ガルガンチュアといってもただの大男の話で、日本でもだいだら法師の話がある。メリュジーヌはトヨタマヒメの話だ。昔話が世界中で同じような話ばかりであるように、神話伝承でも似た話がいくらでもある。(2)


<ジェフリー・オブ・モンマス>
・マーリンの物語は、1136年にジェフリー・オブ・モンマスが書いた『ブリタニア列王史』に登場するのがはじまりだ。印刷技術が誕生する以前の時代には、書物はすべて手で写し装飾を行なわなければならなかった。そうした時代の書である『ブリタニア列王史』が非常に多数――200冊を超える――現存していたことから、この書の人気の高さがうかがえる。
 
・ジェフリーの物語では、サクソン人と手を組もうとするブリテン王ヴォーティガンが塔を建てようとするが、何度建てても壁が崩壊する。ヴォーティガンは宮廷魔術師から、父親のいない少年を生贄にしなければ崩壊を止められないと教えられる。ヴォーティガンの兵士が見つけたその少年こそマーリンであり、彼らはマーリンを王のもとに連れてくる。しかしマーリンは、壁の土台の下では2匹のドラゴンが戦っており、それが壁が崩壊する原因なのだと王に言う。そしてその場でマーリンは、ブリテン島の先住民であるブリトン人が、侵略者のサクソン人に勝利するという予言を行なうのだ。
 その直後、ローマ兵のアンブロシウス・アウレリアヌスとその弟のウーサーがイギリス海峡を越え、ヴォーティガンを戦闘で倒す。マーリンは
アンブロシウスの宮廷に仕え、その力を役立てた。アンブロシウス・アウレリアヌスがサクソン人に殺害された人々を悼む碑を建てたいと言うと、マーリンは、それにふさわしいのはアイルランドにある巨大な立石群だけだと助言する。強力な魔術を使ってマーリンはこの石をアイルランドから運び、積みなおして記念の碑とした。それが今日、ストーンヘンジと呼ぶものだ。
 アンブロシウスが亡くなると、そのあとをウーサーが継ぐ。これ以降は、わたしたちにはなじみのある話だ。ウーサー王が、コーンウォール公の妻であるイグレインに恋をする。そして王の求めに応じ、マーリンはウーサーの姿をコーンウォール公に変え、イグレインはアーサーを宿すのだ。
 ジェフリーの物語ではこの時点でマーリンについての記述はなくなり、石に突き刺さった剣や、のちにマーリンがアーサー王の統治にかかわることは一切でてこない。しかしジェフリーは『ブリタニア列王史』の1章分をすべてマーリンの予言にあて、この章がひとり歩きして、マーリンは予言者であるとの評価は確立したのである。
ジェフリーのラテン語による作品はウァースによってアングロ=ノルマン語に翻訳され、それからラヤモンによって中英語に訳された。この中英語版には、マーリンが宮廷に戻ってきてウーサー王に助言する場面があるのだが、それでも石に刺さった剣の記述はない。

<ロベール・ド・ボロン>
・フランスの詩人、ロベール・ド・ボロンが1200年頃に著した『メルラン』では、宮廷に仕える以前の、夢魔を父にもつというマーリンの生まれについて語られている。この作品では、マーリンの予言の能力は、母親が敬虔なキリスト教徒であったため神から賜ったものとされている。ボロン版のマーリンは、「巨人の舞踏」(ストーンヘンジ)をアイルランドからイングランドへと運ぶことにくわえ、カーライルに「円卓」を設置する(のちの伝説とは違い、ボロン版ではアーサー王ではなくウーサー王の統治期に円卓がおかれる)。
 そしてようやく、石に突き刺さった剣の話が登場する。アーサーが王の子であり、王座の正統な継承者であることを証明するものだ。ド・ボロンは、マーリンをこうしたできごとの立役者として登場させている。
 アーサーが王座についたあと、マーリンはアーサー王にエクスカリバーの剣を与え、アーサー王とその騎士たちの死を予言する。また、「聖杯」の探索や、トリスタンとイゾルデの恋愛といったできごと、さらには自身の死についても予見するのだ。マーリンの死はニネヴェという名の不実な若い女性がもたらすもので、ニネヴェは老魔法使いマーリンを誘惑して魔術を教わり、それを使ってマーリンを洞窟に閉じ込めて、巨石で入り口をふさいでしまう。

