人民元相場を自由にすること自体、海外の資本取引を全部入れるということだから、中国にはできない。それができないから、人民元の暴落はおそらくはない。(2)



『正論』2020年6月号



<『四重苦抱える中華帝国の末路    評論家 石平』>
・中国武漢発の新型コロナウイルスは今、地球上で猛威を振るって人類全体に多大な苦難をもたらしている。この原稿を書いている4月15日現在、欧米諸国や日本での感染の拡大がいつになって終息するのかまったく見通せず、世界が混沌としている最中である。

<感染拡大、長期化の様相>
・どうやら今後において、新型コロナウイルスとの一進一退の攻防戦は「常態=常にある状態」として長期化していくのであろう。

<壊滅的な国内経済>
・彼の論述によると、今の中国では1月からの新型肺炎ウイルス拡散の影響で中小企業の倒産・廃業が相次ぎ、いわば「倒産ラッシュ」が現に起きているという。状況が特に悪いのは輸出向けの中小企業とサービス業の中小企業である。

・4月6日付の香港・南華早報が、中国国内にある「天眼査」という調査・コンサルタント会社の調査結果を紹介した。それによると、今年第一・四半期において、中国全国で46万社の企業が倒産・廃業で企業登録から消えたという。

<大量失業の発生は必至だ>
・相次ぐ企業の倒産・廃業が招く大問題の一つはすなわち失業の拡大である。中国では、製造業の中小企業で働く人々の数は9千万人に上っている。サービス業全体が3億7千万人も雇っているが、関連企業の大半は中小企業であることは言うまでもない。

・発表した論文で一つ驚くべき数字を披露した。曰く、新型肺炎の影響で中国全国の失業者数は何と2億5百万人に上るという。
 中国の労働力人口はおよそ8億数百万人であるが、働く人の4人に1人が失業するような状況となれば、それはどう考えても、改革・開放以来の中国経済が陥る最大の危機的な状態、新型コロナウイルス蔓延以上の大災難である。
 
・しかも、大量失業の発生によって国内消費がどん底に落ちていくのは必至であるから、消費の低迷が当然、さらなる景気の悪化を招き、企業の倒産拡大と失業増加に拍車をかけることとなろう。つまり中国経済はこれで、蟻地獄のような悪循環の中に陥って沈没する一方の道を辿っていくのである。
 そして、億人単位もの大量失業の発生がそのまま社会的不安の拡大につながって、深刻な社会危機と政治危機の発生を招きかねない。たとえ新型肺炎の感染拡大はある程度抑えられたとしても、習近平政権の直面する国内危機の深刻さはおそらく天安門事件以来の最大なものとなろう。

<もう一つの地獄>
・各国の中で中国に対する批判と責任追及がもっとも先鋭化しているのはアメリカである。

・その一方、アメリカ国内では新型肺炎ウイルスの拡散で大きな被害を受けたことで、加害者の中国に対する集団訴訟の動きが広がっている。アメリカ議会でも、情報隠蔽でウイルスを拡大させた中国の責任を問う法案が提出された。
 そして4月上旬にアメリカで行われた世論調査の結果、米国民の約8割がウイルスの拡大について「中国に責任がある」と考えていることが判明した。

・世界でのウイルス拡散がいつ終息するのかはわからないが、それがある程度収まった段階からはおそらく、アメリカを中心に、各国政府と民衆による中国の責任追及と中国に対して賠償を求める運動が本格化していくのであろう。
 そして、中国発のこの世紀の大災難に際し、このならず者国家の危うい本性と、中国と緊密な関係を持つことの危険性を身を以て知った多くの国々や世界企業は今後、中国との関係を見直してさまざまな分野での「脱中国化」を始めるのであろう。

・そして世界からの孤立化は当然、中国国内の経済危機と社会危機の拡大に拍車をかけることとなろう。
 このようにして、内憂外患の中で大きく揺らいでいくのが、まさに2020年におけるならず者国家・中国の哀れな姿である。そして2020年はまた、中華帝国の本格的崩壊が始まる年となろう。



『アメリカの本気を見誤り、中国を「地獄」へ導く習近平の狂気』
石平    ビジネス社  2018/10/2



<われわれとしては今後、中国情勢と習政権の動向から目を離せない>
・そして8月から9月にかけ、日本円で約21兆円規模といわれるネット金融のP2Pの破綻が相次ぎ、各地で抗議デモが起きていた。もちろん、P2Pの破綻はたんなる序の口。国内の負債総額がGDPの300%超に達している中国では、本格的、かつ全面的な金融破綻がいつ起きてもおかしくない。いまは嵐のやってくる前夜だ。

