コロナ以降の不景気がどのくらいの長さになるのか、正確なことはまだ誰にもわかりません。ただ、歴史に学ぶならば、少なくとも今後3年間の経済停滞を覚悟しておいたほうがいいのかもしれません。(2)



『ニッポン 2021-2050』
落合陽一  猪瀬直樹  KADOKAWA   2018/10/31



<「成長せず社会課題が取り残された平成の30年」>
・アメリカが順調に成長するなかで、日本は横ばい。相対的に右肩下がり。就職率は悪化し、会社に入っても不景気が続きます。日本経済全体に停滞感がある一方で、数年前に生まれた世代は「良い時代」を知っていてジャパンアズバンバーワンの幻想を持っていて断絶が生まれます。ただしこの頃まではまだ日本はアジアの盟主でした。
 次に出てくるのが、思春期には多くの人がパソコンを触っているデジタルネイティブと呼ばれる世代であり、僕もここに含まれます。すでに会社に入れば安泰という幻想は薄れつつあるなかで、IT産業だけが華々しい成長をして、そこの弱肉強食の世界に飛び込んでいく人たちが出てくる。2000年代後半になると中国は著しい成長をしています。僕が学生の頃は「これからは中国の時代だ」と盛んに叫ばれていました。アジアの工場としての中国ではなく、新たな市場としてのビジネスチャンスを期待して起業する人も出てきました。
 そしてスマホネイティブが登場します。スマホというあらゆる人たちをエンパワーメントするツールが普及するなかで、中高生であっても自分で稼いでいるような人たち、SNSで支援をもらいながら社会活動をする人たちが少なからずいる。

・こういった変化の中で、それぞれの世代ごとに経済成長についてさまざまな見方があること、そして国家全体としてジリ貧になっているという事実を認識することが重要です。
 成長を目指す国家でもあるいは成熟社会でもかまいませんが、まずビジョンを描き、そこを起点にどう社会のリソースを配分するかということが問われています。
 なぜ平成は失われた30年になったか。それはビジョンがなかったことに一因があります。
 人口減少ほか日本が直面する諸問題、技術革新による時代の変化を理解し、社会を構想しアップデートすることが未来に向けた僕たちの責務です。
 これまでの日本の歴史を振り返ると、鎌倉時代でも江戸時代でも、だいたい30年ぐらいかけてその時代の礎がつくられてきました。僕は近未来、2040年ぐらいを見据えて研究をしているということをよくメディアで発言してします。次世代のプラットホームとして役立つものをつくるということを意識して研究なり教育なりを行っているのです。直近の社会課題に取り組むのは当然として、僕たちはもっと長期的な視点で物事を考えなければならないということが、僕がいま訴えたいことの一つです。

<「日本はなぜ変わらなければならないのか」>
・現実問題として「この自治体を閉鎖して移住しましょう」という公約を首長が掲げて当選することなんて絶対にできないでしょう。その力学の延長線にあるのが高齢者優位の政策立案であり、いまの日本社会の苦境です。いま暮している人たちを尊重するのは当然のことですが、同時に全体のリソースを考えて行動する。そしてそれを戦略として決める人がこれからの地方には求められます。
 ある外国人の研究者の友人に、日本の人口ピラミッドを指して「よく日本人はあんな棺桶みたいなグラフで危機感を抱かないね」と言われたことがあります。棺桶というのはほんとうに言い得て妙です。僕たちは日本がいま棺桶に入りつつあるという状況を直視しなければならないのです。

<「地方を膚感覚で知らなければ日本のビジョンは描けない」  猪瀬>
・落合君が問題提起をしてくれたように、いま日本には課題が山積しています。僕がなぜ東京都副知事を引き受け、石原慎太郎さんのあとに東京都知事をやったのか。最大の理由は、東京からならば、日本を変えられると思ったからです。
 東京が先んじてビジョンを示せば、他の自治体も国もついてくる。中央政府、つまり霞が関は縦割りで意思決定が遅いし、東京以外の自治体は総務省から地方交付税交付金を仕送りしてもらうので勝手なことができない。そのほか霞が関の各省からも、自治体の事業に合わせて補助金が付く。昨日の世界、過去を基準とした世界からの補助金漬けになっているから新しいことがしにくい。
 霞が関と地方行政の関係はそういう事情だから、東京を一つの国に見立てて動かし、国が抱える課題を先に解決してしまう。これが仕事だと思っていました。

