「現代の安全保障において最も安上がりの武力は核兵器です」し、「日本のようにミサイル防衛だけですべて対処し続けるのはコスト面では不利」で、防衛費を抑えるためにも有効な手段なのです。(1)



『人口減少と自衛隊』
ロバート・D・エルドリッヂ  扶桑社 2019/3/2




<自衛隊を襲う「人口減少」という有事>
<日本の深刻な人口減少>
<「人口減少」という有事>
・「いまの日本は少子高齢化が進み、人口が大きく減り始めています。日本の総人口は約1億2700万人ですが、このままだと50年で3分の2の数になり、100年で半減していく。100年あまりで人口が半減しようとしている人口大国は、世界の歴史のなかでもひとつもない」

・このままいくと総人口は2060年には9284万人となり、1億人を割るとしています。

・そして総人口の減少以上に問題なのが、その内訳です。2060年には2010年と比べて、15歳から64歳までの生産年齢人口が3300万人減少し、4793万人(全体の51.6%)になるのに対して、65歳以上の高齢人口は600万人上昇し、3541万人(同38.1%)になるということです。所得を得ている若年層の割合が大きく減少し、一方で、年金などの給付を受け、多くの医療ケアを必要とする高齢層が急増します。

・これによって、働く1人当たりの負担(高齢者を支える経済的な負担を意味する)はますます増えています。人口比を計算すると、私が生まれた昭和43(1968)年時点、9.9人の生産年齢人口で1.0人の高齢者を支えました。これが平成29(2017)年時点では2.2人。将来、2065年の予想人口比率では1.3人にまで減少するという計算になります。大よそ4人で3人を支えることを意味します。

<「少子高齢社会」時代の国防>
・しかし人口減少の問題と密接に結びついていながら、ほとんど対策が立てられていない分野があります。それが「国防」です。

<自衛隊と日本国憲法>
・ハーグ陸戦条約では、「交戦者の資格」は、次の4つの基準があるとしています。
〇部下の責任を負う指揮官が存在すること。
〇遠方から識別可能な固有の徽章を着用していること。
〇公然と兵器を携帯していること。
〇その動作において、戦争法規を遵守していること。
自衛隊はこの4つの基準を満たしています。したがって、国際法に則れば、自衛隊は確実に「交戦者」、すなわち軍隊ということになります。

<深刻な自衛隊の隊員不足>
・このような国民の支持がありながらも、自衛隊は少子高齢社会によって、人材確保がますます困難になっています。

<拡がる防衛領域>
・以上、これからはより多くの海外との連携、そして未知なる宇宙、サイバー、電磁波といった領域など、ますます自衛隊の役割は増えていきます。ここでもし人口減によって、結果的に自衛隊の活動を縮小することがあれば、それは日本国内のみならず、世界中に大きな影響をもたらすことになるのです。

<人口減少時代を生き抜くための自衛隊への提言>
<自衛隊への15の提言>
・この中のいくつかについては、すでに防衛省が近年の『防衛白書』で発表していますが、あえてそれらも取り上げ、その問題点を指摘しています。その理由は、解決策は単独では存在し得ず、数多くの解決策を同時に、包括的に講じないといけないことを示すためです。

1、 給料アップ(⇔予算の天井)
2、 定年の引き上げ(⇔自衛隊の能力低下)
3、 採用条件の引き下げ(⇔自衛隊の能力低下)
4、 予備自衛官数の拡大(⇔即応対応性の維持に課題)
5、 女性自衛官の倍増(⇔産めなくなる女性増加の可能性)
6、 海外の任務削減(⇔国際安全保障の低下)
7、 米国による安全保障に一層依存(⇔米国の日本に対するコミット増加)
8、 集団安全保障機構の構築(⇔9条改正、他国の日本へのコミット増加)
9、 限定的核抑止力の保持(⇔核の拡散)
10、 徴兵制度(⇔憲法第18条違反、隊員の士気・質の問題)
11、 契約会社・外国人軍人の採用(⇔忠誠の問題)
12、 自衛隊の効率化
13、 米軍基地との共同使用
14、 隊員、職員の仕事の効率化
15、 技術の導入