<事なかれ主義に走る共産党幹部に配布された党中央からの意見書>
<党内を怠政に向かわせた最大の原因は恐怖の腐敗撲滅運動>
<酒の流用で将来を失った地方の共産党幹部>
・研究院所有の酒6本を飲んだことで免職されてしまうとはいかにも厳しい処分であるが、処分はそれにとどまらなかった。その宴会に同席した6名の同僚幹部も「厳重警告」の処分を受けた。
中国の場合、党員幹部が一度厳重警告を受けると、出世の道が閉ざされるのはほぼ確実。言ってみればこの1件では、6本の酒のために7名の幹部が将来を失ったことになる。

<党中央の意向を忖度する地方政府>
<これから3年間も続けられる掃黒除悪闘争>
・つまり中国全国において、これから1つの省で10日以内に1000人以上も逮捕されるような闘争が3年間も続く見通しなのである。この国にはいったいどれほどの黒悪勢力が存在しているというのか。

<地方による拡大解釈を期待する党中央と国務院>
<手本は薄熙来が重慶市で行った「唱紅打黒」運動>
<ターゲットはマフィアだけではなかった>
・中国社会の現状においては、民営企業が生きていくためには共産党幹部に賄賂を贈る一方、なんらかの形で黒社会とも関係性を持たざるを得ない。したがって、黒社会から芋蔓式に関係性を探っていくと、ほとんどすべての民営企業化は打黒運動の対象になりかねない。結局、薄熙来の打黒運動は後半になると、その矛先がほとんど民営起業家と民営企業に向けられていった。

<打黒運動の真の目的は国有企業を強化し地方財政を潤すこと>
・黒社会とのつながりで摘発された民営起業家は、個人の資産、あるいは企業の資産をそっくり政府に没収された。黒社会と認定された以上、彼らの資産も「違法資産」だと認定されたからである。

<最後のターゲットは外資企業しかない>
・とくに地方政府の場合、財政収入が減っただけでなく莫大な借金を抱えていることから、彼らの財政危機を解消するいちばんの早道かつ有効なる手段は、民間からの収奪以外にない。

<一党支配を盤石なものにする政法委員会の恐ろしさとインチキ司法体制>
<膨大かつ多彩な権力をもつ政法委員会>
<共産党が殺したい人間は、そのまま殺されるしかない>
・ということは、安全部と安全局が政法委員会の方針にしたがって、誰か外国人をスパイとして逮捕すれば、検察も裁判所もそのままオートマチックにその外国人をスパイとして送検し、スパイとして裁判にかけ、そしてスパイであるとの判決を下すこととなる。
 この数年間で8名の日本人がわけのわからない「スパイ容疑」で逮捕され、「スパイだ」との判決を受けて刑務所に入れられているが、そうならないためにも、かの国の恐ろしさをわれわれはもっと知っておくべきだろう。

・以上、中国共産党は政法委員会を通して司法と警察を牛耳ることによって人民を完全な支配下においていることの実態を記した次第である。
 今後、中国で人権弁護士や反体制派がなんらかの罪で有罪判決を受けたニュース、あるいは普通の日本人が中国においてスパイ罪で刑務所入りとなったニュースを耳にしたとき、われわれがまず想起すべきは、その背後にある共産党政法委員会の恐ろしい実態であろう。

<絶望的な状況に陥っている中国の年金の実態>
<若者に対して「早くから老後に備えろ」と警鐘を鳴らした中国青年報>
<2014年から大幅赤字を出している城鎮職工基本養老保険>
・結論を以下にまとめてみた。
いまの中国には9億人以上の国民をカバーしているふたつの年金がある。
城郷居民養老保険は、最初から老後の保障にならないようなインチキものである。
城鎮職工基本養老保険は、永続性のない体質でいずれ破綻してもおかしくはない。
 このふたつの年金にすら加入していない国民を含めれば、中国国民の大半が今後、深刻な老後の不安に直面するのは必至である。
 だから、冒頭で記したように、社会科学院の専門家は若者に対して、「老後の備えを急げ」と警告しているわけである。
 若者でさえ今から老後の心配をしなければならないこの国には、果たして未来があるのだろうか?
 習近平主席が唱えている「中華民族の偉大なる復興」は、絵に画いた餅になるのではないかと、つくづく思う次第である。