・それが財政破綻した北海道夕張市への都職員派遣です。2008年のことでした。東京23区より広い土地がありながら、当時で人口は約1万2000人、高齢化率が40%を超え、人口流出は加速している。そんな自治体ですので、およそ税収増なんて望むことができません。市民税や水道料金を引き上げたところでまかなえず、職員の給与は4割カットされることになりました。270人いた夕張市職員は一気に140人ほどに減ってしまった。そんな街で353億円の債権を18年かけて返済するという前例のない財政再建計画が始まっていたのです。これでは行政が機能するわけもなく、麻痺寸前でなんとか助けないといけない、と思って東京から職員を派遣したのです。

・東京は他の自治体に比べて裕福と言われますが、財政の実態を子細に検討すれば決して楽観はできません。景気の波に左右され、税金が減る時は1兆円単位で減ってしまう。実際1999年には財政再建団体に指定される寸前までいってしまっていました。これもほとんどの人が忘れている経験です。財政破綻への危機感を持てといっても、持つことはできない。
 夕張に職員を派遣したのには、東京だけが日本だと思ってほしくない、財政再建に取り組む地方の現場を若い職員にみてほしいという思いもありました。派遣した職員が働いていたのは真冬にもかかわらず経費削減のため庁舎の暖房が17時で切れてしまう役場です。

・視点を変える、という経験がなければ本質は見えてこない。結果として、日本全体や世界の中から自分自身の存在も見えてこないんだということをわかってほしいのです。
 自分の立ち位置を知らない人材にできることは限られます。自分の周囲だけが当たり前なのではなく、日本国内も多種多様であり、まず東京と地方ではまったく違う。これを世界に置き換えてみましょう。日本の当たり前を他の国でも当たり前だと思い、適当に振る舞ってしまえば「この人は日本のこと以外は知らない視野が狭い人」だと見なされ、うまくいくはずの交渉もうまくいかなくなります。

<「テクノロジーが東京と地方の共通項に」>
・さて、日本は都市と地方、それぞれに課題を抱えていますが、課題先進度でいえば地方のほうが高いという現実は認識する必要があります。東京の課題と地方の課題はもちろんつながるものもありますが、必ずしもイコールで結ばれるものばかりではありません。

・現実は逆でテクノロジーによって分断されるようなことはない、というより分断されようがない。それはプラットホームに乗った共通部分を探すことで見えてきます。

・プラットホーム化したテクノロジーは分断を促すというより、都市と地方を結んでいる最大の共通項になっています。

・僕は人口減少そのものは危機でもなんでもないと考えています。過疎化によって土地が余るというのも考えによっては大きなチャンスです。人口減少、すなわち労働力の減少や人的コストの拡大はテクノロジーの進化によって防ぐことができます。余った土地の活用法は権利問題さえクリアすれば、一気に解決が見えてくる。例えばブロックチェーン技術を使って、財産権をクリアにして民間に開放することで、僕たちが思いも寄らない有効な活用法が見つかる可能性が広がるのです。むしろ、それこそが地方を再興させる鍵だと言っていい。
 僕が考える地方再興を実現するための最大の条件はテクノロジーフォビアにならないこと。ロボットフレンドリー、テクノロジーフレンドリーであること。これに尽きます。

・この本では「近代の超克」、すなわち2021年に向けていまの日本を規定しているさまざまなシステムを見直すこと、そして2050年を見据えて、この国の在り方や、生き方をどう描くかをテーマにしています。そのためには将来を悲観せず、理想の社会に向けて一つひとつできることを探していくことが求められます。
 現状を嘆くだけで終わるのか、あるいは解決に向けて動き出すのか。いまこそ後者の決意が必要とされているのです。

<統治構造を変えるポリテックの力>
・なぜか。日本の統治構造の本質は強固な官僚制にあるからだ。日本の近代化の幕開け、明治期から徐々に形成され、戦前にはすでに完成をしていた日本型の官僚システムでは、国家のエリートが集まり、年次ごとの競争でピラミッド型組織の頂点を目指す。重視されるのは、各省の利益=省益
これは戦前から変わらず、戦後も引き継がれたと猪瀬氏はみる。
 これを解決するために落合氏は「ポリテック」という言葉を提唱する。政治(ポリティクス)とテクノロジーを組み合わせた造語だ。
 ポリテックの可能性を落合氏は縦横無尽に語る。介護、経済、そして電力。日本が抱える大きな問題の一つ、原発問題もポリテックで考えることができる。ポリテックは猪瀬氏がときに対峙し、ときに内部まで入り込み思考を深めた官僚制の問題を打破する一手になるのか。「近代の超克」の鍵となる統治構造を議論する。