<1、 給料アップ(⇔予算の天井)>
<自衛隊員の給料>
・安倍政権による経済政策により、戦後最も長い景気が続いていると言われていますが、それを実感する国民は少ないという指摘もあります。今の隊員とその家族は恐らく好景気を実感できない一組ではないでしょうか。

<国防費のキャップ>
・日本の防衛関係の支出の約44%は、人件費(糧食費含む)、つまり隊員の給料です。

<国防費の推移>
・ところで、そもそもGDP1%を突破したか否かなどという議論は、日本でしか通用しません。これは明らかに財政上の制約ではなく、政治的なものです。

<各国との国防費の比較>
・2017年の軍事費、国別では、1位の米国が前年比横ばいの6100億ドル、2位中国は5.6%増の推計2280億ドルでした。2016年は3位だったロシアが、約20%減の663億ドルで4位に後退し、代わって、サウジアラビアが694億ドルで3位になっています。日本は前年からほぼ横ばいの454億ドルで、順位は8位になっています。

・防衛費の増大というと、多くの日本人は兵器の購入費が増えると思うかもしれません。しかし繰り返しになりますが、防衛費の半分近くは、「人」、つまり自衛隊員のために投資されるものです。さらに隊員への教育、訓練の機会が重要です。

<2、 定年の引き上げ(⇔自衛隊の能力低下)>
<自衛官の階級と定年年齢>
・二つ目は、自衛官の定年年齢の引き上げです。ただし防衛省は、すでにこのことについて検討に入っており、2020年度以降、階級に応じて定年年齢を1~5歳引き上げることを予定しています。

<3、 採用条件の引き下げ(⇔自衛隊の能力低下)>
<4、 予備自衛官数の拡大(⇔即応対応性の維持に課題)>
<5、 女性自衛官の倍増(⇔産めなくなる女性増加の可能性)>

<6、 海外の任務削減(⇔国際安全保障の低下)>
・自衛隊の人員不足への対策として、こうした海外派遣の任務を制限するというのも一つの手です。しかし、こうした自衛隊によるPKO活動は、国際的に高い評価を得ています。

<7、 米国による安全保障に一層依存(⇔米国の日本に対するコミット増加)>
<日米安保条約の締結>
・これは、これまで以上にアメリカへの依存度を高め、アメリカによる日本に対する安全保障の強化を図ることで、日本の負担を減らすという方向です。

<8、 集団安全保障機構の構築(⇔9条改正、他国の日本へのコミット増加)>
<個別的自衛権のデメリット>
・つまり自国の「戦力」を肥大化させないためにも、集団的自衛権をしっかりと持っていた方がいいのです。
 集団的自衛権に頼らず、個別的自衛権のみで自らを守るという選択を取る場合は、単独で身を守らなければなりませんから、当然、重武装が必要となります。実際に、北大西洋条約機構(NATO)にも加盟せず、永世中立を保っているスイスは、今でも徴兵制があり、強固な軍隊を保持しているのです。当然防衛費は膨らむことになります。
 日本人の評論家の中には、「永世中立国スイスに学べ」ということを言う人がいますが、彼らがスイスの国防体制について本当に知っているのか、甚だ疑問です。

<集団安全保障機構の構築>
・そして何より、日本が戦後一貫してGDPの1%以内という少ない国防費を維持できてきたのは、日米安保という集団的自衛権によるものです。現在の日本の国防費は約5兆円ですが、防衛大学校安全保障学研究会の武田康裕教授と武藤巧教授は、仮に日米安保を破棄した場合には、現在の5兆円の約4~5倍、つまり22兆円から23兆円ほど必要になるだろうと試算しています。

