さて、国会が時間に極めて厳しいということ、これは記者時代から知っていた。しかし今、当事者になってみると、これも想像を超えていた。(1)


『不安ノ解体』
青山繁晴 飛鳥新社  2019/3/28



<「中国人観光客頼み」という麻薬>
・そして中国はなぜ、ここまでやるのか。
 秘密会議の議事録によれば、中国の総領事は「当面の最大目標は米軍の撤退だ」と明瞭に発言している。

・さらに、日本がきちんと解決しきっていない重大問題も関わってくる。それは国連憲章の敵国条項である。

・日本の努力で、西暦1995年の国連総会で削除決議を採択した。ところがその後に必要な国連憲章の改正は実現しないまま放置され、したがって敵国条項はそのまま生きているという解釈も可能だ。

<では次に、国会とは何か>
<国会議員は評論家なのか?>
・代表例は国の借金の話だ。与野党を問わず、国会議員は「国の借金が1千兆円を大きく超えてしまっているから」という話が大好きだ。しかし借金というなら必ず、資産を入れ込んで考えねばならない。いかほど入れ込むかは立場によって意見が違うが、中立的に言えば国の資産のうち換金性のある分は少なくとも入れるべきだ。それはおよそ五百兆円近くある(異説あり)。
 するといちばん大事な議論は、この差し引き、つまり純債務がこれから増えるのか。減らせるのかという問題だが、借金が1千兆円を大きく超えてしまっては大変だという話にいつも数字が使われるから、そこへ議論が行くことはほとんどない。
 
<膨大な国費、税金の無駄遣い>
・三本柱の最後は、言論封殺である。
 ターゲットにされている稲田防衛大臣がやはり一議員のときには雑誌の対談で「長期的には日本独自の核保有を(中略)検討すべきではないでしょうか」と発言しているのを、野党が「撤回しろ」と迫った。

・しかし防衛大臣になったら言いがかりにもデマゴーグにも言論封殺にも国会審議で真顔で対応せねばならない現状は、明らかに膨大な国費、税金の無駄遣いだ。
 稲田さんも動揺しないで「内閣の方針に従うのみであります」と毅然と答えるべきだが、そう答えてもなお、不毛の質問は続く。

<ハングルの資料を配る野党議員>
・ところが日本の国会では、あろうことか予算委員会でハングルの資料を配る野党議員もいる。日本語はない。政府側の答弁が気に入らないと、予算委の野党側の理事は頻繁に委員長席に詰め寄って、短時間であっても議事を止める。しかし韓国国防省発行の資料がハングルのまま配られても看過される。与党側も問題にしない。実は、日本国の国会という意識が弱い。諸国に比べて極めて薄い。

<知られざる日々>
・意外なことを書こう。
 議員の任期が始まって三か月半、国会議員が礼儀正しいこと、時間に徹底的に厳格であること、そして国益のために見えない努力をしていることにいささか驚いている。

・もちろんオールドメディアが「政治家は悪者だ」と常に国民に刷り込むし、一部の実際に不遜な議員の振るまいが全体であるかのように報じるのもオールドメディアの宿痾であるし、結果として国民は政治家への憎悪をこころの底に積み重ねてしまう。こうした事実はある。それにしても外とうちの落差が大きすぎる。やはり国会議員は無意識に、仲間意識を強く持ちすぎているのではないか。互いに選挙を勝ち抜いてきたという気持ちが根っこにあるのだろう。
 憚りながら、わたしは選挙に「勝った」という意識は皆無である。

・だから当選のとき、万歳もせず、目を入れるダルマは用意せず、花も祝電も辞退した。祝うのは拉致被害者が帰ったときであり、メタンハイドレートが実用化されたときだ。
 国会議員の仲間意識が強すぎることが、例の白紙領収証の問題を生んだのではないか。

・しかし、どうも野党の追及が弱いと思っていたら、何のことはない、共産党の大阪府議も同じことをやり、民進党に至っては前総理の野田佳彦幹事長まで同じことをやっていた。
 政治資金集めに苦労をし、選挙にもお金がかかり、その仲間同士だからということで許し合っていた慣習なのだろう。
 ちなみに、わたしは政治資金集めのパーティを一切やらない。いかなる人からも1円も政治献金、寄付を受け取らないから当たり前である。したがって「お互いさまでパーティに出席し、お金を贈り合う」ということも起きない。そもそも領収書が発生しない。誇って言うのではありませぬ。政治資金集めは法で認められている。これから選挙に出ようかという人に、こういう選択肢もあると知ってほしいと頭を垂れて願う。