<「日本システムの弊害の縦割り行政」>
・公文書の大きな役割は、歴史の検証です。文書を残しておくのはなんのためか。役人の保身や、政権のためではない。後世の歴史のためです。重大な意思決定は常に歴史から検証されなければならない。失敗にしても、成功にしても、歴史から学ぶのです。したがってアメリカでは公文書には公開期間が決まっていて、一定の時間を過ぎれば公開されるようになっている。

・共産党国家と日本の違いは、共産党国家のように圧倒的な権力を持ったトップがいないということでしょう。日本は専制君主がいないただの官僚機構の連合体なので、とにかく官僚が圧倒的な情報量をもって、それをうまく隠しながらコントロールすることで国ができてきた。彼らからみれば、大臣や政治家はちょっとの間やってきてその椅子に座っている人にすぎない。
 落合くんも述べていましたが、いま日本という国が抱えている大きな問題は、どこの省庁が担当するのかわからない、複数の省庁にまたがる問題がぽっかり放置されていることです。

<「ポリテックで日本政治を変えよう」  落合>
・僕は日本の統治機構を「デッドロック」と表現してきました。これはコンピュータ用語ですが、要するに解決すべき問題があるのに、省庁同士で動けるようになるのを待っていて、結果として何も進まないということを喩えて呼んでいるのです。
 猪瀬さんが指摘したように12省庁が強い縦割りで動いています。だからこそ、それを打ち破るためにも、これまでにない政治の概念が必要なのだと思いを強くしています。
 こうした新しい概念として、最近、僕は自民党の小泉進次郎さんとともに、政治と技術を融合した「ポリテック」という言葉を広めようとしています。

・政治の課題をテクノロジーで解決する。テクノロジーの課題を政治的に解決する。そして視点です。例えば介護の分野では、人間の力をつかって解決していこう、多くのヒューマンリソースを割こうという発想が現在まで中核にあります。あるいは、制度を整備することでなんとかしていこうという発想でした。
 けれども僕が進めているように、テクノロジーの力で人間の身体を拡張することで解決するという提案もできるはずです。

・もちろん投票だけでなく、納税や通貨など、既存のあらゆる仕組みをテクノロジーで効率化できる可能性を秘めています。特にそれらへの活用が期待できるものとして、ブロックチェーンには大きな可能性を感じています。

・これから日本がテクノロジーを活用した先進的なアプローチで課題を解決しようとしていることを世界に示すことができれば、海外から新しい知見が集まってくる可能性もありますし、実際に解決すれば世界に対してこれ以上ないアピールになります。

<「ポリテックという言葉の流行が社会の意識を変える」  落合>
・ポリテックという言葉の真意は、最初はなかなか理解されないと思います。流行するなかでバズワード化していっても、それでいいと考えています。何回か実例が登場して実体が伴えば、言葉はきっと足がついてくるはずです。なぜならば、僕も含めて、テクノロジーで政治に対する困っている問題を解決しようと思っている人や、テクノロジーの適用を政治で進めようとしている人はたくさんいるからです。そもそもテクノロジーで問題を解決していこうというのは、グローバルでは当たり前の発想になってきています。

・僕は「デジタルネイチャー」という概念を使って次の社会を考えています。この言葉は、“自然”をより上位から俯瞰する、計算機によって生み出された“超自然”を意味します。要するに、これまで“自然”と考えられていたものを更新する考え方のことです。
 CGと実物の区別や、AIと人間の区別がつかなくなり、人間と機械が融合していくような未来がやってくるでしょう。例えばメガネをかけて視力を回復したように、手が不自由ならより精緻に動かせる義手を使えばいい。いま障害と呼ばれているものは、介助者が必要な方や高齢者も含めて「身体のダイバーシティーが高い人」という表現に変わっていくでしょう。身体に障害があるなら、それをテクノロジーで補えばいいという社会がやってきます。そうなると、いままで「人間の自然な身体」を基準に障害と呼んでいたものは障害ではなくなります。人間と機械の融合によって、“自然”というもののイメージが更新されていくのです。僕がいう親和というのは、そういう未来のことです。