<トマス・マロリー>
・ボロンのマーリンから300年近くのち、ほぼ同じような物語が書かれた。英国人騎士のサー・トマス・マロリーによる『アーサー王の死』だ。この作品の人気が高いのは、ひとつには(15世紀には伝説の王についての物語が大きな人気を博していたのとは別に)、イングランドで、「活版印刷」という新しい技術で製作された書のひとつだったからだ。                             
 マロリー作品のマーリンはド・ボロンのマーリンと似ているが、予言者という面はそれほど強調されていない。マロリーはニネヴェの名もニムエに変更した。マロリーはおもに、フランス語で書かれた5巻からなるロマンス『流布本サイクル』と、現代の学者が『頭韻詩アーサー王の死』、『八行連詩アーサー王の死』と呼ぶ英語の2作品を典拠とした。

<後世の作家>
・わたしたちがよく親しんでいるマーリンは、マロリーが描いたものですべての要素がそろうが、後世の作家たちも、この偉大な魔術師の話をさまざまに書いた。19世紀には、詩人のアルフレッド・テニスン卿がアーサー王に関する壮大な物語詩『国王牧歌』を書いた。この物語詩の「マーリンとヴィヴィアン」の章では、マーリンの死が語られる。テニスンは『国王牧歌』を書くさいに中世の伝説をよりどころとし、マロリー作品のニムエを「湖の乙女」ヴィヴィアン(エクスカリバーをアーサー王に与える)としている。

・「年はとっていても恋をしたい」という老魔術師の弱みを利用し、ヴィヴィアンはマーリンに取り入って魔法の秘術を盗み、最後には呪文を唱えてマーリンを樫の木の幹に閉じ込めるのだ。
 後世の作家や小説家たちが、この筋書きに変更をくわえている場合もある。メアリー・スチュアートの『最後の魔法』では、マーリンとニニアン(ヴィヴィアンの名はこう変更されている)は恋に落ち、深く愛し合う。だがふたりのロマンティックな牧歌は、マーリンの突然の病と死によって終わる。ニニアンはマーリンを悼み、マーリンが愛した水晶の洞窟に彼を埋葬する。時を経て目覚めたマーリンは苦労の末に墓を出て、キャメロットに自分が健在であることを伝えようとする。しかしニニアンには別の恋人がおり、新しい宮廷魔術師として足場を固めている。マーリンは彼女の新しい関係を受け入れ、洞窟に戻り隠者として生きていくのである。

・ジョン・ブアマン監督の映画『エクスカリバー』では、マーリンを水晶の洞窟に閉じ込めるのはモーガナだ。モーガナは策略をめぐらせてマーリンから召喚の呪文を教わり、その魔術でマーリンを閉じ込める。しかしマーリンにとって致命的な一打になったのは、アーサー王に対するランスロットの裏切りが判明したことであり、王国は分断し、衰退の一途をたどって、混沌が王国を支配する。結局、マーリンが人の世に戻れるのは夢のなかでのみとなる。

<映画とテレビのなかのマーリン>
・映画製作者にとってマーリンは、つい登場させたくなるキャラクターのようだ。伝統的な魔法使いのイメージにぴったりだからだろう。ここに挙げるのはマーリンが登場する映画だ。
◆『魔法使いの弟子』(2010年)
◆『マーリンの帰還』(2000年)
◆『タイムマスター/時空をかける少年』(1995年)
◆『エクスカリバー』(1981年)
◆『宇宙人とアーサー王』(1979年)
◆『吸血鬼ドラキュラ2世』(1974年)

<『王様の剣』>
・1963年にディズニーは、若き日のアーサー王を題材としたT・H・ホワイトの古典を、アニメーション映画『王様の剣』にした。セバスチャン・キャボットは別として、無名の声優たちが登用された作品だ。この映画のマーリンは、ホワイトが描いたように少々風変わりでぼーっとした老人で、たまたま魔法使いだったという感じだ。しかし映画では原作のなかの大きな要素をいくつか省き、その代わりに、マーリンと悪い魔法使いのマダム・ミムの魔法対決を挿入している。