<午前4時5分から準備を始める>
・さて、国会が時間に極めて厳しいということ、これは記者時代から知っていた。しかし今、当事者になってみると、これも想像を超えていた。
 本会議は言うに及ばず、委員会への出席、新人議員の務めである国会対策委員会への集合などすべて1分の遅れも許されない。理由は関係ない。渋滞うんぬんが通用しないのは常識だが、他の委員会が長引いたといった理由も考慮されない。
 そして朝が早い。これも記者時代に熟知していた。夜討ち朝駆けの取材をしていたからだ。

・今は、朝8時から党本部で開かれる「部会」に参加するために午前4時5分から準備を始める。部会に出席するだけではなく、毎回、発言するからだ。
 
・この部会の存在こそ、わたしが無所属ではなく自由民主党を選んだ主要な理由の一つだ。「部会」は、外交・安全保障から農業、資源エネルギー、福祉、人権までありとあらゆる分野別に各省庁の局長やキャリア課長がどっと出席し、議員は自由自在に異見を言い、質問をし、それが議員の蓄積になるとともに法案の土台になる。
 すべての法案は、この部会で了承を得てから政調(政務調査会)、そして総務会と上がっていかねばならない。

・当事者になってあらためて実感したのは、その議論の真剣さである。ところが、一方で、二か月、三か月経つうちに分かってしまった事実もある。それは参加する議員がいつも同じような顔ぶれということだ。

<批判者ではなく当事者>
・前述したように、部会はほぼ全分野にわたって存在し、開かれる。だが、尖閣諸島をはじめ領土を護り、竹島と北方の領土を取り返すための部会や特命委員会など安全保障、外交をめぐるものは、参加人数が少ない上に、ほぼ同じような出席者ばかりになる。
 一方で農業や工業分野などについての部会は出席者がたいへん多い。
 つまりは票に結びつく部会は参加者多数、日本社会では票にあまりならないような部会は少数の限定参加なのだ。

・そして票に結びつくというのは、その議員の支持団体、支持組織に関りのある部会である。選挙のときに入れてくれるだけではなく資金も支え、家族票などの取りまとめもやってくれて、その代わりにもちろん団体、組織のために議員は国会で動く。
 それだけではないだろうが、そのためにも懸命に動く。
 わたしがこの夏の参院選に出馬を公示直前にようやく決意したとき、自由民主党本部の側から「何かの団体、組織を付けます。そうでないと、出馬表明がこんなに出遅れていて、当選はおぼつかない」という話があった。即座に、丁重にお断りした。

・ただただ祖国のために国会に行くのだから特定の団体、組織の支援を頂くわけにはいかない。それを頂けば、既得権益に挑戦することが難しくなることもあり得る。
 他の人の批判をするのではない。批判者ではなく当事者となり、おのれのささやかな動き、生きざまだけで、わずかなりに貢献をする。
 だからこそ毎朝のように4時から準備して部会に参加するのだが、ふと気づいて、議員会館のエレベーターのなかで政策秘書(公設)に聞いた。「これって、何もしないでいようと思えば出来るよね」
 かつてベテラン議員の私設秘書を務めたことのある政策秘書は「「そうですよ。楽をしようと思えば楽できるのが国会議員です」と答えた。「特に参議院は、一度、当選すると6年間選挙が無いですから、前半の3年ぐらいはゆっくりしようという議員も出てきます」

<報いなき献身>
・しかし一方で、票に結びつきにくい、参加者の少ない部会などで、単に参加するだけではなく役員あるいは首脳陣を務めているベテラン議員もいる。それも沢山の役職の兼任であるから、その負担はどれほど重いのか。
 たとえば「領土に関する特命委員会」というものがある。国防部会、外交部会のように部会という名を冠してはいないが、自由民主党政務調査会(政調)に属する部会の一種である。