<「目的を忘れたルールに縛られるな。30代への期待」 猪瀬  >
・落合くんが語るポリテックというアイデアは面白い。霞が関や永田町がそのインパクトを理解し、きちんと反映させていけるかどうかは別問題になるにしても、霞が関の堅牢な官僚文化に揺さぶりをかけることはできると思います。
 僕が『日本国の研究』を書いた90年代は、ちょうどインターネットが一般の人にも広く普及し、インパクトを持ち始めた時代でした。僕は公益法人改革について、情報公開を徹底させるべく、その情報をインターネットで公開せよと呼びかけていた。

<構想力は歴史意識から生まれる>
・与えられた課題を解決するだけで十分だった時代は終わり、自ら課題を見つける力こそが重要になる――。両氏がこの本を通じて説いてきたことだ。歴史とは、課題を見つけ出す力を養うためにこそ学ぶべきものだ。
 猪瀬氏は「プランナー」という考え方を提唱する。一部の人だけがプランを独占し、考える時代は終わった。すべての人がプランナーとなる資格を持っていると。

・落合氏はこれまでの論点をさらに深めて、これからの時代を生きる「デジタルヒューマン」にとって日進月歩のテクノロジーとともに社会を変革していく力とは何かを考える。それは「リスクを取る力」に象徴されるという。

<「ビジョンを描くにはまず歴史を知ること」  落合>
・次の時代を考える上で、重要なのは大別すると3つです。
 第1にこの本で繰り返し語ってきたように歴史や統計データを知ること、第2に論理的な日本語力を身につけること。第3に時代に適合した文理問わない教養を身につけることです。
 第1の論点は歴史や構造、つまり現在がどのようにできているかを知ることです。僕が「未来」についてのビジョンを語れるのも、メディアアートならメディアアートの、テクノロジーならテクノロジーの、歴史を知っているからです。

・僕は、そんなつまらないことより論理的に言葉を使えることが重要だと考えています。なぜか。第一に語るに足る人材であることが一番重要だからです。そして、外在的要因としては今後は自動翻訳技術が飛躍的に進歩するからです。機械学習の進歩は間違いなく自動翻訳技術に反映されます。いま語学にコンプレックスを感じている人であっても、日常生活では間違いなく、ビジネスの世界でもそれなりのレベルで劣等感を感じる必要なくコミュニケーションがとれるレベルの技術になるはずです。
 自動翻訳の精度は日進月歩で上がっています。機械学習用のデータセット、アルゴリズム、ハードウェアの盛り上がりもあって、自動翻訳技術は成長の真っただ中です。どのくらい進歩しているのかと言えば、僕が学部生の頃、あと100年といわれていたような技術が、なんとすでに実用化され、使われているということです。

・メカニカルアーツが新時代の「教養(リベラルアーツ)」に加わってくるのです。

・最近のAIの研究に即して言えば、コンピュータを用いた統計的アプローチでは正規分布の範囲内から外に出るのは難しいことも指摘されています。

・インターネット上にはない情報、いまのAIでは思いつかないようなアイディアに僕は注目してします。

<「自分の中にある言葉を鍛える」  猪瀬>
・落合くんが歴史的な視点から考えることの大切さ、言葉の力が大事だと語ってくれた。まさにその通りだ。日本近代の最大の「国難」は自らが招いたあの戦争であったことは間違いない。東条英機は試験の得点の高い秀才タイプではあったが、戦争をやめるという決断はできなかった。

・世界史の流れに巻き込まれた明治の人びとは、世界史の潮流のなかで日本とは何かと自覚する。近代日本語は、諸国の方言を統一し、西洋の翻訳語を練り上げ、幾度となく繰り返された「国難」のなかで完成してきたものです。国難をどう乗り越えるのか、そのなかで、個人の言葉も磨かれていき、近代文学の傑作も誕生してきました。確かな言葉の力を感じさせる、思想や構想力をもった文章が練られてきたのです。ビジョンがある言葉です。ビジョンがある言葉は国難から生まれてきたという視点が重要です。
 AIの進化によって官僚的な役割はAIが担うかもしれない。でも、日本という国を構想する国家観という大きなビジョンは誰が打ち出すのか。それは文化的な構想力を持った人びと、つまり作家であり、アーティストであり、政治家でありといった人びとでしょう。近代日本語をつくった明治人には国家戦略があったのです。欧米の近代がもたらしたものと日本の伝統文化から生かせるものを組み合わせたのです。
 戦後は戦前のものはすべてが悪いという風潮が蔓延した。虚心坦懐に伝統から学ぶという姿勢そのものも失われてしまったのです。