<習近平政権と農民工の果てしなき戦い>
<「ナチス」そのものだった北京市当局の手口>
・政府当局の「農民工追い出し作戦」はこれでいったん終了するのだが、そのプロセスにおいて、追い出された農民工と破壊された住居や店舗の持ち主に対するいっさいの賠償も補償もなく、農民工たちとその雇用者や物件所有者との契約関係もいっさい無視された。
 とにかく政府当局の命令ひとつで、農民工たちは仕事と住居と財産を一挙に失って強制的に追い出されたのである。

<習近平の了解のうえで断行された「農民工追い出し」大作戦>
<北京の不動産ブームに不可欠だった農民工の労働力>
<「農民工追い出し作戦」と経済環境の激変との関連性>
・つまり、安い労働力としての農民工が北京市から消えたとしても、北京市の建築業や町工場はそれほど困ることはない、との事情がその背後に横たわっているのだ。その意味するところは、北京市の建築現場や町工場の仕事が急速に減っており、経済が確実に減速している現実である。

<中国各都市に存在する農民工による大暴動リスク>
<いつの世も天下大乱の前兆となった流民の大量発生>
・中国にはいま「流動人口」と呼ばれる農民工が2億6000万人もいるのだ。

・中国の歴史をひも解けばわかるように、行き場のない流民の“大量発生”はいつの世も、天下大乱の前兆である。またそれは天下大乱の原動力にもなるのである。
 そういう意味では、習政権が北京市からやり始めたことは、前代未聞の暴挙であると同時に、自分自身の首を絞めるような愚行でもあった。

<火薬庫となりかねない5700万人退役軍人の怒り>
<退役軍人の抗議活動を黒社会を使って封じ込めた江蘇省鎮江市当局>
・中国各地で「退伍軍人」と呼ばれる、いわゆる退役軍人たちの抗議活動が拡大している。
 発端は本年6月19日、江蘇省鎮江市で起きた「退役軍人襲撃事件」であった。この日、少人数の退役軍人が市政府庁舎を訪れ、待遇の改善や再就職に関する政府の支援を求めたところ、警察隊によって行動を阻止された後、正体不明の集団から襲われ、負傷者が出た。

・22日になると、同市政府庁舎前の抗議活動に集った退役軍人の数は数千人にものぼり、現場は緊迫した状況となった。

・鎮圧の最中とその後、退役軍人たちはスマホなどで現場の血塗れの映像や写真を流しながら政府の非道を訴え、全国の退役軍人仲間に支援と終結を呼びかけた。
 その日から彼らを支援するために、近くは浙江省や河南省、遠いところでは四川省や貴州省などから、退役軍人たちが集団をなして鉄道、高速道路などを使って鎮江へ移動し始めた。
 それに対して当局は、鎮江市内に警察部隊を増員して制圧する一方、鎮江周辺の高速道路で厳しい検閲を行ったり、鎮江行きの列車を全面運休にするなどして、退役軍人たちの鎮江入りを徹底的に阻止した。鉄道を使っての四川からの応援部隊は途中の鄭州駅で拘束された。
 同時に、装甲車を配した人民解放軍部隊がすでに鎮江市内に到着していることがネットの写真によって確認され、当局は暴動発生などの最悪の事態に備えていたことがわかった。なにしろ今回の1件で、習政権が敵に回したのは、軍事訓練を受けたことのある元軍人たちであり、政権最大の権力基盤である人民解放軍の出身者たちなのだから――。