・新藤さんは、同じ特命委で事務総長の佐藤正久参院議員、そして現在は防衛大臣の稲田さんと3人で韓国の(竹島ではなくその隣の韓国領の)鬱陵島に渡ろうとして空港で理不尽に阻まれた。そのうちの2人までが領土特命委の首脳陣を務めているわけである。
 稲田さんは閣僚当時はこうした部会の首脳陣に入ることができなかっただけだ。お二人は、ここでも他でもとにかく国家主権のあり方や安全保障・外交がテーマの部会はほとんど支えているのではないかと思うほどに、雛壇でお顔をよく見る。
 政界でヒナ壇といえばふつうは本会議場の閣僚席をさすが、この場合は、部会などの会場でいちばん奥の首脳陣の席のことだ。これらは事実上、報いなき献身である。

<議員本人の志だけ>
・わたしはこの新藤委員長とも佐藤事務総長とも、利害関係が一切無いのはもちろんのこと、ふだんのお付き合いもほとんど無い。
 それなのに突然、わたしは領土特命委員会の「幹事」に指名されて、いささか驚いた、ただの1年生議員である上に、そもそもこの委員会に毎回、出馬はしていても正式に属した覚えがない。属したくないのではなく、所属するための手続きが何も無いのである。
 それは国防部会や外交部会をはじめ、いかなる部会も、あるいは部会に関連した会も、入会したり所属したりする手続きが(部会長、副部会長以外は)無い。

・第一に、なぜ北朝鮮はわざわざ好んで危機を招くのか。また日本はこの危機への備えができているのか。できていないのなら、なぜ備えずに済ませているのか。これらが最も根本的で、深刻な問いだろう。
 そして大統領不在の韓国だけではなく、国会で危機を知らぬがごとくの審議、森友学園事件をめぐる不毛のせめぎ合いを続ける日本をみて「わたしたちのアジアはこれからどうなる」という深い不安もあるだろう。
 今回の北朝鮮危機は、本編起稿の西暦2017年4月6日から5月上旬までに最初のピークを迎える。

・仮にこの危機の第1次ピークが有事なく過ぎたとしても、それならそれで北朝鮮による核開発、弾頭ミサイル開発は一層、際限なく拡大していく。

<なぜ北朝鮮は温存されたか>
・人類が迎える危機としては、1960年代のキューバ危機以来の事態を迎えていると述べた。しかし真実は、キューバ危機より遥かに深刻である。
 キューバは、ソ連のフルシチョフ首相がキューバへの核配備さえ思い留まれば危機が去る単純なものだった。だが北朝鮮は自らの核開発を思い留まらない。
 なぜか。北朝鮮は中東で起きた現実をよく知って、学んでいる。
 北朝鮮は核、毒ガス、ウイルスの大量破壊兵器と、それらを運ぶミサイルの技術と現物をシリア、イラン、イラクをはじめ中東諸国に売るか、売ろうとする商売で生き延びてきた(当事国はみな否定)。中国の裏援助だけで、国連や日米の経済制裁を凌いできたのではない。これまで5度も核実験を重ね、やたら各種ミサイルを撃ちまくるのはカタログ販売のためだ。

・たとえば石油で金満のサウジアラビーアは、狭いペルシャ湾を挟んだ隣国のイラン、また国境線を守りにくい砂漠で地続きの隣国であるイラクが、こうした北朝鮮製の恐怖の武器を入手するのなら、もっと高値で北朝鮮から買い占めるしかなくなる。

・だから北朝鮮の金一族だけは、アメリカ、さらに中国がどれほど核開発を諦めさせようとしても強固に続けてきたのであり、まさしく、だからこそ北朝鮮だけはこれまでアメリカに温存されてきたのだった。

<嘘で塗りつぶされた半島>
・北朝鮮も国連に加盟している主権国家だ。正式には朝鮮民主主義人民共和国という。その「民主主義国」という名前からして嘘であるように、何もかも真っ赤な嘘で成立している。

・そこから始まる金一族の独裁には、一切の正当性がない。
 敗戦後の日本は、この北朝鮮に舐められて、自国民を次から次へと拉致され、それが露見してもなお、誰も取り返しに行けない。
 アメリカもこの北朝鮮を見逃してきたのは、被爆国の日本よりもずっと正確に原爆が人類に何をもたらすかを知っているからだ。

<個人の問題にすり変えるな>
・ところが北朝鮮の核開発が、アメリカの予想を大幅に超えて進展してしまった。直接の責任は、オバマ前大統領にある。
 シリアのアサド大統領がもしも内戦で自国民に毒ガスを使えばアメリカ軍を出すと言っていたオバマさんは、サリンが実際に使われると、あろう事かイラン革命防衛隊にアサド政府軍を懲らしめるよう頼んだ。
 イランが核開発を放棄する合意を、アメリカをはじめ西側諸国と結んだというのが言い訳になっている。ところが実際は、この合意は10年の間イランが大人しく、しかも核兵器の数や能力を控えめにするのならば開発して良しという合意だから、北朝鮮は「狂喜した」という。