<時代を超えた魔法使い>
・伝説のなかで、「魔法使いとはこうあるべきだ」というすべてを体現しているのがマーリンだ。だから何千とは言わないでも、何百というマーリンの物語が何世紀にもわたって生まれているのだろう。メアリー・スチュアートの小説『ホロー・ヒルズ』でも、マーリンが悪の魔女モルゴースにこう言う。

 わしは何者でもない。空気であり、闇であり、言葉であり約束だ。わしは洞窟に控え、水晶越しにものを見る。だが外の光の世界にはわしが仕えるべき若き王がおり、輝く剣がなすべきことを行なう。そしてわしが作る国は時を重ねていき、そこではもはやわしの名は忘れられた歌にしか見つからず、わしは使い古された知恵となっている。だがモルゴースよ、そのとき、そなたの名は闇でささやかれるものでしかないのだ。

<新しい神の登場>
・マーリンがブリテン島におけるキリスト教以前の宗教を体現し、「唯一神」に対抗する存在だというアイデアは、現代の物語に広く浸透している。たとえば映画『エクスカリバー』やメアリー・スチュアートの『水晶の洞窟』、マリオン・ジマー・ブラッドリーの『アヴァロンの霧』もそうだ。しかし、昔からあるマーリンの物語にはそうした設定はない。たとえばトマス・マロリーの『アーサー王の死』は、完全にキリスト教的背景を持つ内容だ。

<BBC製作のドラマ『魔術師マーリン』>
・アメリカのTVドラマ『ヤング・スーパーマン』(スパーマンの少年時代の物語)の成功に発奮し、英国放送協会(BBC)は2008年に『魔術師マーリン』の放送を開始した。

・若きマーリンとアーサーのドラマで、主従関係にあるふたりが友情とも呼べる絆を育んでいく。
 このドラマのアーサーは、宮廷の外で秘密に育てられているという設定ではない。ウーサーの息子であるアーサーは、自分が王子であり、将来王座につく身であることは十分承知している。マーリンはアーサーの従者になるが、魔法使いであることはアーサーと周囲の人々に絶対知られないようにしている。ウーサーが法で魔法を禁じており、魔法を使用すると死刑になるからだ。マーリンはドラゴンと親しく、ドラゴンはときおり彼に助言する。このドラゴンは、マーリンがなにをおいてもアーサーの身を守らなければならないのだと説く。このためマーリンは、魔法使いであると知られないようにしつつ、魔法を使って王子アーサーのさまざまな敵を倒すという苦労の連続だ。それにくわえてマーリンは、傲慢なアーサーを相手にウィットと皮肉で切り返さなければならない。

・幸い、アーサーは自己中心的な愚か者のように振るまってはいても、自分がそれに気づく程度の分別はある。このシリーズが描いているのは、若いふたりがともに成長し、友情の絆を育んでいき、それがその後の人生に役立っていくという物語とも言える。
 モーガン・ル・フェイはこのシリーズではモルガーナという名になっており、当初はマーリンともアーサーとも友人だ。しかしウーサーが彼女の両親を裏切ったことがわかるとふたりの敵に転じる。グィネヴィアは王女などではなくごくふつうの民のひとりで、最初にマーリン、その後アーサーの友人となり、それから王子と恋に落ちて結婚する。
 このシリーズはイギリスで大きな人気を博し、2009年初めにはアメリカに輸出された。

<魔法にまつわる危険>
・魔法や魔術の学習と訓練は、恐ろしく体力を消耗するものでもある。レイストリン・マジェーレは魔術学校での体験のせいで肌が金色になり、またその瞳は砂時計のようにくびれ、身のまわりの人や生物の死、物の崩壊が見えるようになった。このときの試練が原因でしじゅう空咳をするようになり、また生まれつき体が弱いため、大柄な兄のキャラモンに頼らざるをえないこともある。レイストリンが悪の道へと進むのも、こうした身体的な弱さが一因なのだろう。