<退役義務兵たちの再就職支援を地方政府に押し付けた中央政府>
<周辺国に恐怖をまき散らす中国人独身男性3400万人>
<80年代出生の男女比率はなんと「136対100」>
・このところの中国で大きな社会問題となって浮上しているのは3400万人に上る「光棍=独身男」の存在である。
 彼らは結婚したくないから結婚していないのではなく、中国の人口構造に生じた深刻なゆがみで、結婚したくてもできない状況に陥っている。
 いまの中国は、人口構造における男女比率のバランスが大きく崩れて、男性の人口が女性のそれを大きく上回っている。
 国家統計局が発表した人口統計によれば、2015年末時点で男性人口7億414万人に対し、女性人口は6億7048万人。男性のほうが3388万人も多く、男女人口のバランスが完全に崩れていることがわかる。
 これを年代別に出生の男女比率を見てみると、1980年代、90年代のアンバランスが目立つ。その最大の原因は、中国政府が国策として導入した「一人っ子政策」(1979年~2015年)にあるのは疑いのないところだ。
 約35年間、一人っ子政策が強制的に推進されていたなか、中国の総人口の6~7割(当時)を占める広大な農村地域では大きな異変が起きた。
 当時の農村では社会保障制度がまったく敷かれていなかった。ということは、農民たちにとって唯一の老後の“保障”は自分の子供である。その際、成人すれば他家に嫁ぐ女の子は老後の保障にならないのは自明だから、農民たちの誰もが女の子よりも男の子を欲しがった。
 一人っ子政策が推進されているかぎり、「一姫二太郎」のように産むことはできない。
 そうした環境下、どうしても男の子が欲しい多くの農民たちは驚くべき対策を施した。一部の人々は生まれたばかりの女の子を「死産」と偽って、その場で処分した。あるいは出産前に胎児が女の子だとわかると堕胎した。
 このようなことがおよそ35年にもわたって全国で行われてきたのだから、その間に生まれて成人する男女の比率が大きく狂ってしまうのは当然のことである。

・先に男女人口の差が3388万人だと記したが、これを比率に直すと「105対100」になる。つまり、100人の女性に対し男性が105人で、男が5人多いけれども、これは総人口での比率で結婚適齢期のものではない。
 たとえば80年代出生の男女比率はなんと「136対100」。100人の女性に対し男が136人もいるのである。これは要するに、80年代出生の中国人男性は、136人のなかの36人が理論的には一生結婚できないことを意味する。
 今後、中国のどれほどの男たちが結婚できないかについて、さまざまな研究機関や専門家から予測が示されているが、本文でも記しているように、ここにきて約3400万人という数字に集約されてきた。

<農村では年収の10倍にまで高騰している新郎側が差し出す結納金>
・それでは「余剰男3400万人」からどういう問題が生じてくるのか。

・天価彩礼の「彩礼」とは、中国古来の婚姻儀礼のひとつで、結婚を正式に決める前に新郎の家が新婦側の家に一定金額の現金を贈る風習のことだ。
 日本の場合の結納金にあたるが、中国でとくに問題となっているのは、その相場の高騰ぶりである。
 中国のネット上に流布されている「全国各省彩礼相場一覧表」によると、湖南省、山東省、浙江省などの彩礼平均相場は10万元(約170万円)。それが旧満州の東北地方や江西省、青海省となると、どういうわけか一気に50万元台にはね上がっている。
 きわめつきは上海市と天津市で、両大都市の彩礼相場はなんと100万元(約1700万円)台にまで急騰している。

・日本の都市部でも「結納金1700万円」となったら、たいていの親は度肝を抜かれてしまうであろうが、貧しい中国の農村部の親にすればなおさら法外な高額である。
 だからこそ、「天価彩礼」=「天に届くほどの高い彩礼相場」という言葉が生まれてきたわけである。

・そして全省の農村部を平均すると、彩礼相場は10万元程度となっているが、それは、陜西省農村家庭の平均年収の10倍にもなる金額である。年収の10倍以上、日本の感覚でいえば数千万円以上か数億円単位のお金を出して嫁をもらうことになっているわけである。
 これは「人身売買」同然の世界といえる。

<騒乱や暴動の多発要因となる「光棍=独身男」の存在>
・実際、前述の陜西省農村地域では、「嫁を買う」が日常慣用句となっている有り様である。

・当然ながら、農村では万紫千紅を婚約相手の家に運んでいく財力のある人は少数しかいない。そうなると、大半の適齢の男たちは結婚したくも結婚できない状況にある。しかも農村部の女性の都市部への“流出”が増えていることから、深刻な嫁不足にさらに拍車がかかっている。

<「光棍海外移民論」や「戦争による「光棍危機解消論」の恐ろしさ>
・そんな浙江財経学院の謝作詩教授がびっくり仰天の珍解決案を提起した。
「光棍危機を解消するためには、貧困層の男性は数人で1人の嫁を共有すればいい」
この提言はすぐさま全国的な批判を浴びることとなったが、このような荒唐無稽な解決策が大学教授により堂々と提言されたこと自体、中国がその対策に行き詰っていることの証拠であろう。
 次に一部の学者やネット民から提起されたのが、移民政策を進めることによって、結婚問題の活路を海外に見い出すべきというものであった。