<憲法9条の制約>
・さらに第2項は、その最後の一行にトドメのように「国の交戦権は、これを認めない」という、およそ主権国家としてあり得ない、国際法にありありと違反する定めを置いている。

・こうした外国による侵略に対峙するのは国であり、それが交戦する権限も無いのでは外交交渉そのものが成り立たないから、相手国の軍事力のやりたい放題になっている。
 これはイデオロギーや左翼、右翼で分かれる話ではない。単に事実そのままである。

・再登板後の安倍政権はテレビ、ラジオ、新聞、通信のオールドメディアすべてに徹底的に叩かれながら、限定的に集団的自衛権を行使できる安保法制を成立させた。国連憲章にも明記されている集団的自衛権だから、ようやく主権国家としての一部を恢復した意義がある。安保法制のできる前は、海外の邦人が危機に瀕しても救出、保護すらできなかったのも、できることになった。
 ところが憲法はそのままであるから、まさしく第9条の制約によって、その邦人保護は「当事国の同意」があるときしかできないことになっている。たった今の半島危機での当事国は、北朝鮮である。その北朝鮮がたとえばアメリカに攻撃されている最中に、これまで拉致被害者の帰国も拒んでいて突如、アメリカと同盟関係にある自衛隊が拉致被害者を救出するのを受け入れるのか。
 これだけでも恐るべき漫画である。

<愚者の楽園かのような>
・それでも無理に空想を逞しくして「北朝鮮がアメリカに許しを請う手段として、突然に日本に協力する可能性もないとは言い切れないのではないか」と言ってみても、実は安保法制による条件はあとふたつある。
 北朝鮮が国内の治安を維持していて自衛隊が戦闘に巻き込まれないこと、さらには、朝鮮人民軍がなぜか自衛隊と協力・連携してくれることも条件になっている。
 この、愚者の楽園かのような情況をつくる憲法9条第2項をそのままにして第3項で自衛隊を明記すると「陸海空軍でも、その他の戦力でもなく、主権国家としての交戦権も無い、何とも知れない組織」となり、下手をすると訴訟で、少なくとも下級審ではその第3項が無効とされかねないし、自衛隊が現在よりむしろ悪い地位に置かれて「無法の武装集団」と認定されかねない。
 現職の自衛官たちにこの「第2項温存案」を聞いてみると、強く首を横に振る士官ばかりである。
 いやしくも総裁がこのような提案をした以上は、自由民主党は現職の自衛官が制服で国会で証言できるように提案すべきである。当事者の意見を国民の前で聴けるようにせねばならない。

<拉致被害者の救出のために>
・わたしは答えた。「間に合わないと思われたのでしょう」。すかさず野党議員が「何に」と聞き返した。予想通りだ。「安倍総理の任期中に間に合わせたい」という話が、わたしの口から出るのを待っている。わたしは「拉致被害者の救出のために」と答えた。
 朝鮮半島危機のなかで拉致被害者を助け出すには、自衛隊を動けるようにしておかねばならない。だが憲法の解釈変更では現行の安保法制が限界だ。改憲を最低限でもせねば前述の奇怪な三原則を外せない。

・そしてわたしは西暦2017年12月に自由民主党本部で開かれた憲法改正推進本部で「早期に、かつ現実に9条改正を実現するためには、考えを変えて9条温存に同意します。しかし現状の自衛隊を固定してはいけません。自衛隊の明記だけでは足りません。本9条は自衛権の発動を妨げないという1項を加えることを新しく提案します」と発言した。
 信じがたいことに、この一回生議員の提案が実質、受け入れられ、9条に「自衛の措置をとることを妨げない」を加えることが、自衛隊の明記とあわせて自由民主党の正式案となった。