・メアリー・スチュアート作品のマーリンは旧神たちと交信することができるが、無意識のうちにトランス状態になってこれを行なうため、てんかんの発作のようだと言われることもある。このため、マーリンの予言は正確でありブリテンの統治者は頼りとするのだが、あまりに頻繁に行なうとマーリンの力を奪ってしまう。
 こうしたケースでは、苦痛が生じても魔法使いはそれに耐える。野望や力を得たいという気持ち、あるいは本人にもよくわからない力に突き動かされて魔法を行なっているのだ。

<アレイスター・クロウリー>
・20世紀に、魔術と神秘主義にかかわる人物として悪名をとどろかせたのがクロウリーだ。「定期的に悪魔ミサを行なっている」、「悪魔とグルだ」などなど、あらゆる馬鹿げた噂話が彼の周囲には渦巻いた。

<『法の書』>
・クロウリーとその妻ローズがエジプトに滞在中の1904年、ローズに、エジプト神話の神ホルスの使いであるアイワスが憑依した。アイワスはある書をクロウリーに書き取らせ、『法の書』と名付けられたこの書は、のちにクロウリーが唱える哲学の礎となった。クロウリーは自身が、新しい時代「ホルスのアイオン」の予言者であると宣言した。その中心にあるのが魔術であり、クロウリーは魔術を、「『意志』に従って変化を起こす科学であり技芸」と定義づけた。クロウリーはのちに、イタリアのシチリアにコミュニティを創設し、これを「テレマの修道院」と呼んだ。



『宇宙人はなぜ地球に来たのか』
韮澤潤一郎     たま出版   2011/2



<宇宙人の大半は人間型>
・米陸軍の一等下士官によると「私が1989年に退役した時に、すでに57種類の異星人が軍の目録に記載されていた。異星人の大半は人間型で街を歩いていても誰も区別がつかないということです。これは生物学者を悩ませるでしょう。明らかに宇宙には二足歩行のヒューマノイド(人間型宇宙人)が多いということです。グレイタイプは三種類あり、私たちより背の高いのもあります」

<史上最大の事件が起きる>
・空軍基地でのケネディと宇宙人の会見を半年前にアレンジしたのがアダムスキーだった。そして、ケネディが乗り込んだ葉巻型UFOにはアダムスキーも同行していた。

・大統領は着陸していた船内で数時間の会談を終えて地上に出たが、アダムスキーはそのまま離陸し、土星に向かった。このときの宇宙旅行については、いわゆる『土星旅行記』として残されたが、その中には、ケネディの名はなく、「アメリカ政府の一高官」とだけ記されている。旅行記によれば、9時間で土星に到着し、それから4日間にわたって各惑星の代表者が出席した太陽系会議などが開かれたとなっている。

<なぜ宇宙人たちは協力しているのか>
・エリザベス女王の遠縁で、イギリス軍の最高司令長官だったマウントバッテン卿の私邸の庭に1950年代にUFOが着陸してコンタクトを試みたことがあった。

・UFOが着陸した時、私邸の侍従が外にいて、金髪で体にぴったりとした青いウェツトスーツのようなものを着た人間型宇宙人に会っている。しかも円盤型UFOの中に招かれた。しばらく離陸して飛行したという。

・しかし、このことを侍従から詳しく聞いていて、当時からUFO問題に精通していたマウントバッテン卿自身は特にUFOに関する政治的側面に関与し、マリリン・モンローやケネディ大統領の死に影響を与えたといわれ、1979年にアイルランドにあった自分の別邸近くで殺されている。



『リトル・ピープル』
ピクシー、ブラウニー、精霊たちとその他の妖精
ポール・ジョンソン     創元社  2014/4/13



<リトル・ピープル>
・イギリス諸島で頻繁に目撃される妖精は、英語でリトル・ピープルとも総称される。その秘密は、遠い昔から人びとを大いに悩まされてきた。

・すっかり忘れ去られてはいるが、こうして魔法にかけられて、そのヴェイルに魅了されつづけているということが、現在もリトル・ピープルたちが人間とのつながりを保ち、しかも固い絆で結びついているという喜ばしい証なのだ。
 時代をさらにさかのぼり、このイギリスという国の緑の大地へと深く踏み入るほどに、リトル・ピープルたちの存在はリアルなものとなり、かつて私たちの生活の一部となっていたことがわかる。