・「ほんとうの意味でのグローバリズムとは、欧米流の近代化とイコールではない」という提言をし、さらに「そうした世界のなかで日本が果たすべき役割とは何か」を問うていく。これならばいまでも適用するような深い議論につながった可能性があります。

<「2021年以後をデザインする時代を切り開く力」  落合>
・障害という概念も変わっていくという事例で話したように、足に障害がある人には最先端の機能を搭載した義足がついていくでしょう。介護現場で力が足りない人には介護用ロボットスーツができて、楽々と仕事ができるようになっていく。盲目の人は音で空間を把握できるようになり、耳が聞こえない人の目には字幕が映し出されるようになる。脳の機能補完ができるようになれば、認知症という病気も補完されていく。

・身体は拡張され、言語もまたすぐに翻訳されていく、そんな時代において、人間の良さ、人間の能力差はどこになるのでしょうか?僕たちはこれまでの歴史を更新し、新しい時代を生きようとしています。これまでの身体の差や、ちょっとした語学力程度では能力差があるとは言えない時代になっています。僕は能力差というのは経験差であるという時代がやってくると考えています。
 アートでも、文学でもテクノロジーでもどんな分野でも、「何を経験し、何を思考したか」が重要な差になってくる。つまり、「何をやりたいのか」というモチベーションの部分が重要になる。モチベーションの有無がそのまま人間の価値を左右する変数になっていくという考え方です。

・モチベーションを価値に落とし込むために重要な能力をまとめておきたいと思います。大事なのは「言語化する能力」「論理力」「リスクを取る力」そして「専門性」です。

<まとめ>
2021-2050  人口・産業
(これまで)
・人口増を原動力とした経済成長
・中央主導の補助金による同じような街づくり
・課題解決より現場の意思が優先

(2021年以後の30年の指針)
・人口減少による問題はテクノロジーで解決
・地方自治体は各々の生き残りに向けたビジョンを
・「分からない人に合わせる」から「分かる人が引っ張る」へ

(必要な思考)
・テクノロジーによる変化を恐れない
・東京と地方の違いを膚感覚で理解する

2021-2050  風景
(これまで)
・明治維新で生まれた一君万民の日本人
・“ドラえもん”で描かれる近代の完成像
・均一な教育システムによる同じ価値観

(2021年以後の30年の指針)
・自身を縛る日本人の無意識を見つめなおす
・テクノロジーと伝統の融和にビジョンを見つける
・個人に最適化された教育で多様な個性を肯定

(必要な思考)
“ドラえもん”にない風景を深堀りしていく
・街を歩き風景の隙間からヒントを見つける

2021-2050 統治構造
(これまで)
・各省庁の権限が強く横断する課題が取り残される
・前例踏襲主義で目的なきルールが温存
・公文書破棄や霞が関文学に見られる権力者の恣意的運用

(2021年以後の30年の指針)
・省庁の隙間につながる問題に取り組む
・前例がない取り組みを積極的に肯定
・テクノロジーによる有権者にクリアなルールの制定・運用

(必要な思考)
・技術的解決と政策的解決を提案できる
・「ポリテック」思考を身につける

・目的を見失ったルールにとらわれずファクトとロジックで物を考える

2021-2050  人材
(これまで)
・優秀な人間の条件は「与えられた課題を正確にこなす」
・英語を筆頭に多言語で表現することができる
・学校の試験の点数が高い人間が評価される

(2021年以後の30年の指針)
・正確さはAIに代替、人間の魅力は「外れ値」を出せること
・言語能力は表現力以上にアイディアや中身が問われる
・学校の試験では測れない個人の経験値が重要

(必要な思考)
・メカニカルアーツを身につけ、未知の領域に挑んでリスクを取る
・言葉の力を磨き、自らのアイディアを問う「プランナー」に



『余命半年の中国・韓国経済』
制御不能の金融危機が始まる
3700兆円の債務は爆発寸前! まだ中国に投資する日本企業は正気か⁉
宮崎正弘   ビジネス社   2019/4/2



<中国と韓国経済の崩壊は秒読み>
<あのソロスさえも、「反中」はアメリカの総意>
・そのソロスがトランプよりも強硬に「反中」の政治姿勢を明確にしたことは、全米がいま反中国合唱のピークにあるという何よりも証拠である。