<国会審議のタブーを打破>
・拉致被害者の救出が、関係者の亡くなることによって間に合わなくなることにならないように、できるだけ早くやれる9条改正とする。それには賛成だ。それならわたしも「第2項の削除を主張していて早期の改憲ができるのか」という問いに晒されなければならない。
 では、どうするのか。
 ひとつには何より国民自身が「自分たちをさらに分断していくより、これまでの対立感情も抑えて、一致できる点を見つけていく」という新しい価値を考えてほしい。遠回りに見えて、これがいちばん近道である。
 もうひとつは、先ほど制服自衛官の国会証言を含め、国会議員のタブーを打ち破っていくことだ。
 わたしは選挙活動をせず後援会も作らず後援会長も居ず地元もなく、政治献金を受け取らず資金集めパーティもせず、派閥にも都道府県連にも属さない。
 国会議員としての活動は公設の3人の秘書と共にすべて、国事に打ち込んでいる。それでも自由民主党がわたしに質問させなければ、とっくに立ち往生している。ところが1年生議員の任期が始まってわずか9か月で7回の質問機会が回ってきた。

<まさかの事態の想定>
・すなわち北朝鮮からの反撃として、在日米軍が駐留する日本への弾道ミサイル攻撃があり得ることも政府としては当然お考えになっていると思いますけれども、極めて重大なテーマです。そのミサイル攻撃も、在日米軍基地だけではなくて、在日米軍の行動を制約する意図を持って日本の原子力発電所を含む重要インフラを狙う可能性も考慮せねばならないのではないでしょうか。

<日本の道を誤りかねない>
・敗戦後の日本ではほとんど誰も、天皇家のご存在のほんとうの意義や、皇位継承がなぜ父系でなければならないかを教わっていない。ましてや宮家について正確な学校教育など受けてはいない。わたしもまったく同じである。

・それを受け入れた自由民主党もまた、「女性宮家」の深刻なリスクに気づいていなかった。あくまで法律ではなく、新法の成立にくっつけられた附録に過ぎないからだ。

<日本の強さの根幹>
・日本を史上初めて占領したGHQが「日本の強さの根幹は天皇にある」と見抜き、皇室の弱体化をビルトインするために、敗戦当時に14家存在した宮家のうち、天皇陛下の弟君以外の実に11家までを皇室の外に出してしまった(臣籍降下)。

・関西のある英明な知事が、烈しい口調でわたしにこう仰ったことがある。「青山さん、旧宮家の復活なんて絶対に駄目ですよ。私がX国の大使館に居たとき、旧宮家の男性がやって来て女性のいる酒席から何から要求ばかり。すっかり駄目になっている」
 知事の真摯な言葉の背景は「皇籍離脱からもう70年以上が過ぎ、今さら帝にはふさわしくない」との意見が人口に膾炙していることだ。二千数百年の歴史にとって70年にいかほどのことがあろうか。皇籍を復活される方がひとり、あるいは少数ならともかく、さまざまな方がいらっしゃる。これを語るのはタブーに近いが、現在のご様子の調査は当然、必要になる。
 そしてこれは現在ではタブーであっても皇位継承の永い歴史ではふつうに行われてきたのである。ただ機械的に継承していただいていたなら、このように長年、続くはずもない。

・そのうえで、まだ成人されずずっと前の12歳前後の男系男子が6人もいらっしゃるのは、天皇家の長い歴史のなかで実は今は皇位継承が安定する時代なのだ。お子様であるから、成人のご乱行とは無縁だし、帝王学も今なら間に合う。そのお子様のいらっしゃる旧宮家を皇籍に戻すか、成人込みではどうしても嫌というなら(わたしは全くそう思わない。旧宮家にに対する不当な中傷に近いと考えるが)、お子様が現宮家にご養子として入って頂ければよい。皇室典範の簡素な改正で済む。
 元総理大臣である野田さんの暴走を許し、陛下のご譲位をめぐる立法措置に暗黒部分を挿入せしめてしまったのは、政治的妥協の産物どころではない。国会議員の信じがたい無知と怠慢によることを、わたしも含めて自覚せねばならない。

<総理大臣の発言の重さ>
・さらに通常国会は、森友学園事件と加計学園の一件で多くの審議時間と国費を費やしに費やした。
 森友学園事件は、理事長が公金を詐取した疑いの濃い刑事事件であり、国会ではなく司法が裁くものだ。

<拉致事件にも繋がっている>
・例えば拉致事件がなぜ解決しないのかということにも繋がる。拉致被害者と特定失踪者のために無償の努力を続けてきた荒木和博・拓殖大学教授はメールでこう語っている。
「国会で参考人として陳述した加戸守行・元愛媛県知事の言葉で『歪められた行政が正された』との発言は色々感じるものがありました。加戸さんは知事在職中も拉致問題には熱心に対応して下さりました。(中略)拉致問題など、歪められ続けた行政によって放置されてきた最もたるものと言えます」