<彼らは産業革命時代の訪れとともに、私たちの目の前から消え去った>
・多くの人びとがリトル・ピープルを分類しようとしてきた。だが、その試みは彼らの魔法にまどわされて、その棲家の様子や性質について紹介するにとどまっている。

<昔昔のことでした……   視る力を失って>
・伝説によると、地球の四方から、海を越えてイギリス諸島に人類が渡ってくる以前、島じまのいたる所に、人間よりもかなり背の低いリトル・ピープルの先祖となる種族がいたという。彼らは長命で用心深く、やがて、大地の秘密に通じるようになった。

・彼らは自然のもうひとつの姿、この世界の向こう側にある繊細な自然を見る力にすぐれていた。彼らは、私たちの先祖の内で、そのような能力をもつ最後の種族であった。

・彼らの姿を見ることはほとんどなくなってしまったが、今日では、色のついたオーブ[写真にうつる、小さな水滴のような光球]や、山や谷などを陽気にとびまわる大地の光というかたちで姿を現すことがある。ただ、気をつけてほしい。その光は妖精の国へと導いてくれるが、やみくもに追ってゆくと、やっかいな世界に足を踏み入れることになりかねないのである。

<今も残る魔法の力>
<魔法、いたずら、そして姿なき音>
・アイルランドでは、妖精にまつわる物語が豊かに語り継がれている。

・魔法によって道に迷った人間は、戸惑いながらまったく見当違いの方角へ進んでしまう。混乱して、それが正しい方角であるかのように感じてしまうのだ。見慣れた目印は見つからず、小道や道しるべも消えてしまう。季節までもが変わってしまう。
 リトル・ピープルの種族のほとんどが、喜んで、この類の悪戯をしかける。現代になっても、私たちの感覚を狂わせ、道に迷ったものをさらに遠くへと光で導くのを楽しんでいるのだ(時には家に戻れなくしてしまう)。

<世界の境をさまよって>
<美の境界>
・河川や清流、丘、森、山脈、荒野など、物質界における変化に富んだ自然は、人間界とリトル・ピープルの世界との境界の役割を果たし、このふたつの世界が交錯する場とも考えられている。

・土地の境界はかつて、その地形と一致していた。そして、妖精たちの通り道やその棲家を、敬意をもって避けていたものだった。

<第二の視力>
<透視する力、聖なる科学>
・人間の能力を超えた透視の力によって、妖精の国をかいまみるという昔話は数多く残されている。スコットランドで知られているように、「第二の視力」にはさまざまな側面があるが、もっとも重んじられたものは、妖精の国をつねに見とおす力だ。この力をもつ者はめったにいない。

<白く泡立つ清流と泉>
<ピクシー、ニクシー、そしてシリー・スプラッシュ>
・リトル・ピープルたちはみな、水を崇めている。だが、ピクシーほどに大きな喜びを感じているものはないだろう。彼らは水を崇拝し、水のなかでたわむれることを好む。いにしえの泉や井戸にはリトル・ピープルが祀られていることがよくある。彼らはこのような場所を守る用心深くて、知恵のある番人なのだ。

<ほとばしる水の世界>
<河川のにぎやかな住人>
・女の精霊ニクシーと男の精霊ニクスは、大陸ヨーロッパの川の精霊ウンディーネと深い関係がある。どちらも古くから存在が知られており、伝説も残されていて、たいていは若くて美しい人間の姿で現れる。そして、どちらも同じつとめや力をもっている。

・彼らは人間に愛情をいただく。昔話によると、彼らは配偶者として人間を選ぶという。

<湖の女主人>
<月光に照らされた神秘の乙女>
・満月の光のもと、星降る夜空が映るほど穏やかな湖上では、驚くほど美しいリトル・ピープルの一族が見られるかもしれない。水の精アスレイは、やさしい女性の姿をしている。何百年も生きながらえ、今なお美しい。緑青色の長い髪、足の指には水かきがある。

・ウェールズ地方に棲む一族には、グラゲーズ・アンヌーンがおり、湖に沈んだ街に棲んでいる。実際、内陸の湖には、その土地にまつわる神々となった妖精が棲んでいるものだ。多くの美しい精霊たちがそうするように、彼女たちはときに人間の男性を夫とすることで知られている。