<異変、中国国内でも習近平批判>
・中国国内でも習近平批判が起きた。

・胡徳平が「このまま政治改革を怠り、民間の経済活動の活性化を促す政策に転じなければ、中国はいずれソ連がたどった死の道を選ぶことになるだろう」と私見を述べたのだ。

・このほど左様にかつての中国共産党大幹部の息子や秘書たちが国内知識人の不満を代弁している構図が浮かび上がってくる。つまり習近平国家主席の権力は盤石ではなく、泥沼に立った塔のように崩れやすい状況にある。

<中国経済破綻に巻き込まれる世界と日本>
・米中貿易戦争の嵐は世界経済にTUNAMIをもたらした。とくに中国経済の挫折ぶりが顕著である。
 日本経済も予期せぬ方向からの暗雲が拡がり、凄まじい勢いで景気が悪化している。そして米国も悪化の兆しが出た。中国経済の破綻に巻き込まれたからだ。

・中国人民銀行(中央銀行)は、ドルの裏付けのない人民元をじゃかすかと印刷しているが、産経新聞の田村秀男氏の試算によれば「外貨資産の64%しかドルの裏付けがない」という寒々しい状態、暴落前夜の様相になってきた。つまり36%は通貨の垂れ流しをしていることになり、この意味するところは人民元の大暴落である。
 にもかかわらず中国は外国の金融機関からドルを借り入れている。中国人民銀行が1兆1000億ドルを保有すると豪語する米国国債は実質的に担保であり、外貨準備高はマイナスに転落している。それが中国発の金融恐慌に繋がる怖れが高いと市場は読んでいる。

<「アップル・ショック」に悲鳴を挙げるスマホ業界>
・台湾が本社の「鴻海精密工業」は中国河南省鄭州の工場で5万人をレイオフし、代替工場をインドに移転して稼働すると発表した。こうなると大量失業の発生であり景気後退というより、状況はもっと悪い。

・同様に韓国の落ち込みは予想より悪化しており、スマホ関連ばかりか半導体大手のサムスンもSKもLGも青息吐息。

<韓国による日韓関係の悪化を米国議会が懸念>
・米国では軍人の発言も目立った。北朝鮮は核兵器の保有を増やしているが、「放棄の可能性は低い」と言うのが国防総省(ペンタゴン)の見解であり、米インド太平洋のデービッドソン司令官、エイブラムズ在韓米軍司令官などは「非核化の意思を示す証拠を一切提示していない」として、警戒を強めている。

・また日韓関係険悪化の空気をよこに置いて、夥しい韓国の学生が日本企業に就職を希望している矛盾がある。韓国政府と韓国の若者の間に認識のずれが著しいことも明らかとなった。ともかく韓国経済は政治的混乱によっても救いのない状況に陥った。
 以下、本書で縷々説明するように、中国経済の破綻は秒読み、連鎖で韓国経済も沈没間近となった。その時刻表が透けて見えるようになった。
 日本経済はTUNAMIを蒙ることになるが、そのときの備えはできているのか?

<「海亀派(中国人留学生)」でさえ就職難>
・春節(旧正月)に中国の鉄道、飛行機、長距離バス、そしてハイウェイは未曽有の人混みで大混乱に陥った。その実態はと言えば、例年より早い休暇入り。そして「ゆっくり休養を取れ、連絡するまで上京しなくてもよい」と言われ、給与不払い、当座の旅費だけ支給された。
 春節があけて、彼らが職場にもどると、工場は閉鎖されていた。中国ではよくある手口だ(日本に観光に来ている中国人はよほど恵まれた界層である)。18年上半期だけでの企業倒産は504万社と報じられている。

・ビルの建設現場では、労働者に3カ月給与不払いというケースが多く、現場では作業をやめている。工期はベタ遅れ、クレーンは停まり、作業場では残った労働者の座り込み抗議集会、デモが続く。トラックの運転手はウーバーにも職を脅かされ、当該本社前をトラックがぐるぐる廻っての抗議活動。配送の下請けは賃金を受け取るまで「配達はしない」と抗議の声を挙げた。

・こうした風景が中国全土、あちらこちらで見られる。旧正月のお祝いどころではない。解雇された従業員は鴻海精密工業の10万人が象徴するように、潜在失業者を含めると、おそらく数千万人単位ではないか。
 かように中国で起きている大量失業の実態、おそるべき現実を伝えない。ネット上でも、こうした情報が掲載されるとただちに削除される。ネット情報板のプラットフォームもチャットも無数に禁止され、最近はネットカフェががら空き状態となった。
 あまつさえ「金の卵」といわれ、重宝された「海亀派」の異変だ。欧米、日本に留学し帰国した若者にも就職難という悪影響が出た。