・この試算の妥当性には議論の余地があるでしょうが、いずれにしても、通常の先進諸国の割合、つまりGDPの2%以上は少なくとも必要になることは間違いないでしょう。したがって、これからの少子高齢化社会において、いかに人員と予算をかけずに国防を行うかと考えた場合、アメリカのみならず、より広い範囲での集団安全保障網を構築するのは有効な手立てです。

<9、 限定的核抑止力の保持(⇔核の拡散)>
<原爆を開発する前に負けた日本>
・これは、最小限の核抑止力に同調するということです。

・核兵器の開発に最初に成功したのはアメリカです。第2次世界大戦中にアメリカは、ドイツから亡命したユダヤ系物理学者の力を借り、原子爆弾の製造を成功させます。

・日本でも、第2次世界大戦中に、陸軍と海軍でそれぞれ原子爆弾開発計画が進められていましたが、どちらも基礎段階を出ず、終戦を迎えています。

<開発の広がりと核廃絶の動き>
・結局のところ、核開発の要因は、お金でした。膨大にかかる開発費は、財政負担を増大させ、米ソはもちろん、中国でも大躍進期に核開発を強行したために、かえって大飢饉を誘発することとなり、無制限な核開発は不可能となりました。

<日本が核を持つとしたら>
・そうした中、仮に日本が核兵器を持つとしたら、三つの可能性があると思います。
一つ目は、日本が自国で核を開発して配備し、管理、運用すること。
二つ目は、アメリカが核を日本に提供し、アメリカと日本が共同で管理、運用すること。
三つ目は、同じくアメリカが核を日本に提供し、日本が管理、運用すること。
考えられるのは以上の三つです。

・ちなみに、NATOには「ニュークリア・シェアリング(核兵器共有)」といって有事の際に、米国の核兵器を非核兵器保有国が米国の了承を得て使用できるシステムがあり、現在はベルギー、ドイツ、イタリア、オランダの4カ国が参加しています。また最近、オーストラリアの学者は、同国で同様なシステムの導入を呼びかけ、ニュースになりました。
 
・そして、実は核武装というのは、先述の桜林美佐さんも、「感情論を抜きにすれば、現代の安全保障において最も安上がりの武力は核兵器です」とし、「日本のようにミサイル防衛だけですべて対処し続けるのはコスト面では不利」と指摘しているように、防衛費を抑えるためにも有効な手段なのです。

・ただし、財政的な面だけでは、大変厳しい判断になると思います。運用する専門の司令部や部隊を作り、管理する設備、発射する能力などを維持しないといけませんし、古くなるものの交換や処理は相当かかるはずです。さらに実験する場所も、狭い日本にはなく、何かの事件、事故があったら、人口密度の高い日本では致命的なダメージを与える可能性は否定できません。

・そうしたことを考えると、現状では核武装をしないことのメリットの方が大きいと、私は思います。しかし、研究はギリギリまで行い、地域や世界の安全保障が著しく悪化して、国連に期待ができず、日米同盟が空洞化し、アメリカの核の傘に対する信頼度が低下すれば、主権国家としての日本は、自国を守る権利は当然あります。
 この考えは、石破茂元防衛大臣も持っています。

・実は、トランプ大統領は、大統領選挙の行われた2016年に、スピーチやインタビューにおいて数回、「日本が核武装していい」という発言をしています。

<10、 徴兵制度(⇔憲法第18条違反、隊員の士気・質の問題)>
<徴兵制度の復活>
・ところが2018年になって、フランスが徴兵制を復活させるという動きがありました。

<フランス国家「ラ・マルセイエーズ」の意味>
・そんな時、ルソーが『社会契約論』の中で展開した、祖国防衛という神聖な義務を負う市民というものは、フランス革命で、現実のものとなります。
 フランス革命政府は、オーストリアとプロイセンに宣戦布告をするものの、両軍は1792年8月19日にフランス領内に侵攻し、パリへと近づきます。これに対して、ジャコバン派の呼びかけによって集まった国民軍が危機を救います。9月20日、ヴァルミーの戦いでオーストリア・プロイセン連合軍を撃破したのです。
 ここに近代国民国家が形成され、祖国を防衛するための国民による軍隊が始まったと考えられています。つまり一般の国民によって、国を守る軍隊を組織することこそが、国民が祖国の主権者という証しそのものという考えです。