・かりに光棍の移民が実現すれば、それは結局、犯罪の蔓延や暴動の多発などの中国国内の問題をそのまま外国に“輸出”してしまうことになる。
 もちろん中国周辺の各国政府もそれを知っているから、そう簡単に中国からの光棍移民を許すような愚は犯さないであろう。
 それでは中国はどうするか。これに関しては以前、あるネットユーザーは自らの「微博」で、「もはや戦争する以外にない。光棍たちに銃を持たせてどこかの外国を占領し、嫁を現地調達すれば良い」と書き込んで大きな反響を呼んだ。
 さすがに政府当局は「まずい」と思ったのか、ただちにそれをネット上から完全に削除してしまった。

・しかし、この意見は全国的に拡散され、多くの共感を呼んだことから、「戦争による光棍危機解消論」は決して少数の中国人の戯論でないことがわかる。場合によっては将来、光棍危機の解消は、中国という国を戦争へと駆り立てる要因のひとつともなりうるであろう。
 結局、犯罪と騒乱輸出の「光棍移民」にしても、「戦争による光棍危機解消論」にしても、万が一それが現実の政策として推進されて大変な迷惑と被害を受けるのは日本を含む周辺国である。われわれはまずそのことを認識しておくべきであろう。

<世界一の受験大国の悲惨なる現状を見よ!>
<88校しかない重点大学を目指す1000万人受験生>
・知ってのとおり、中国はある意味では世界一の受験大国といえる。
 大学受験の場合、日本同様の全国統一試験を受ける受験生はピーク時に毎年1000万人を上回ったこともある。近年では多少減ったものの、2017年の受験者は940万人もいた。同年の日本における大学センター試験の受験者数は57万人程度であったから、規模の違いはもとより、人口に比した受験者数の割合にしても中国のほうが断然高い。

・「あそこの家のバカ息子は大学にも上がれないのか」と陰口をたたかれることは、中国の親にとってこの上ない屈辱だからだ。

・大学受験競争の激化に拍車をかける、もうひとつの重要な要素がある。
 中国では政府が全国の4年制正規大学をランク付けして「重点大学」と「非重点大学」に分類しているのである。「重点大学」とは、ようするに中国政府が「質が高い」と認定して重点的にバックアップする大学のことである。
 全国にある1219校の4年生正規大学のうち、重点大学に指定されているのはわずか88校である。そして受験生たちにとり、同じ4年制正規大学であっても、重点と非重点の間には天と地のほどの差がある。

<勉強しすぎて死ぬことはない、だから死ぬほど勉強せよ!>
・親にとっては、子供が受験競争を勝ち抜いて重点大学に首尾よく入れるかどうかは最大の関心事。高校にとっては、どれくらいの卒業生を重点大学に送り込めるかは学校の評価に関わる死活問題。

・たいていの場合、受験生は学校のなかで寝泊まりするから、わずかな睡眠時間と食事を除く時間は、教師の厳しい指導下で暗記と模擬試験の繰り返しの日々を送る。全国の学校で以前から流行っている名スローガンのひとつに、「勉強しすぎて死ぬことはない。だから死ぬほど勉強せよ!」というものがある。

<若者にそっぽを向かれるようになってきた現代版「科挙試験」>
・昔の中国の科挙試験の首席合格者が「状元」と呼ばれたのに因んで、各地方で実施される大学統一試験でのトップ合格者を「高考状元=統一試験状元」と呼んで大いに褒め称える習慣がある。
 状元となった受験生とその担任教師が地方当局や学校から賞状と賞金をもらうのは普通であるが、状元のために盛大な祝賀会を開いたり、公衆の前で状元に赤絨毯の上を歩かせたりする地方もある。

・ある調査機関がこの数十年で状元となった若者のその後の人生を追跡してみると、彼らの人生は同世代の人々より格別に優秀であるわけでもなければ、抜きんでて出世できたわけでもなかったことが判明した。
 厳しい受験競争は結果的に、知識の暗記だけが“取り柄”の人材を大量に生み出したにすぎなかったのだ。
 こうした中国流の受験戦争に嫌気がさしたのか、最近、高校を卒業したら国内で進学受験せずに海外留学の道を選ぶ若者が増えている。
 報道によると、海外留学の道を選んだ高校生は毎年20万人にも達している。そしてその数は毎年20%以上の伸びを見せており、今後、現代版「科挙試験」はますます多くの若者にそっぽを向かれることになろう。そこにあるのはやはり、中国という国全体の深刻な教育危機である。