・中国国泰証券の主任エコノミスト、李迅雷によれば、「過去40年で、実に313万の中国人留学生が海を渡り、このうちの84.6%が帰国した」という。
 彼らは「海亀」と呼ばれた。産卵のため、古巣へ帰ってくるからだ。ある統計によれば、彼らの平均年収は2万5000ドルだったという。外資系企業が彼らを雇用し、その年収に比例して中国国有企業や下請けの賃金体系を外資系が領導した。そうした黄金の時代は終わった。

<サムスンも中国工場を閉鎖し始めた>
・天津を例に取ってみよう。外国企業の天津への投資が未曾有の速度で激減している。2017年に106億ドルだったが、18年には48億ドルとなって、どの工場も企業もレイオフを発表した。就職情報はなく、求人フェアに応募する企業がない。代表制となったのが韓国サムスンの半導体工場の閉鎖である。
 破竹の進撃を続けて生きた韓国経済の華、サムスンはアップルの売り上げ激減のため、撤退を決めたのだ。

・「グレイ・エコノミー」(わけの分からない商売)が、これまでは失業者を吸収してきた。出前の代理配達、通信販売、バイク便、自転車シェア、つまりウーバー・ビジネスだが、これも最近は完全な飽和状態となった。そのうえ当局はグレイ・エコノミー分野にも新しい規制をかけようと動き出した。予測をはるかに超える加速度をつけて中国経済の成長が終わりを告げている。

・ウォール街の集計では昨師走(2018年)のジャンク債発行は米国企業を抜いて中国企業がトップとなったことが確認されている。ジャンク債とは信用度が低い社債などで、投資家に高金利を謳う。

・深刻な状況は若人の失業である。大学新卒は834万人(当初860万人の大学新卒が見込まれていたが26万人が中退したことになる。学生ローン不払いなどが原因だ)。苦労して大学を卒業してもまともな就労先がない。薔薇色の人生設計が暗転する。
 そこでまた中国政府は無理矢理なプロジェクトを謳い、巨額を予算化する。一帯一路プロジェクトが世界各地で挫折、頓挫し始めたので、国内で大型プロジェクトを拡大しようとするのだ。
 赤字構わず新幹線をさらに延長する工事があちこちで開始された。それこそ人の行き来より熊の数が多いような過疎地にも。
 中国は世界一のダム(239メートル)建設を発表した。
 三峡ダムは重慶と武漢の間に完成し、相当の電力を供給している。世界一を豪語したが、浚渫が間に合わず、堆積物が障害となって効率が悪い。

<中国の米国企業買収、95%減>
・惨状がくっきりと数字に出てきた。
 中国の米国企業買収が、実に95%減っていた。まさに「トランプ効果」は激甚である。付随してアメリカへの中国人留学生、客員学者、交換教授ら4000名が「スパイ容疑」の摘発を恐れたのか、そそくさと中国へ帰国していたことも判明した。
 ハイテクを米国から取得(「盗取」ともいうが)するために派遣された学者、研究者、教授、学生らに対して米国はビザ審査を厳しくした。滞在延長が認められないばかりか、いったん帰国した中国人の米国留学組の再入国に対してもビザ審査がより厳格化された。
 中国人留学生は数十万人に達するが、これをのぞいた客員派遣の学者、交換教授ら4000名(奨励金が14万500ドルから72万ドルの幅で供与された)が米国から帰国したのだ。これは2018年12月1日に「自殺」した張首晟スタンフォード大学教授が運営していた「ホライゾン・キャピタル」とかの面妖な財団が象徴するように、スパイ養成、ハイテク泥棒のダミー、表向きの看板がシンクタンクを偽装していた。

<対米投資激減の余波>
・米国のシンクタンクAEIの報告によれば、中国の対外投資は数字統計でも激減している。
 これを裏付けるのが、海外不動産の売却、旅行客への外貨持ち出し制限などで顕著な動きである。

・安邦生命はNYの老舗ウォルドルフ・アストリア・ホテルやニュージャージー州のトランプタワーなどを売却、海航集団はドイツ銀行とヒルトンホテルチェーンの株式を売却、万達集団は全米の映画館チェーン売却、ハリウッド映画製作会社買収を断念した。ほかの売却、ドル確保の事案は枚挙に暇がない。