・この「ラ・マルセイエーズ」は、フランス革命の際にマルセイユからパリに駆けつけた義勇軍が口ずさんだものでした。

<日本の兵役>
・実は日本においても、同様のことが言えます。
 日本において近代国民国家が形成されたのは、明治維新によるものと言えますが、それまでの軍隊は、各藩主に帰属している武士階級によってのみ構成されていました。
 それが近代的兵制改革を経て、農民や商人、職人であっても、みな一律平等に兵役に就くことになります。そのために国家による教育が施され、大きな戦争を経るたびに、社会保障制度が整っていきます。日本においても、まさに兵役こそが近代国家の国民を作り上げたわけです。
 このように、徴兵制とは、これまでの身分制度を破壊して、均質で平等な国民が、自らを守るために自ら武装したことを発端として誕生したものです。ここには、自由・平等という人権思想と、国防が主権者である国民自身の権利義務であるという民主的要素が存在しています。このような思想的土壌があって、初めて国民皆兵による徴兵制という制度が成り立つのです。

<ヨーロッパ各国における徴兵制の現在>
<祖国の防衛は、市民の神聖な義務である>
・フランスに先駆けて北欧の国スウェーデンも、2010年に廃止していた徴兵制を2018年1月に再開しました。

・そして日本の隣国、韓国でも兵役があることは、よく知られています。有名な歌手やサッカー選手が、キャリアを中断して兵役に就くことが、日本でもニュースになるからです。また、北朝鮮は男子のみならず女性も徴兵しています。なお中国は地域ごとの枠を志願兵で満たせない時には徴兵するという制度ですが、現在のところ、ほとんどは志願兵で賄われています。
 ところが、中国は志願兵で賄おうとしていると書きましたが、2010年7月1日より、国防動員法が施行されているのはご存じの通りです。この場合、中国国内で有事が発生した場合、18歳から60歳の男性、18歳から55歳の女性は国防義務の対象になります。これは国内にいる者に限るのではなく、海外にいる中国人でも関係します。
 既にデータは古くなっていますが、平成30(2018)年6月1日の法務省の公開資料によれば、日本国内にいる中国人の数は、74万1656人にも及んでいます。これは在留資格のある人の数のみで、違法で滞在している人々は含まれていません。また、一時的にビサなし旅行で来ている、数十万人も含まれていません。
 言うまでもありませんが、これは自衛隊の総兵力の3倍です。しかも、これは正規軍ではなく、有事の時に動員令が発令された際に、対象になる日本にいる中国人(子供や老人は一応、対象ですが)の数です。正規軍の203万人を加えると相当の数になります。なお、予備軍の50万人もいることを忘れてはいけません。
 
・日本にいる74万人のうち、21万人は東京都に住んでいます。これは、観光やビジネスなどで来ている人、または偽造の別の国のパスポートで来ている中国人も含まれていません。
沖縄県には1000名、登録している中国人がいますが、観光で来ているのは、その何倍かと思われます。平均では、1日約3000人の中国人観光客が沖縄県内にいます。合計して計算したら、沖縄にいる自衛官の数と大きく変わりません。
 ところで、国防動員法は、さらに国防の義務を履行せず、また拒否する者は、罰金または刑事事件に問われることもあり、政府は国民の物資や生産設備の徴用ができ、政府か軍が交通、金融、医療機関やマスコミまで管理できるようになっています。