<台湾旅行法案の成立は中国の核心利益に対するアメリカの挑戦>
・だからこそ、トランプ大統領は習近平の国家主席再任を無視するような態度を平気で取れるようになった。実はそのとき、トランプ大統領は習近平国家主席の再任を祝うどころか、むしろ習近平の顔に向って、強烈なパンチを喰らわせたのであった。
 3月16日、習近平が国家主席に再任されるその翌日、トランプ大統領はアメリカと台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目的とした超党派の「台湾旅行法案」に署名し、同法が成立した。

・つまりアメリカは、この法律を成立させることによって実質上、台湾をひとつの独立国家として認め、独立国家として対処していくことになる。しかしながらそれは、「台湾は中国の一部であり、中華人民共和国は唯一の中国である」という中国政府の立場を根底からひっくり返したものであって、中国の「核心利益」に対するアメリカの公然たる挑戦といえる。
 そういう意味では、トランプ大統領が同法案に署名してそれを成立させたことは、少なくとも中国の立場からすればまさしく中国の主権と国益を大きく侵害したものであって、中国に対する明らかな敵対行為である。
 おそらくトランプ大統領はそれを百も承知の上で署名の決断をしたのであろう。

<中国ではつくれないハイレベルな集積回路>
・ZTEが主力製品のスマホなどの末端機器をつくるためには当然、集積回路が必要不可欠、大前提なのである。そして現状、ZTEが使用する集積回路のほとんどはアメリカのクアルコム社から調達している。したがって、アメリカ商務省がZTEへのアメリカ企業の製品輸出を禁ずると、肝心の集積回路が入手できず、主力製品がつくれない。

・国内企業ではつくれないからこそ、中国は毎年海外から大量の集積回路を輸入している。たとえば2017年には、中国が海外から輸入した集積回路の数は3770億枚にのぼり、輸入額は2601億ドル。この数字は中国の2017年の輸入総額の14.1%を占めており、中国の輸入に払った代金の約1.6倍にも達する。
 中国製のあらゆる電子機器の心臓部分をつかさどる集積回路は、結局、海外からの輸入に頼っているわけである。だから、いったん海外からの輸入が途切れてしまうと、中国企業はスマホ1台すらつくれない。
 これが先端領域の中国製造業の惨めな現状であり、アキレス腱でもある。ZTEが直面している危機は、まさに中国製造業の脆弱性の象徴であろう。

<知的財産の保護がなおざりにされている中国の弱みが露呈>
・最近、中国国内で決済システムの電子化が進んでいる現象を見て、「中国が凄い、すでに日本を超えている」という論調が流行っているようだが、それはあくまでも表面的な現象にすぎない。「中国が凄い」という表面的な現象の背後にあるのは、実は、前述のような中国製造業の脆弱さである。今回の「ZTEショック」は、このことを見事に示してくれているのである。
 言葉を換えれば、知的財産の保護がなおざりにされている中国の国家としての弱みが露呈したといえよう。

<輸出の大幅減がもたらす失業の拡大>
・輸出が大幅に失われることによって生じてくるもうひとつの大問題は、「失業の拡大」である。いま中国全体で輸出向け産業は8000万人の雇用を生み出していると言われている。仮に輸出が1~2割減少するならば、千万人単位の失業者が生まれる計算になる。
 それは、すでに深刻化している中国の失業問題に拍車をかけ、社会的不安の高まり、暴動の多発を誘う要因となりかねない。そしてそれはそのまま、中国共産党政権にとっては深刻な政治問題ともなるのである。

<中国は輸出大国であるとともに輸入大国でもある>
・また、いまの中国は食糧輸入大国となっており、2017年には世界各国から1億3062万トンの食糧を輸入、大豆と米の輸入量は世界一である。14億人いる中国国民は1人当たりで年間約100キロの食糧を輸入している計算になるわけで、中国の食糧の対外依存度が非常に高いことがよくわかる。
 その一方、中国は石油輸入大国にもなっている。2017年、中国の石油輸入量は4億1957万トン。2億トンにも満たない日本の石油輸入量の倍以上となっている。

・そのためには莫大な貿易黒字を稼がなければならない。貿易戦争の影響で黒字が消えて外貨が減ってしまうと、肝心なところで輸入に頼っている中国の産業がダメになるだけでなく、食糧の安全までもが、脅かされてしまい、社会的・政治的不安が拡大するのは必至であろう。