<不安ノ解体ハ一日ニシテハ成ラズ>
・このように緩い組織運営が自由民主党の長所でもあり短所でもある。所属国会議員の自律した意思に任されていてやり甲斐がある。同時に、早い話がその議員にやる気があるかどうかに左右されっ放しである。

・わたしはプロの物書きだからこそ、講演と文章は違う。
 講演ではおのれの魂が命ずるままに、血と汗でおこなっている。
 この日、いちばん訴えたのは「異業種のひとよ、国会に出でよ、地方議会に出でよ」ということだった。世襲でもなく業界のつながりでもなく、ただ祖国を甦らせたい人は、選挙に出よう!女も男も関係ない。お金がなくても出られる!わたし自身、西暦2016年夏の参院選に参加したとき、選挙カーを借りて演説しただけだった。
 ハガキ一枚出さず、2016年6月22日の公示の数日前に突如、出馬表明して、準備は一切なにもなく、東京、大阪を中心に話して回っただけで、それを見知らぬ人々が撮影して動画をアップして下さった。それが選挙活動の全てだった。その動画の中身だけが当落も票数も決した。大金のかけようがない。



『大直言』
青山繁晴   百田尚樹  新潮社   2017/1/31



<共同通信社というのは左翼思想の非常に強い報道機関です>
・反日とまでは言いませんが、実質そう言われても仕方がないほど、日本の国益などは一切考えずに記事作りをしてきた通信社です。
 知らない人のために書くと、日本の地方新聞のほとんどが、政治や経済の記事は共同通信社の配信したものを載せています。政治的な社説もそうです。多くの地方新聞は共同通信社の書いた左翼的な社説を、そっくりそのまま載せるか、あるいは少し書き直して載せています。それを読む人はそんなことを知りません。「東京の全国紙のことなんか知らんが、おらが地元の新聞社が言っていることだから、本当のことだろう」と無条件に信じ込んでいます。現在、共同通信社の配信記事を載せている地方紙をすべて合わせると、1千万部以上になります。これは朝日新聞の実売部数の倍です。つまり敢えて言えば、日本の世論に最も大きな影響力を持っている「新聞社」は、朝日新聞でも読売新聞でもなく、共同通信社ということになります。

<平和を議論する>
<すでに「第3次世界大戦」と覚悟すべきだ>
(青山)これは一応、ぼくの本来の専門分野の話になるんです。日本で専門家というと学者や評論家のことを指すことが多いんですが、本当は実務者のことです。その実務者の間ではまさしく、百田さんがおっしゃったことに直結するのですが、「今は第3次世界大戦だ」といった議論が普通に行われています。
「第3次世界大戦」なんて言うと、大げさに聞こえるでしょうが、実務者の現実的なレベルではそういう認識がもう共有されている。
 1つは、サイバー空間の戦争。サイバー世界ではすでに世界大戦が起きている。中国はアメリカ人のアメリカ人の若いハッカーを雇って、人民解放軍の中にハッカー部隊を作っています。十代の少年にも巨額の契約金と特権や財産を渡している。そしてアメリカ国防総省のハッキングにすでに成功しています。

・その当時の中国人民解放軍は、アメリカの軍や行政機関のネットに侵入するのが主な狙いだったけれども、そのうちターゲットを企業にも広げてきた。日本でも有名なシリコンバレーに限らず、テキサス州のヒューストンをはじめ次世代の最先端企業に次々ハッキングを仕掛けている。
 サイバー戦争の特徴は充分な防御ができないことです。ファイアウォールを築くと言いますが、現実的には妨げない。だから防ぐかわりに、アメリカ軍の側も徹底的に攻撃するようになったんです。

(青山)自衛隊にもサイバー部隊はありますけれども、この分野においてまで専守防衛だなんて、ありえないことです。サイバー空間において「やられてから初めてやり返せる」なんて意味がありません。だから自衛隊も、本当は攻撃能力を持ったサイバー部隊、あるいは、今よりもはるかに高いレベルのサイバー攻撃部隊を早急に持たないと、日本だけが第3次世界大戦の敗者になってしまいます。
 また、「第3次世界大戦」ということで言えば、パリ無差別テロについて、オランド大統領が事件を「第3次世界大戦だ」といったニュアンスで語ったことがありました。この時、専門家—―実務者のことです—―は誰も大げさだとは思わなかった。