<日本の徴兵制の可能性>
・徴兵制は、この憲法第18条にある「意に反する苦役」に当たり、禁じられているとするのが、戦後の通説であり政府の公式見解になっています。つまり徴兵制は、現状、憲法違反ということになり、もし徴兵制を復活させる場合は、憲法改正が必要になります。
 ところで、徴兵制は憲法違反ではないという人もいますが、文章を読めば、どう見てもそう読み取れてしまいます。裁判になった場合、憲法違反という判決はほぼ間違いなく下されるでしょう。

・また台湾では、2018年12月に徴兵制度を終了したという報道がありました。

・オーストリアでは、2013年に行った国民投票で、圧倒的な過半数で、徴兵制度を維持すべきとの判断を国民が下しました。

<11、 契約会社・外国人軍人の採用(⇔忠誠の問題)>
<民間軍事会社の存在>
・これは、契約会社ならびにプロの傭兵を使うということです。これもほとんどの日本人にはピンとこないと思いますが、アメリカは普通になっています。

・とにかくこうした戦争には、莫大なお金がかかります。そこで、少しでもコストを減らし政治的なリスクを避けるために採用されたのが、民間会社との契約なのです。
 
・すなわち正規軍には戦争の中核業務である「戦闘行為」だけを担わせ、残りは民間に「外注する」ということです。イラク・アフガニスタン戦争と戦後処理に要した全体の兵力の半分以上は、契約会社の職員です。
 つまり、正規軍の兵站支援、要人の警護、政府施設の警備、武器・弾薬や食料の輸送警護、警察や軍隊の訓練、地雷や不発弾の処理、テロリストの尋問、特殊作戦………など、これまで軍隊や警察が担っていた業務を、民間の会社と契約して行ってもらうということです。トータルで考えた場合は、こちらの方がコストは少なくて済むのです。

・この契約会社は、「戦闘行為」は行いませんが、傭兵を派遣する「民間軍事会社」も存在します。「民間軍事会社」というと、多くの日本人は、漫画やアニメの世界だけに存在するものと思っているでしょうが、こうした会社はれっきとして存在しています。

・たとえば、トランプ政権の教育長官エリザベス・“ベッツィ”・デヴォスの弟、エリック・プリンスが創業し、アフガンなどで活躍したブラックウォーター社です。

・「民間軍事会社」は、国家や企業と契約して「戦闘要員」を派遣するのが基本です。報酬と引き換えに、契約した分だけ戦う傭兵を派遣するということです。ただし、戦闘地域に兵隊を送り込むのではなく、単に訓練の支援や輸送だけを行い、直接的な戦闘行為は行わないという会社もあります。
 なお、かつては「電話一本で革命を起こすも鎮圧するも思いのまま」という、大きな軍事力を持った企業もありました。
 冷戦末期の1989年に南アフリカで設立されたエグゼクティブ・アウトカムズ社が代表格で、アフリカのアンゴラやシエラレオネの内戦で政府と契約するや、圧倒的な軍事力で反政府組織を鎮圧した実績があります。その装備は、東側世界の崩壊で余剰兵器として横流しされたと思しき銃火器、戦車や装甲車、攻撃ヘリから戦闘機まで多数保有していたと言われます。なおこのエグゼクティブ・アウトカムズ社は、1998年に南アフリカ政府非合法と見なされ、解体されました。

・そうした経緯もあり、現在の民間軍事会社は、国際社会から目をつけられて非合法化されないよう、一見“傭兵派遣会社”とは分からないようにしています。

・こうした点から考えると、「超高齢社会」の中、人材難にあえいでいる自衛隊が「民間軍事会社」と契約するというのは、決してファンタジーでもフィクションでもなく、真剣に検討すべき課題であることは理解してもらえるのではないかと思います。

<傭兵と忠誠心>
・ですが、部分的な情報を共有すれば、全体像が見えることは否定できません。これは従来のスパイの一つの手法ですので、米軍の関係者、軍属に、可能な限り個人情報を、SNSはじめ店や外に出かける時、なるべく洩らさないでほしいといつも注意を呼び掛けています。これをオプ・セックと言いますが、残念ながら守る人は少ないです。

