係、過去のデータなどを精査せず、端から「こうあるべきだ」という理想が結論としてあるため、ロジックが通用しない。
 政党や個人のイデオロギーは、それぞれ多様で結構なのだが、問題はイデオロギーにあまりに囚われ過ぎて、的確な判断を見誤ってしまっている。そのような政治家が政権にいると日本の舵取りを間違ってしまう。

<雇用を生む政策を見殺しにした民主党政権>
・連立政権の時のような過去の苦い経験を活かし、二度と同じ過ちを犯してはいけない。2008年のリーマン・ショックで後退している景気を立て直すためにも経済政策は重要だった。しかし、民主党の閣僚たちは行政の当事者になるには不慣れであり、各省庁の官僚をコントロールすることなどできるはずはなかった。

<何をやりたいのか分からない左派・リベラル政党>
・すでに安倍政権が金融緩和政策を使って雇用を伸ばすという「リベラル」や「左派政党」のお株を完全に奪っている。その結果、日本の政治では初めてそれを使って目覚ましい成果を出してしまい、その勢いで、市場重視、社会福祉でも矢継ぎ早に政策を出しており、左派系野党は後れを取っている。

<何をもってアベノミクスは破綻していると言うのか>
・その大塚共同代表もアベノミクスの金融緩和政策について、「既に破綻している」「5年経ったが良くなっていない」と批判している。
 大塚氏は日銀出身で平均的な国会議員よりは政策を語れる能力はあるが、古い日銀の枠からは出ていないようだ。
 日本をデフレに追いやり、「失われた20年」を作った当時の日銀は日本経済のガンであった。それをアベノミクスの異次元緩和によって取り戻しつつある今、再び古い日銀を復活させたいとでも言うのか。大塚共同代表は、金融緩和政策が既に破綻していると主張する根拠を「物価が上がらないからだ」だという。まさに古い日銀そのものである。
 物価だけに注目していると、デフレが望ましいように見えてしまう。確かにそうした理論も存在しており、いわゆる「フリードマン・ルール」と呼ばれる。

<労働者の雇用を守り賃金を上げているのは誰か>
・首相が経済界に賃上げを求めるのは「官製春闘」と呼ばれるが、これは安倍政権になってからの現象だ。本来これは労働組合や左派・リベラル政党が行うべきことなので、世界から見れば、安倍政権は「左派政策」をやっているように見える。

<原発存廃問題も市場の原理に任せる>
・ところで、左派やリベラルの人の中で「原発ゼロ」を訴え、原子力発電をすぐに廃止しようと言う人がいるが、これも理想を結論に持っていきロジックもなく「こうであるべきだ」論を展開するロマンチストである。

<AIで近未来はこう変わる>
<近未来、国家資格はなくなる>
・AI(人工知能)について話題になる時、プログラミングの経験があるか、ないかでその受け止め方が大きく違うようだ。経験がない人はAIが人類の知能を超える転換点(シンギュラリティ)を迎え、SF的な発想で人類を脅かす存在になると考えているようだ。経験のある人は単なるプログラムとしか見ていない人が多く、筆者もその一人だが、プログラムは活用するだけという立場にいる。

<AIやロボットの導入により、今後多くの仕事が失われるとの予測がある。>
・タクシー・トラック運転手、ネイリスト、銀行の融資担当者、弁護士助手らの仕事は、コンピュータに代替される確率が90%以上とされている。
 ほかにも、コールセンター業務、電話オペレーター、集金人、時計修理工、映写技師、カメラ・撮影機器修理工、ホテルの受付係、レジ係、レストランの案内係、不動産ブローカー、スポーツの審判、仕立屋(手縫い)、図書館員補助員などの伝統的な仕事もなくなるという。

・金融業界も大転換があり、投資判断、資産運用アドバイス、保険の審査担当者、税務申告書代行者、簿記・会計・監査の事務員などは消えるとしている。

・これらには、専門的なスキルと言われてきた「士業」が多く含まれている。法律などによる専門資格を要件としているが、そうした「専門的スキル」と称されるものがAIで代替可能になるというわけだ。
 例えば、弁護士は、難関の国家資格が必要とされる業務である。しかし、その実態と言えば、過去の判例を調べることが中心とも言える。過去の判例はデータベース化されているので、適切な類似例を調べるのは、今でもパソコンを使ってやっている。そうであれば、AIでもかなり代替できる可能性がある。
 公認会計士や税理士もパソコンの会計ソフトがあるくらいだから代替可能だろう。

<銀行の窓口から人がいなくなる>
・メガバンク3行が、AIやロボットによる自動化を進めるなどして、約3万人分の業務量を減らすと報じられている。

<行政も変わる時が来た>
・AIの特性を活かすならば国会答弁も適していると思う。
 国会の審議で政治家たちに向けられる質問内容は、事前に通告される。これを「質問通告」と呼ぶが、前日の午後6時頃に行われることがしばしばである。午後6時というと退庁時間を過ぎているので、官僚たちは「残業」せざるを得ない。

<労働人口減少は心配しなくていい>
・総務省によると、2013年で7883万人いた労働人口(生産年齢人口=15歳以上65歳未満)は、2060年には4418万人まで減少すると予測している。しかし、前述したように今ある仕事の多くはAIに代替することが可能だ。
 悲観的に考えれば、人間から仕事が奪われるということになるが、ベーシック・インカムと考えてみてはどうだろうか。つまり、AIによって働かなくとも最低限の収入が得られるというものだ。単純労働や情報処理業務など、AIに任せれば生産性は上がるだろうから、少子高齢化の日本に合うかもしれない。

・では、肝心のAIに関する技術力はどうだろうか。科学技術関係予算は2012年度の5兆2792億円から2年連続で減少し、2014年度4兆1270億円だ。研究費の政府負担を他国と比較すると日本は18.6%で37%あるフランスの半分程度。韓国の24.9%、中国の21.7%より低い。

・これは以前から言っていることだが、筆者が企画した「ふるさと納税」の仕組みを利用してはどうだろうか。地方大学や民間研究所へ個人や企業が寄付してもふるさと納税と同じように税額控除するという仕組みだ。

<サンドボックス制度の導入>
・さて、今年(2018)2月、政府が「サンドボックス制度」導入を閣議決定し、経済産業委員会で審議が始まっている。
 サンドボックスとは「砂場」という意味で、コンピュータ用語として使用されているものだ。システムをチェックする時に、トラブルがあっても害が外に及ばないように保護された領域で動作させるセキュリティ機構のことを言う。

・この制度を利用すれば、AIの技術を駆使した自動走行などの革新的な技術やビジネスモデルの実証実験がしやすくなるわけだ。

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