(青山)冷戦が復活したとか、いい加減なことを評論家、学者は言うのですが、全然復活してないんです。冷戦は復活してません。なぜかというと、アメリカがプレイヤーではなくなっているから。
 今起きているのは冷戦、コールドウォーではなく、ホットウォーです。潰したはずのソ連がロシアとしてプーチンの下、蘇ってきて、トルコを最前線とするNATOと戦争に入りかけている状態だと見るべきです。
 こうした状況下にもかかわらず、日本の安全保障の議論はあまりにもレベルが低い。

<「平和の使途」が戦争を起こす>
(百田)日本を利用したい、あるいは、日本を占領したい、あるいは、日本を痛め尽くしたいという国にとっては、日本はものすごく楽な国でしょう。スパイはし放題、あらゆる軍事機密は盗み放題。特定秘密保護法ができたとはいえ、刑はきわめて軽い。しかも軍隊はまったく動けない。仮に、日本の離島がどこか取られたとしても、動けないですよね、まったく。

<「平和を愛する」で思考停止するな>
(百田)よく「日本の平和国家としての評価は高い」というけど、実際はそうでもないんじゃないでしょうか。日本の研究家、日本をすごく研究している学者とかは、たぶん評価していると思うんです。しかし残念ながら、おそらく、国全体として見た場合は、まったく評価されてないと思います。というのは、どこの国もそうですけど、まず、第一に考えるのは自分のところの国益ですから。そうすると、日本の、いわゆる平和主義というのは、逆に、諸外国から見ると、いいように利用されている感じがします。

<政治家を議論する>
<政治家は覚悟を持て>
(青山)「青山さんは本気で拉致被害者を取り戻そうと考えているんですよね。本気でメタンハイグレートを日本の自前資源にしようと考えているんですよね。でも、それを言うだけなんですか。本気でやるんなら、ぼくたちと同じように血を浴びる覚悟でやったらどうですか」
 そんなふうに言われて、ちょっとムカッとしたんですよ。ぼくら民間人だって血を浴びる覚悟で実務を遂行している。リスクだって実際、山のように背負っていますから。
 百田さんが本を出すのだって、リスクを負っているわけでしょう。なのに、何を偉そうに政治家だけが特別であるかのようなことを言っているのかと、思いましたし、そんなふうに言い返しました」

・それからの1週間は本当に苦しい時間でしたよ。絶対に出たくない。おのれを売り込む選挙が嫌だし、出たらどこかから叩かれるのも目に見えていました。実際にすぐに『週刊文春』にまっ赤な嘘記事で攻撃と妨害をうけましたね。
 また、公費で生活の一部でも賄うことにも抵抗がありました。

<国会議員に資格試験を導入せよ>
(百田)わたしはいまの政党でいえば、自民党を支持していますが、ただそれは、他の政党が酷過ぎるから、というところがあります。実際には自民党にも醜い議員はたくさんいるんですよ。国益を考えていないような議員もいます。自分のことしか考えていない。いや、自分のことならまだマシです。中国、韓国の国益を優先しているようなのもいます。売国的な政治家もいます。

・(青山)ぼくは自民党から出馬するといっても、自分の存在意義は自民党の「腐っている」部分を打ち破るところにあると考えていました。だから組織、団体の応援もすべてお断りしたし、安倍総理の応援演説もお断りしました。組織、団体に支えられて当選すればどうしてもその既得権益を守る議員活動に堕してしまう。
 ぼくは、本来、参議院議員はボランティアでやるべきだと考えているんです。現状、歳費などで年間2144万円、それに加えて毎月、文書通信交通滞在費百万円が支払われています。ぼくが議員になって辛い気持ちを感じる理由の一つは、こういうお金を税金から頂いていることです。食うや食わずの方が納めた方々の税金をこういう形で頂くのがとても心苦しい。
 実ところ、全額返上したいと申し出たのですが、それをやると憲法違反ですと総務省に指摘されました。また当選後に寄付すると、まさしく違法な議員の寄付行為です。だから頂いているのですが、本当にこれは心苦しいんです。ぼくが居るあいだに参議院のボランティア化は無理でしょうが、いずれ実現してほしいと思います。