<米軍で活躍した日系人部隊>
・移民部隊として有名なのは、なんといっても第2次世界大戦での日系人による442部隊でしょう。

・日本では、帰化する人々の情報すべてを求める権利もあり、リスクの観点からするとしばらくの間(あるいはずっと)保管する義務があると思います。

<12、 自衛隊の効率化>
<自衛隊の変革と再編>
・自衛隊を整理し、少ない人員で最大の効果を上げれる組織にすることも同時に行っていく必要があります。

<13、 米軍基地との共同使用>
<14、 隊員、職員の仕事の効率化>
<15、 技術の導入>



『逆説の軍事論』   平和を支える論理
元陸上幕僚長  富澤暉   バジリコ  2015/6/19
    


<敵地攻撃の難しさ>
・敵地を攻撃するといっても、軍事的な観点から考えると、これは至難の業です。アメリカですら、目標情報が掴めないと嘆いている現状で、日本がどのように独自に目標情報を得るのか。北朝鮮を24時間監視するためには、どれだけの偵察衛星が必要なのか。

・さらに攻撃兵器の問題もあります。日本が核兵器を保有していれば、敵ミサイル陣地にでも、あるいは平壌のような都市でも効果的な攻撃ができるでしょうが、核はないのだから、攻撃のためには空爆であろうとトマホークのような巡航ミサイルであろうと天文学的な弾量を整備する必要があります。そのための予算をどこまで投入するのでしょうか。しかも、その効果は未知数です。

・ここで、従来型の「個別的安全保障」ではなく、「集団(的)安全保障」の枠組みの中で対応を考えることが重要になってくるのです。複雑な民族感情を越えて協力していくためにも、国連軍または多国籍軍という枠組みを活用することが重要になるわけです。

<日本の核武装>
・政治家の中には、北朝鮮の核実験に対抗して、日本も核武装の議論をすべきだという人がいます。

・重要なのは、ただ核兵器の議論をすることではなく、関連するすべての政治・軍事問題を広く、かつ、もれなく検討し、核を持った場合、あるいは持たない場合の外交の在り方や在来兵器による防衛力整備の在り方を議論することなのです。
 
・政治的にいえば、核武装論の裏側には、「中国の軍備増強への対応」や「アメリカに対する日本の自主性確立」という問題が潜んでいます。

・一連のシナリオを想定し、それぞれについてシュミュレーションし、備えておく必要があります。

<戦車の再評価>
・日本でも、このテロ・ゲリラ対策のため歩兵を増やす必要があるのですが、人件費が高く隊員募集に苦しむ陸上自衛隊の兵員数を増やすことは困難だといわれています。だとすれば、各地方に防災・消防を兼ね情報・警備を担当するかつての「消防団」のような「郷土防衛隊」が必要となりますが、これを組織するのは防衛省自衛隊の仕事ではなく、総務省と各自治体の役割でしょう。
 ともあれ、防衛省自衛隊としては歩兵の戦いを少しでも効率的にするための砲兵・戦車の数を確保する必要があろうかと思われます。

・現在、日本へのテロ・ゲリラ攻撃はありません。しかし、仮に朝鮮半島で動乱が起きた場合、日本全国でテロ・ゲリラ攻撃が多発する恐れは十分に考えられます。

<その破壊が直接国民生活を脅かす無数の脆弱施設が全国に存在>
・難民を担当するのは入国管理局でしょうが、何万、何十万になるかもしれない難民を日本はどう受け入れるつもりなのでしょうか。まさか、戦時の朝鮮半島に送り返すわけにはいかないでしょう。この人々への対応が悪ければ、混乱も起きるでしょう。収容施設、給食など生活環境の支援、さらには治安維持のために警察、自衛隊は何ができるのか。そうした有事への準備が既にできているとは寡聞にして聞きません。

・さらにいえば、こうした事態は全国で分散同時発生するので、とても現在の陸上自衛隊の歩兵では数が足りません。実は、そのわずかな歩兵を支援する兵器として戦車ほど有効な兵器はないのです。