・人間の感覚からすると、妖精の時間は永遠に近いため、アスレイの世界にやってきた男性は、ほとんど永遠の命を得たかのようになる。

<砂と泡>
<海や海岸の精霊>
・海や海岸と深いつながりがある、善き隣人の妖精のなかでも、マーメイド(女性の人魚)やマーマン(男性の人魚)ほど知られている者はいない。

・アイルランドのメローやモルアーは、イギリスのマーメイドと同じもので、波の下の国であるティール・フォ・ヒンに棲む。

・もっとも有名なものは鮭の尾をもち、西暦558年までアイルランドの海を泳いでいたというリー・バンだ[この年、人魚を捕えたという記録が残っている]。

<魅惑の洞窟>
<石や鉱石、貴金属の番人>
<姿を見ることができるのは、幸運なものだけ>
・地下の奥、その内部の暖かい深みには、人間が想像するよりははるかに多く、幻想的な秘密の空間や道がある。そこはもっとも多くのリトル・ピープルが棲む世界で、数え切れないほどの種族が地下の国に存在している。

・コーンウォール地方のノッカーや、ウェールズ地方のオブラナイ(ゴブリン)、そしてスコットランドのブラック・ドワーフは、お互いが深いつながりのある種族だ。身長は30センチほど。

<魅力的な山の洞>
<地中深く棲む者たち>
・地下世界の伝説的な鍛冶屋であるドワーフたちは、山の奥深くに棲み、魔法の鋳造術を施すため、鉱石や金属を採取している。未来を予言し、思うままに姿を変えることもできる。魔法の帽子、衣、ベルト、姿が見えなくなる指輪を身につけることが多い。この一族の王国は山の内部、地下の深みにある。その地下の都市や宮殿は、人間の目には、はかりしれない価値がある宝物で溢れていると、物語には描かれている。

<自然の森>
<世界の境の森>
・人の出入りしない森は、手つかずの土地の最後の緑の聖域であり、リトル・ピープルがもっとも多く棲みついている場所のひとつでもある。

・名高いスコットランドのアバーフォイルにある妖精の塚は、牧師ロバート・カーク[17世紀の妖精研究家、妖精と交流を持ったとされる]が「知られざる国」に入った場所にある。彼は同名の書籍を著したが、ついに、妖精たちの棲む世界に移り住み、今でもそこに留まっているという。

<密集した低木>
<精霊と妖精たち>
・木を棲家とするドリュアスなどのリトル・ピープルたちは、みな、お互いに協力し合っている。それぞれが棲家にして、あるいは自分が木の一部となって、樹木のそれぞれ固有な性質を守ってきた。

<樹木と葉>
<ホビットと洞>
・森に棲む者のなかでも、めったに見られないのがホビットだ。リトル・ピープルを描いた文学作品にも、ほとんど描かれてこなかったが、この数十年、文学の世界でも復活を果たしたのは、うれしいことだ。

・このことは、妖精の信仰で、キリスト教がもたらした「大分裂」として知られるものを反映している。

・ホビットはホバニーの子孫だといわれている。ホバニーは、リトル・ピープルたちの王で、女王ハボンドの夫でもある。

<緑のガリトラップ>
<喜びのダンス、ホップ、スキップ、トロット>
・大地が四つの季節をめぐる1年のある特定の日々、リトル・ピープルたちが躍る、いにしえの豊穣を祝う魅惑的なダンスが見られることがある。

・すべてではないが、古い異教信仰の多くが、リトル・ピープルの世界に由来しているといえるだろう。

<谷間や渓谷、低地>
<いたずら好きの大騒ぎ>
・シェイクスピアが「夏の夜の夢」を書いた時、かれはクム・プカつまり、パックの棲む谷から、インスピレーションを得たのかもしれない。この谷はウェールズ地方のブレコン山地にある魔法の谷で、自然の精霊(エサソン、プカなど)が棲むという。

<ホロウ・ヒルの扉>
<小丘のまわりで>
・スコットランドやイングランド、ウェールズの古い小丘や古墳や、アイルランドのラース[古代アイルランドの土塁に囲まれた円形のとりで]も、リトル・ピープルと密接な関係がある。