・「2018年上半期だけで中国企業の504万社が倒産し、失業は200万人上乗せされた。農民工の失業が740万人と言われるから上半期だけで1000万人が新たな失業に加わった」
 この数字、中国の公式統計には発表されるはずがないが、ついで「財新網」(同年11月28日)で「求人広告が202万件、消えた」とした。深刻な事態ではない、崩壊前夜である。
 企業が人手不足を嘆いた時代はとうに去り、求人欄が募集を告示すると公務員など、地方政府の過疎村の役場の一人の募集にも数千人が押しかけるというではないか。とうとう全人代では「1100万人の失業者対策」が発表された。

<四中全会を開催できない習近平の狼狽>
・トランプ大統領はこうやって基礎固めを十全に行ったうえで中国からの輸入品に10%から25%の高関税をかける米中貿易戦争を始めた。
 米国の経済をいびつにした貿易赤字改善のため中国からの輸入品に高関税を課し、ハイテク・スパイの摘発強化、米国ハイテク企業の買収禁止、不動産取得制限とビザ発行の規制強化、ファーウェイとZTEの完全な締め出し。こうなれば米中対決はもはや抜き差しならない状態である。

<中国と無理心中か、ソフトバンクの迷走>
・なぜなら孫正義が中国アリババの筆頭株主であるうえ、地上局にファーウェイのいかなる製品も使用しない、市場からの排除を決めており、周回遅れで日本政府もこれに倣うとした。
 ソフトバンクは有利子負債が13兆円を超えている。中国の「三大借金王」=海航集団、万達集団、そして安邦生命と同様な借金漬け体質である。
 それゆえチャイナ・リスクがもろにソフトバンクの株価に悪影響を与え、経営の屋台骨を震撼させて市場からは不評、反発という想定外の反応となった。この醜態は以後の日経平均を押し下げ、近未来に株価再沸騰という薔薇色のシナリオは消えた。

<借金地獄も止められない中国の鉄道建設>
・数字の誤魔化しも現界に達し、国有企業の資金繰りができなくなり、失業者が街に溢れ、物価は上昇し、政府への不満は高まる。だから無理矢理の公共事業を続行せざるを得なくなる。
 中国の新幹線の延長工事、2019年も拡大させ、邦貨換算で13兆円を投入する。日本の公共投資全額の2倍ほどが、新幹線だけに投じられることになる。

・この無謀とも発狂的とも言える鉄道建設は、借金地獄をさらに悪性のスパイラルへ向かって暴走、突進を続けさせる。中国全土に幽霊都市を建設して業界を存続させてきたように、国有企業の中国鉄道建設と系列の企業群の延命だけが目的だったのか。
 2005年から積もりに積もった累積赤字78兆円というのは、日本の旧国鉄の赤字の3倍強であり、この新幹線のプロジェクトの暴走ぶり一つを例にしても、近未来に起こるであろう、恐怖のシナリオが見えてくる。なぜ、こんな赤字体質をさらに肥大化させるような愚劣なプロジェクトを中国の執権党が続けるのか。
 第一は景気浮揚のため、プロジェクト継続という至上命令がある。

・第二に海外の新幹線受注は一部入札を競り落としていても、ベネズエラでは正式に中止、マレーシアは20%で中断、ラオスは国境付近のみ。インドネシアは用地買収ができず着工にも至らず、タイは青写真のまま、ベトナムはそっぽを向き、とどのつまり、海外が駄目なら内需で凌ぐしかない。

<期待外れに終わったミャンマーの「シルクロード」>
<中国人の「アキレス腱」>
・中国のアキレス健は集約すると二つのポイントが指摘できる。
第一は自給自足ができないという生存にとって死活的な要因を欠く脆弱性、つまりエネルギーと食料の自給ができない。米国からの穀物輸入が途絶えると、食肉も養豚の配合飼料もままならない。逆にアメリカは原油もガスも食料も自給できるという圧倒的な強みがある。そのうえ水の問題がある。
 第二は中国人そのものが持つ特質、エゴイズムと拝金主義が、生来の性格、DNAに折り重なって独特な人生観を持つという特徴である。
 中国人は宗族第一という特徴がある。

・こういう意識が根底に残存している以上、戦争はコストとか、国家の名誉とは表看板、レトリックでしかなく、一族の利益を守るためには「すり替え」として戦争を始める危険性は常にあるのだ。





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