・(百田)調理師には調理師免許があります。弁護士になるには司法試験、医師になるには医師国家試験に受からないといけない。多くの仕事で資格試験があるわけです。医師あたりは人の命を預かる仕事なんだから、厳しい試験があって当然でしょう。
 ところが、国会議員になるには、何の資格も要らない。そのことをあまり不思議に思わない人が多いけれども、国会議員は国の命運を左右する仕事ですよね。当然、国民の命を左右する仕事と言えます。ですから、ある意味で医師や弁護士よりも責任の重い仕事なはずです。
 ところが、現実には、そこらで歌を歌っていたような姉ちゃんや、スポーツしかやってこなかった人がなっている。もちろん、そういう職歴がいかんというんではないですよ。もっとレベルの低い人もいるでしょうから。
 だから、わたしは国会議員になるには、ペーパーテストを課してもいいんじゃないか、と思っているんです。歴史観、国際状況、最低限の法律知識等々。何も上位何人だけを合格にしろと言っているわけじゃない。ある一定の知識を得ている者だけが、国政に出られる権利が与えられる。
 こういうことを言うと、必ず「差別だ」と言う人が出てくる。学歴の低い人に不利じゃないかとか、全部の人を平等に扱えとか、ね。でも、それを言い出したら、医者になるには大学の医学部を出ないといけないのに、それを誰も差別とか言いませんよね。国会議員が無試験というのはおかしいと思う。
(青山)たしかに差別だと言う人もいるかもしれませんが、他の多くの仕事が資格を要求しているんだから、当然ですね。もしも配慮をするのであれば、議員になるための学校があってもいいかもしれません。中学しか出ていなくても知識が足りないのだけれども、国政を目指したい、というような人を養成する機関のようなものをつくればいい。

<二重国籍の政治家は論外だ>
(百田)もう一つ、国会議員の「資格」ということで触れておきたいのは、民進党の代表になった連坊さんの二重国籍問題です。私はもう「政治家の二重国籍は絶対に駄目」だと考えています。
(青山)同感です。

・(青山)敗戦後の日本の特徴として、国会議員の中にも残念ながら国家を否定するような思想の人がいますからね。また、たとえ自民党の議員であっても、国家観も何もないような人もいる。こんなことは他国ではありえません。左右いかなる立場であっても、国家というものを土台として考えない議員がいるなんてのは日本くらいです。

<政治家は一度は民間で働け>
(百田)もう一つ、議員の人に希望したいのは、民間で一度は働いたうえで政治家になってほしい、ということです。これは制度化が困難なのはわかっているんですが。
 税金、仕事、金融の問題等に関して立法するにあたって、民間で働いたことのない人はズレてしまうと思うんです。一般社会のことがわかりませんから。
 その典型が民主党政権のときの公約でした。彼らは随分バカな公約をしましたが、なかでも酷いと思ったのが「高速道路無料化」ですね。そんなことをしたらどうなるか、民間で働いたことのある人ならわかるはずなんです。
 当然、高速を使う車が激増する。渋滞が頻発する。そうなると、日本の物流が一挙に壊滅的なダメージを受けますよ。東京だけで1千万以上、首都圏で3千7百万人もの人がいます。

<そんな想像力すらないのは、民間での経験がない議員が多いことと関係している>
(百田)少し前にパナマ文書が明るみに出て、タックスヘイブンが話題になったことがありましたね。あの時、タックスヘイブンを利用している日本人は少なくて、しかも政治家の名前は出てこなかったけれども、それは別に日本の政治家が清潔だからではありません。タックスヘイブンを使わなくてもいいシステムが日本にあるということです。要は、親の後援団体、政治資金団体を子供が、まったく税金を納めずにそのまま相続できるようになっているから、わざわざタックスヘイブンを利用する必要がないというだけ。このこと自体も大きな問題ですが、結局こういうシステムがあるから、世襲議員が多いのです。
(青山)ちなみにぼくは後援会も作っていませんし、言いましたように組織や団体の支援も一切、受けていませんからご安心ください。
 さきほど参議院議員は本来はボランティアと言いましたが、議員は自分の知識や経験を使って公に奉仕する仕事だ、ということが前提です。他の議員にそうしろと押し付けることはしませんが、ぼくはそうします。ぼくが6年間それを貫いたくらいでは、全体が変わるわけではないでしょうが、そういう議員が増えていって、いつか色々な職業の人が、議員として己の知見を無償で提供するような日本であればいいな、と思います。
 
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