・ダンスが終わると、リトル・ピープルたちは魔法の扉を通って、すばやく地下の世界に戻ってゆく。その扉は、最後のひとりが通り過ぎると、あっという間に閉じてしまう。

<星の女王>
<魔法の国の女王、マッブ>
・この世のものとは思えないほど美しい、この妖精の女王の姿を見た人間はほとんどいない。リトル・ピープルの一族にはそれぞれ女王がいるが、マッブはそのなかでもすべてのリトル・ピープルのシンボルとなっている。

・真の詩人は、その多くがもうひとつの世界を視る能力を授かっており、ブレイクやシェリーも、その幻想的な作品で妖精の女王を描いている。実際、マッブの客人として多くの詩人が妖精の国を訪れた。

・マッブをたずねた幸運な人間は他にもいる。13世紀の吟遊詩人トーマスや、騎士タム・リンもそのひとりである。ふたりともその名をとった妖精を主題としたスコットランドの古い物語歌謡の主人公である。

<霧のたちこめた草地>
<レプラホーンの笑いが響く>
・リトル・ピープルのなかでも、とくに広く知られているものといえば、アイルランドやスコットランド、ウェールズ、イングランド北部に出没する、レプラホーンをおいて他にはいない。

・レプラホーンは3センチから45センチほどの身長で、緑色の服に3つのとんがりのある帽子をかぶっている。

<ぬかるんだ沼地>
<フィーリッシュ・ファイアからリング・オブ・パワーまで>
・もっともよく知られているリトル・ピープルの一族のうち、世界中でもっとも一般的に見られるのが、玉虫色に輝き、燐光を発するボールや、光のオーブとしてあらわれるものたちだ。

<畑や農場を跳ね回る者>
<労苦と土壌>
・農作業を手伝うブラウニーほど、人間との結びつきが強いリトル・ピープルはいない。

・もっとも有名なブラウニーは、物語歌謡にうたわれており、「エイケン・ドラム」という童謡のなかに語り継がれている。

<暖炉への敬意>
<幸運の精霊をなだめる>
・リトル・ピープルを引きつけて家にとどめておくための第一のルールは、暖炉をきれいに保つことだ。

<魔法の庭>
<植物と花>
・妖精たちは無垢を愛し、思いやりをもって、誇り高く子供たちを守る者である。だから、彼らの分身ともいえる幼い子供たちの前に頻繁に姿をあらわすのは不思議なことではない。

<ごきげんよう>
<もうひとつの世界へ>
・妖精をひとめ見たいと願っている人は、クローバー探しから始めるとよいだろう。

<リトル・ピープル辞典>
(アイルランド海の守り神 IRISH SEA WATER GUARDIANS マン島)
・水の守護妖精、あるいは海の精。男の妖精と女の妖精がいて、美しく小さくて体長が数センチほどしかない。海の神マナナーンに仕えている。

(アイルランドのエルフ IRISH ELVES アイルランド)
・羽をもたない妖精の総称。

(アンクー ANKOU  コーンウォール、ウェールズ、アイルランド)
・黒いローブで顔をおおい、亡くなったばかりの人間の魂を集める。死神、時の翁とも呼ばれる。

(アンシーリー・コート UNSEELIE COURT スコットランド)
・神の祝福を受けていない不気味で邪悪な妖精。すべての邪悪な妖精たちがアンシーリー・コートに属している。ときに空を飛び、人をさらい、奴隷にする。

(アンスロポジャイ ANTHROPOPHAGI イングランド)
・イングランドの昔話によると、これらの「人喰い族」には頭がなく、鼠蹊部に小さな脳がある。そして目は肩に、口は胸にあるという。

(インプ  IMP )
・悪戯好きな妖精、小さな悪魔。中世ではおなじみの魔女(ウィッチ)の別称ともなる。

(ウィルベースト UILEBHEIST シェットランド諸島、オークニー諸島)
・島周辺の海の番人。たくさんの頭をもつ海の怪獣や海竜の姿であらわれる。

(ウーマン・オブ・ザ・ミスト WOMAN OF THE MIST イングランド)
・霧の女。道端で小枝を拾っている老女の姿であらわれ、霧の中へと消えていくという。

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