<軍事というパラドックス>
・さて、軍事とは人間社会固有の概念です。したがって、軍事について考える際には、私たち人間の本質をまずは押さえておかなければなりません。すなわち、「闘争本能」と「闘争回避本能」という人間固有の矛盾した特性です。

・一部の例外を除き、人は誰しも死にたくない、殺したくないと思っているはずです。にも関わらず、有史以来人間は日々、せっせと殺し合いをしてきたという現実があります。
 19世紀ロシアの文豪トルストイの代表作に『戦争と平和』という大長編小説がありますが、人類の歴史はまさしく戦争と平和の繰り返しだったといえましょう。どうした天の配剤か、人間はほとんど本能のように闘争を繰り返す一方で、争いを回避し平和な生活を維持するための方法を模索してもきました。
 人は一般に他者からの支配、干渉を好まず、誰しも独立(自立)して自由に生きたいと考えているはずですが、自由とは欲望(利害)と切り離せない概念でもあります。
 そして、そうした人間同士が集まり集団(社会)を形成すると必ず争いが起こり、往々にして生命のやりとりにまで至ることになります。それは、民族や国家といった特定の集団内でもそうだし、集団と集団の間においてもしかりです。
 ただ、人間は他の動物と峻別される高度な知恵を有しています。そして、その地位を使い、自分たちが構成する社会の中に法律、ルール、道徳などによって一定の秩序を設計し、争いを回避する工夫をしてきました。

・要するに、21世紀の現在においても、「世界の秩序」と「個々の国家の自由・独立」の関係は、「国家」と「個人」の関係よりはるかに未成熟であり、極めて不安定な状態にあるという他ありません。
 軍事について考えるとき、私たちは好むと好まざるとに関わらず、こうした世界に生きているということを認識することから始めるべきでしょう。

・ところで、国内の秩序を維持するための「力」を付与されている組織は一般に警察ですが、国際秩序を維持するための「力」とは100年前までほぼ軍事力のことでした。
 現代世界では、経済力、文化力、あるいはそれらを含めた「渉外機能としての外交力」の比重が高まり、脚光も浴びています。しかし、だからといって軍事力の重要性が低下したわけではありません。
 軍事の在り方は戦前と戦後では異なるし、戦後も米ソ冷戦時代とソ連崩壊後、アメリカにおける9・11同時多発テロ後ではかなり変化しています。ある意味で、世界秩序における軍事の重要度は、以前よりもむしろ高まっているといえます。

<「世界中から軍事力を排除すれば平和になるのだ」という単純な論理>
・ひとつ、例をあげてみましょう。つい20年ほど前、ルワンダで10万人以上の人々が鉈や棍棒で殺戮されるという悲惨な民族紛争が起きました。私たちは、この事実をどう理解すればよいのでしょうか。

・現実には軍事力こそ戦争の抑止に大きな役割を果たしているというのが私たち人間の世界の実相です。

・周知の通り、20世紀は「戦争の世紀」といわれています。世界の人口が25億~30億人であった20世紀前半、2度の世界大戦における死者数は5000万人~6000万人にのぼりました。一方、20世紀後半の戦争、すなわち朝鮮戦争、ベトナム戦争をはじめとする「代理・限定・局地戦」と呼ばれる戦争での死者数は3000万人以下とされています。また、その間に世界の人口が60億~70億人に増加したことを考え合わせると、20世紀の前半より後半の方が、はるかに平和になった、ともいえます。

・米ソ2極時代、互いが消滅するような核戦争を起こすことは、現実には不可能でした。また、核兵器を保有しない国同士による戦争が世界戦争に発展しないよう、米ソ2大軍事大国が、通常兵器の威力をもって抑え込んだことも一定の抑止となりました。
 まことに皮肉なことながら、大量破壊兵器である核兵器の存在が20世紀後半の世界に相対的平和をもたらした要因であることは事実なのです。

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