<中国は体面を傷つけないでアメリカに大幅な譲歩する方法を模索するしかない>
・2000億ドル分の中国製品に対するアメリカの追加関税措置が発動されるのは今年の9月であるから、その前に習政権は何とかしなければならない。それがいったん発動されて実施に移されたら、中国経済は壊滅的な打撃を受けてしまうからである。
 全面降伏か徹底抗戦か、習政権に残された最終判断の時間は少ない。いずれにしても、習近平はなんらかのアクションを起こさなければならない。決断の時は刻々と迫っている。

<地方政府と国有企業が堂々と債務不履行を断行する日がやってくる>
<年間GDPを上回る国有企業が抱える絶望的な債務>
・中国経済でここにきて特に注目されているのが国有企業、地方政府が抱える過剰債務の問題である。
 政府当局によると、2017年末時点での国有企業の負債は108兆元に達したとされる。2017年の国内総生産(GDP)が約83兆元であったことから、国有企業の背負う債務だけで、全国1年間のGDPを軽く上回る上回ったことになる。

・どんなことがあっても国有企業と地方政府をつぶしてはならないのは共産党政権の鉄則であるから、いざとなれば、彼らは堂々と債務の“不履行”を断行し、金融機関が泣き寝入りを余儀なくされる可能性は大であろう。

<数年後には世界最悪の韓国と肩を並べる家計債務の対GDP比>
・そうなると、国有企業と地方政府が抱える天文学的な債務は、いずれは回収不能な不良債権と化してしまい、金融機関を圧迫し、金融危機発生の火種となりかねない。
 これは言ってみれば、中国経済にとり時限爆弾のようなものとなっている。
 実はそれ以外に、最近注目され始めたもうひとつの債務問題がある。
 家計部門の債務である。昨年9月末の当局発表の数字では、中国全国で家計部門が金融機関から借り入れた融資残高は39.1兆元であったという。
 前述のように、昨年の中国のGDPは83兆元だから、簡単に計算すれば、中国の家計債務の規模はGDPの約半分に達している。

<家計債務の膨張が個人消費と家計支出を急減速させる>
・中央政府と各地方政府もいっとき、不動産市場を活性化して経済成長を支えようと、個人による不動産ローンの借り入れを奨励する政策をとっていた。その結果、金融機関からの融資が個人の不動産購入に大量に向かった。と同時に、全国の家計負債もふくらむ一方であった。

・企業債務に地方債務、そして家計債務は、中国のこれまでの急成長から生じた、いわば「ツケ」のようなものだ。中国は今後、ツケを払う時代に突入するわけである。

<外資企業撤退がもたらす中国経済「6つの不安定」>
<市井の人々に広がる「消費降格」ブーム>
・今年7月以来、中国のネット上で大きな話題になっているのが「消費降格」だ。消費降格とは、「消費レベルを下げる」という意味合いである。

・消費が不足しているがゆえに、中国はこれまで投資と輸出の拡大で経済の成長を引っ張ってきた。しかしいま、国内投資の過剰と一帯一路の失敗により投資の伸びは大きく鈍化している。加えて、アメリカに仕掛けられた貿易戦争の影響を受け、中国の対外輸出は大きく減少すると確実視されている。
 中国経済にとって唯一の生きる道は内需の拡大である。しかし現実を見ると市井の人々に「消費降格」ブームが広がっており、「内需拡大」とは真逆のベクトルに向っている。中国経済は今後、絶対絶命の危機を迎えるのであろう。

<支払い拒否の対象となりがちな日本企業>
・中国国内企業同士間で売掛金の支払い拒否が発生すると、相手からの激しい取り立てが予想されるが、外資企業(とくに日本企業)は一概におとなしいので、支払い拒否の対象となりがちである。

<壮大なる茶番に明け暮れる習近平政権>
・多くの投資プロジェクトが中止や延期の憂き目に遭い、一帯一路が開店休業状態となっているなか、中国当局はなんとかして「やっている感」を演出するために、無理矢理イベントを開催、一帯一路に関連づけて中国国民の目を誤魔化そうとしているのだろう。
 

"人民元相場を自由にすること自体、海外の資本取引を全部入れるということだから、中国にはできない。それができないから、人民元の暴落はおそらくはない。(2)" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント