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『激甚気象はなぜ起こる』
坪木和久  新潮社    2020/5/27



<超大型のスーパー台風ラン(第21号)>
・機体はガタガタと揺れ続けている。突如として静穏がおとずれ、目の前の雲が切れて遥か彼方まで視界が広がった。そこには直径90㎞の巨大な雲のない世界、地球大気で最も巨大なエネルギーを持つ渦が取り囲んでいる風景が広がっている。

・その後、台風ランは北上し、静岡県に上陸して甚大な災害を引き起こした。それは過去30年間で9番目に大きな気象災害となった。この2017年の7月には九州北部豪雨が発生し、43人の命と多くの財産が失われた。その翌年、まさに本書の構想がもちあがったとき、西日本豪雨と北海道の洪水を含む「平成30年7月豪雨」が発生した。さらに気温40℃を超える猛暑が続き、気象庁はこの猛暑を「災害」と表現した。2018年の1月下旬から2月上旬には、北陸地方の豪雪が大きな災害をもたらした。

・日本には台風、豪雨、洪水、豪雪、雷雨、降雹、竜巻、突風、猛暑、干ばつなど、あらゆる気象災害があり、しかもそれらが毎年どこかで発生している。それに加えて地震、火山、土砂崩れ、さらに津波など、日本人は自然災害といつも対峙して暮らしていた。そのため自然に対して強い畏敬の念を持ち、風の神、雷の神、山の神、海の神、やおろずの神々に日々祈り、災いを鎮めようとしてきた。しかし自然は厳しく、おかまいなく人の命を奪い、財産を破壊してきた。

・この厳しい自然を理解するため、気象学が発展し、ダム、堤防、防潮堤などのインフラが高度に整備され、その結果、気象災害による人命と財産の損失は減少した。しかしながら、自然は人智をはるかに超えており、災害は常に想定を超えたところで発生する。
 今世紀に入り、気象災害はより激甚化しているように感じられる。それはなにも専門家が指摘しなくても、多くの人が感じていることではないだろうか。特に2018年は気象が激甚化しているということを、自然がこれでもかと言わんばかりに見せつけた年であった。地球温暖化はほんとうに起こっているのかという温暖化懐疑論はもはや無意味である。温暖化という気候変動は現実に進んでおり、それに伴って気象が激甚化している。

<「これまで経験したことがない」という言葉を何度耳にしたことだろう。>
・これまで経験したことのない気象から命を守るために、その実態とメカニズムを理解しておくことは不可欠である。そのうえで防災を考えることが、命を守るためにも最も効果的である。その理解を目指して、激甚気象について分かりやすく説明することを目指した。

・私は気象学者であって防災の専門家ではない。それゆえに本書は防災の指南書ではない。豪雨や猛暑、台風など激しい気象がなぜ発生するのか、その実態とメカニズムを理解するためのものである。防災の中で最も重要なことは命を守ることである。そのためには命を脅かす相手、すなわち激甚気象を知ることが必要で、これこそが効果的で適切な避難を実現する。

・本書の主役は「大気と水蒸気」である。これらはともにきわめて巧妙で精密なからくりを有している。そこには奥深い自然のメカニズムが隠されており、その理解はすなわち地球温暖化を理解することでもある。

・災害をもたらす大雨を豪雨とよぶように、大規模な災害を引き起こす気象を、ここでは「激甚気象」とよぶ。防災の専門家でない者が書いたので、本書は気象に関わる防災を、防災の専門家とは異なる立場から考えるものである。だからこそ防災に関わる人、気象災害をどう考えたらよいかと思っている人に読んでいただきたい。

<繰り返される災いの年>
<災いの年>
・豪雨や地震などの激甚災害は、日本のどこでも起こりうる。本書を読まれている方の住んでいるところでも必ず起こる。「そんなことはない。私は生まれてこのかた何十年もここに住んでいるが、これまでそんなひどい災害は経験したことがない」、そういわれる方は多いかもしれない。しかし、それは単に確率の問題なのである。もし激甚災害を経験していないとすれば、これまでたまたま幸運だっただけのことである。

・兵庫県の瀬戸内海側、姫路からバスで北東に1時間ほどのところ、遥か彼方に六甲山を望む播州平野のなかに田園地帯がある。そこが高校3年生まで過ごした私の故郷である。特に根拠はないが、そこは国内でも最も自然災害の少ない地域だと思う。

・それは床下浸水程度だと思うが、どれくらいの被害かは覚えていない。いつのことだったのか、台風だったのか豪雨だったのかも分からない。それ以来、自宅への浸水は経験しなかった。

・私の故郷も大雨はほとんどなく、むしろ水不足に悩まされていた地域であった。ただ、台風は例外である。それほど多くはないが、子供のころ台風の暴風におびえた記憶や、ビニールハウスが台風の被害を受けた記憶がある。

・私自身がほとんど経験したことがないように、激甚気象はまれにしか起こらない。しかしそれは人の寿命という長さと比べるからまれに思えるのである。あるいは経験したことがないといえるのである。長い時間、たとえば100年や200年で考えれば、日本のどこでも激甚気象は必ず起こる。それに遭遇するかどうかは、確率の問題なのである。

<2004年の災害>
・日本の暖候期に豪雨をもたらす水蒸気は、多くの場合、太平洋側から流れ込む。実際、暖候期の強い雨の多くは西日本から東日本の太平洋側で発生している。梅雨前線に伴う豪雨の場合も太平洋側で発生している。梅雨前線に伴う豪雨の場合も太平洋や東シナ海から、水蒸気が流れ込むことが多いのだが、2004年の新潟・福島豪雨と福井豪雨では、水蒸気の流れが日本海上を回って本州の日本海側に到達することで、梅雨前線にそって豪雨が発生した。このようなことは梅雨期にときどき発生する。実際、04年以外にも新潟県を中心とした豪雨として、1998年8月に新潟市で日降水量が265mmと1886年の観測開始以来最大の雨となり、浸水などの大きな被害が発生している。2005年6月28日には新潟県上越市で330mmとなり、浸水などの大きな被害が発生している。2005年6月28日には新潟県上越市で330mmの豪雨、11年には「平成23年7月新潟・福島豪雨」と気象庁が命名した豪雨が発生している。この豪雨では福島県で700mm、新潟県で600mmを超える降水が観測された。これは新潟県の7月の月平均降水量の2倍にも達する降水量である。このような大雨が太平洋側でなく、日本海側で発生することは驚きである。

・次に台風についてであるが、日本の場合、1981~2010年の30年の平均では、台風の発生数は25.6個、接近数は11.4個、そして上陸数が2.7個である。

・2004年の台風は上陸数が、平均を大きく上回る10個と極端に多いことで特徴づけられる。

・9個の台風で、215人の死者・行方不明者が出た。台風災害だけで1年に200人を超える犠牲者が出たのである。これで日本はほんとうに防災先進国といえるのだろうか。台風に対してあまりに無防備ではないだろうか。
 これらの台風のうち、特に被害が大きかったのは、ソングダー(第18号)とトカゲ(第23号)である。風による被害が大きいものを風台風、雨による被害が大きいものを雨台風という言い方をすることがある。

・なぜ、この台風では日本海側にこれほどの豪雨が発生したのだろう?台風トカゲは高知県に上陸したあと、大阪府南部に再上陸し、その9時間後には関東地方で温帯低気圧になっている。日本海側の豪雨も台風の東側で太平洋側から流れ込んだ水蒸気がもととなっている。

・台風と梅雨前線・秋雨前線の組み合わせは、豪雨の発生する典型的気象状況だ。台風中心の東側で南風によって日本本土に流れ込む水蒸気が、秋雨前線付近の上昇気流で持ち上げられ大雨となったことは十分考えられる。さらに私たちのコンピュータシミュレーションから、台風周辺の上昇気流によって、高度5㎞付近の零度層(融解層)より上空で、多量の雪粒子が形成され、それが近畿地方の上空の南風で日本海側まで運ばれて豪雨を発生させたことが分かった。台風トカゲでは、このような特別なメカニズムがはたらいて豪雨が起こり、大洪水となったのである。

<寺田寅彦>
・ところで、私が子供だったころ、「天災は忘れたころにやってくる」という言葉をよく聞いたものである。災害の少ない瀬戸内式気候の地域で育ったので、あまり天災という事態にぴんとこなかったが、この言葉は記憶によく残っている。この言葉は寺田寅彦の言葉といわれている。寺田は物理学者でありながらも、多くの随筆を残した文筆家である。しかしどの文章にもこの言葉そのものは出てこない。実際には弟子の中谷宇吉郎が後に寺田の考えをその言葉にして広めたということらしい。

・寺田寅彦は死去する前年の1934年11月に、前出の「天災と国防」という随筆を残している。80年以上も前に書かれた文書であるが、現代でも重要な示唆に富む内容が多く含まれている。むしろ今の時代だからこそ読み返して学ぶべきものが多く書かれているといってもよい。この随筆が書かれたころは、満州事変(31年)や日本の国際連盟脱退(33年)など、軍部が台頭した時代であった。寺田は戦争に突き進む日本を憂いつつも、それとともに自然災害の脅威の大きさを説いている。これに描かれている9月21日の近畿地方大風水害というのは34年9月の室戸台風である。

・すなわち防災において最も重要なことは、平時からの備えであり、行政は平時から災害に対する備えを十分にしておかなければならないことを指摘している。残念ながら現代においても、平時からの災害に対する備えができているかというと、全く不十分といわざるを得ないのが現状ではないだろうか。

<2018年の災害>
・2018年もまた災いの年であった。寺田寅彦のいう「悪い年回り」であり、多くの激甚災害が発生し、多数の人命と財産が失われた。災害のあと農業や工業の生産活動に大きなダメージが残り、経済活動にも大きな影響を及ぼした。2月には大雪、6月には大阪の大震災、6月下旬から7月上旬にかけての北海道と西日本の豪雨、さらにそれに続く猛暑が追い打ちをかけた。この北海道と西日本の豪雨を含む「平成30年7月豪雨」では、04年の10個の台風による死者数を超え、平成が始まってはじめて200人を超える犠牲者数となった。一つの水害で200人を超える犠牲者が出たのは1982年の長崎豪雨以来である。
 台風による災害も多数発生した。

<豪雪>
・2018年の最初の激甚気象は北陸地方の豪雪であった。17年12月~18年2月は寒さの厳しい冬であったのだが、その原因は太平洋熱帯域で発生していたラニーニャ現象と考えられている。ラニーニャ現象はエルニーニョ現象と反対で、熱帯域の偏東風が通常よりも強く、西太平洋熱帯域の海面水温が高くなる。このため、そこでの対流活動がより活発になる。その結果、日本付近では偏西風が南に蛇行し、日本付近には寒気が流れ込みやすくなり、ラニーニャ現象が発生すると厳冬になる傾向がある。そのような気候状態のなか、1月下旬と2月上旬に2度の豪雪が発生した。

<平成30年7月の豪雨――北海道の豪雨>
・一般的に高緯度ほど地球温暖化の影響が顕著となる。北海道は日本の中でも最も温暖化が顕著に表れる地域である。気温、降水、台風、植生、海洋、生態系などすべてが今後大きく地球温暖化の影響を受けることが予想される。また、北海道における豪雨や台風に伴う気象災害は今後さらに激甚化するだろう。2016年に3個の台風が太平洋側から上陸したことや、18年の梅雨前線の停滞に伴う大雨はその一端を表すものと考えられる。このような前線の停滞は、この年だけではない。たとえば16年7月下旬から8月上旬にかけても同様な停滞前線により、北海道に大雨がもたらされている。これらを見ると、北海道に梅雨はないという言説は、もはや過去のものと思える。少なくとも北海道において、梅雨や台風に伴う豪雨に対して対策を真剣に考えなければならない時代に入ってきたことは、平成30年7月豪雨の教えるところである。

<関東甲信越地方の速い梅雨明け>
・「梅雨明け」の日は自然現象が決めるわけではない。雨や曇りの多い梅雨という天候から、太平洋高気圧がおおって晴天で暑い天候への変化は、太平洋高気圧が急速に張り出して突然起こることもあれば、穏やかに、ときには行ったり来たりしながら季節が進行していくことで起こることもある。1993年、日本がはじめて米を輸入した大冷夏の年は、梅雨が終わったことさえはっきりせず秋になってしまった。梅雨明けというのは自然現象ではなく、人が勝手に定義するものである。

・気象庁によると2018年の関東甲信地方の梅雨明けは6月29日ごろと、1951年以降ではじめて6月中に梅雨が明けた。関東甲信の平年の梅雨明けは7月21日で、この3週間以上の早い梅雨明けは確かに驚きであった。

・梅雨が明けるというのは、一般的に太平洋高気圧の勢力が強まり、停滞する梅雨前線が高気圧に取って代わられるということである。

・太平洋高気圧は真夏の暑い天気をもたらすだけではなく、梅雨に伴う降水もコントロールする。さらに西日本豪雨の後の猛暑もこの太平洋高気圧がもたらすことになる。このように太平洋高気圧は日本の暖候期の天気を左右する大きな要因となっている。

<平成30年7月豪雨――西日本豪雨>
・「三日三晩、雨は降り続き、川という川は溢れ、田畑も家もなにもかも水につかってしまった」。そんな日本昔話に出てくるような場面が、現実となったのが西日本豪雨であった。梅雨のことを韓国ではJangmaとよぶ。これは“長い間降る雨”という意味だと韓国からの留学生が教えてくれた。

・県単位で最も多くの犠牲者が出た広島県の、6月28日~7月8日の総降水量は500~600mmで、特に7月5日と6日に多くの雨が降っている。広島県では強い雨が長い期間続いたことで総降水量が大きくなり、多くの地域で土砂災害が発生した。広島県での死者の多くはこの土砂災害によるもので、水害による死者がほとんどを占める岡山県と対照的である。

・広島県は同様の災害を、2014年8月20日に発生した豪雨で経験している。この豪雨は気象庁が名称を付けた「平成26年8月豪雨」の一部である。このときは非常に強い線状降水帯が広島市付近に発生し、安佐北区、安佐南区を中心として土石流や崖崩れにより75人が犠牲となった。このころからマスコミでは線状降水帯という言葉が、豪雨の原因としてしばしば用いられるようになった。

・広島県、岡山県についで犠牲者が多かった愛媛県では、土砂災害と水害の両方によって犠牲者が発生した。水害のうち肱川(ひじかわ)の流れる大洲市で発生した洪水は、甚大な被害をもたらした。肱川には、「肱川あらし」とよばれる、他では見られない神秘的自然現象がある。大洲盆地でできた霧が強風とともに肱川に沿って伊予灘に流れる現象で、「川を下る白い龍」とよばれる。

・それによると西日本豪雨は、関東甲信地方の異常に早い梅雨明け、梅雨前線の異常な北上による北海道の豪雨、さらに豪雨後の猛暑などの一連の異常気象の一つとして捉えられている。

・もう一つのジェット気流は寒帯前線のジェット気流で、ユーラシア大陸の北極寄りを流れている。同様にこれが大きく蛇行したことで、オホーツク海高気圧が発達したと考えられている。これらの2つの高気圧が非常に勢力を強めたことで、その間の梅雨前線が強化し長期間持続したのである。

<猛暑>
・前節でも触れたように、「平成30年7月豪雨」が発生した2018年7月には猛暑であった。埼玉県熊谷市で18年7月23日の日最高気温が41.1℃と、13年8月12日に高知県四万十市で記録した41.0℃の日本記録をぬりかえた。

<台風>
・豪雨や猛暑とともに、2018年は台風によっても甚大な災害がもたらされた年であった。18年の台風の発生数は29個で、平均発生数と比べると多い。また、この年の上陸数は5個で、1951年以降5番目に多い。

<地震と台風>
・だから防災においては、強い地震が台風のときに起こることを想定することが必要である。

・寺田寅彦の「天災と国防」には次のような一節がある。
「わが国の地震学者や気象学者は従来かかる国難を予想してしばしば当局と国民とに警告を与えたはずであるが、当局は目前の政務に追われ、国民はその日の生活にせわしくて、そうした忠言に耳をかす暇がなかったように見える。誠に遺憾なことである」
 この状況は今も改善しているようには思えない。むしろ経済を優先するために、悪くなっている部分もあるのではないだろうか。

<なぜ日本は激甚気象が多いのか>
<日本の気候と気象災害>
・日本は自然災害のデパートメントストアである。その品揃えの数と種類の多さは、世界中のどこよりも勝っている。このデパートでは誰も売ってほしくないにもかかわらず、むりやり商品を売りつけて、高い代金を要求してくる。しかも悪いことに手を変え、品を変え、何度も売りつけてくるのである。さらに、その繰り返しの時間が年々短くなり、払わなければならない代償は大きくなる一方だ。

・「天災と国防」で、寺田寅彦は次のように述べている。
「日本はその地理的の位置がきわめて特殊であるために<中略>、気象学的地球物理学的にもまたきわめて特殊な環境の支配を受けているために、その結果として特殊な天変地異に絶えず脅かされなければならない運命のもとに置かれていることを一日も忘れてはならないはずである」。

・「地震津波台風のごとき西欧文明諸国の多くの国々にも全然無いとは言われないまでも、頻繁にわが国のように激甚な災禍を及ぼすことは、はなはだまれであると言ってもよい」
 台風、梅雨、豪雨、豪雪などの気象学的災害に加えて、プレート境界に位置していることで地震、津波、火山など地球物理学的災害が日本では絶えず発生する。そのような特殊な環境はヨーロッパにまったくないとはいわないが、世界的に見ても日本は自然災害が最も頻繁に発生する国であることをのべている。

<大陸の東岸で低気圧は爆発する?>
・大洋の西側にだけ強い北向きの流れがあるのも、地球が球体であるからで、これについてはストンメルという海洋学者が理論的に説明している。低緯度から中緯度に熱を運ぶ黒潮やメキシコ湾流は、日本や米国東岸地域の水平温度傾度を大きくするだけでなく、中緯度で暖かい海から熱と水蒸気を大気に供給する役割をしている。前節で説明したように南北方向の温度差は、温帯低気圧を発生・発達させる。大陸の東岸は温帯低気圧が発達しやすい地域であることが分かっている。さらに、最近の研究で、黒潮が温帯低気圧の発生や発達に大きく寄与していることが分かってきた。秋から冬、そして春にかけての日本付近で南北温度傾度が大きくなる季節に、爆発的に発達する低気圧、“爆弾低気圧”がしばしば日本付近で発生し、大きな災害をもたらすことがある。

・激しい地吹雪をもたらす爆弾低気圧は、しばしば大きな災害を発生させる。急速に発達する爆弾低気圧は、急速に天候を悪化させ、暴風雪をもたらすので、避難が間に合わず巻き込まれて遭難する。2013年3月2日、前日に関東地方に春一番の強風をもたらした低気圧が、日本海で急速に発達しながら北海道を通過した。

<モンスーン>
・日本の気象が厳しい理由には、モンスーン、すなわち季節風領域にあるということもある。

<西太平洋は地球上で最強の熱帯低気圧の発生地域>
・梅雨と並んで日本の激甚気象として最大のものが台風である。古来、日本は台風の強い影響を受けてきた。台風が日本の記録にはじめて出てくるのは、おそらく日本最古の歴史書、日本書紀(720年)であろう。

・台風とは熱帯低気圧の一つで、経度180度以西の北太平洋および南シナ海で発生する地上風速およそ17m/s以上のものをいう。東太平洋と北大西洋の熱帯低気圧はハリケーンとよばれる。また、南太平洋とインド洋の熱帯低気圧はサイクロンとよばれる。

<中緯度は渦に満ちあふれている>
・それでは中緯度にはもう一つ別のハドレー循環が、極向きに熱を輸送しているのだろうか? 残念ながらそうではない。もしそうであれば中緯度の気象はもっと穏やかであっただろう。実際には日本が位置する中緯度とは、大気中に渦が満ちあふれ、それによって激しい気象がもたらされる領域なのである。

<なぜ豪雪が発生するのか>
・このような豪雪が毎年のようにもたらされるのは、日本海が日本列島の北西側にあることが原因である。すなわちユーラシア大陸と太平洋に比べてもう一段規模の小さい海陸分布が、豪雪という日本の激甚気象の発生原因となっている。

<激甚気象から命を守るために>
<いかに避難するか>
・本書で何度か出てきた寺田寅彦の「天災と国防」のなかに、「防災は平時から」に関連した重要な記述がある。
「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を充分に自覚して、そして平生からそれに対する防御策を講じなければならないはずであるのに、それがいっこうにできていないのはどういうわけであるか。そのおもなる原因は、畢竟そういう天災がきわめてまれにしか起こらないので、ちょうど人間が前車の転覆を忘れたころにそろそろ後車を引き出すようになるからであろう」 
 この部分が「天災は忘れられたる頃来る」という名言のもととなったと思われる。これも重要であるが、さらに重要な点は「平生からそれに対する防御策を講じなければならない」と、平時における準備の重要性を説いているところである。そしてそれができていないことを問題点として指摘している。80年余りも前に書かれた文章であるが、現在でも同様に平時からの備えは容易ではない。

<激甚気象>
・このようにこれまで気象学と災害を結び付ける適切な言葉がほとんどなかったたが、激甚災害をもたらす気象という意味で、激甚気象はまさに適切な表現だ。それで私はこの言葉を本書の題名としたいと考えた。

・私の夢は、5万8000フィートの上空から無人飛行機が常に太平洋上の台風を監視し、必要に応じてドロップゾンデを投下し、そのデータが高解像度の数値予報システムに取り込まれて、進路だけでなく、台風の強度についても精度の高い予報が常に出されることである。



『2050年の日本列島大予測』
36年後のニッポンを知れば2014年がわかる
佐藤優 監修 普遊舎  2014/1/17



<2050年までの日本と世界年表>
<2019年3月 新国立競技場で建て替え完成>

<2020年7月 東京で夏季オリンピックを開催>
11月 国際核融合実験炉(ITER)で、プラズマ実験を開始
12月 小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に帰還
(2020年頃)ロシア、日本への天然ガス供給基地を極東に建設の計画
(春)東京オリンピックの開幕前に8K画質のテレビ放送を開始
(年度内)新東名高速道路の全区間が開通
・首都圏3環状道路が、接続
・中央リニア新幹線を一部試験開業
・ゆりかもめを延伸
・有明などの臨海エリアにスポーツ施設を新設
・国際宇宙ステーションの運用が終了
・中国が独自の宇宙ステーションを建設
・日本のJAXAが「H3ロケット」を初打ち上げ
・新宿駅と駅前の大規模な改良工事が終了

<2021年3月 3・11東日本大震災から丸10年を迎え、期間限定の「復興庁」を廃止>
(目処)インドの人口が14億人に達し、中国の人口を上回り世界一に(国連予測)
(年度内)福島第一原発で、核燃料デブリの除去作業を開始(予定)

<2022年6月 カタールでサッカー・ワールドカップを開催>
(以降)在日米軍の沖縄・普天間基地を日本へ返還(辺野古基地への移転が前提)
(年度内)ドイツが国内の原子力発電所を全廃

<2023年 (年度内)新名神高速道路の全区間が開通>

<2025年(頃)世界の人口が80億人に達する(国連予測)>
(頃)国際通貨体制が「ドル・ユーロ・人民元」で3極化する(世界銀行予測)
・中国が名目GDP値でアメリカを抜き、世界1位になる(ゴールドマン・サックス予測)
・大深度地下に新東京駅を建設し、羽田・成田空港と直通(浅草線短絡新線)
(年度内)北陸新幹線を「金沢―敦賀」区間まで延伸
・世界最高層ビルがUAEに完成
(以降)在日米軍の沖縄・牧港補給地区を日本へ返還

<2026年(年度内)渋谷駅と駅前の大規模改良工事が終了>
(年度内)日本の人口が1億2000万人を割り込む(総務省予測)
(目処)バルセロナの世界遺産「サクラダ・ファミリア」が完成

<2027年3月 国際核融合実験炉でD-T反応による核融合反応を開始>
(年度内)中央リニア新幹線が開業

<2028年6月 日韓大陸棚協定が失効>
(以降)在日米軍の沖縄・那覇港湾施設を日本へ返還

<2030年(頃)インドが名目GDP値で日本を抜き、世界3位になる(ゴールドマン・サックス予測)>

<2035年(頃)「2030年代半ばに有人火星探査を行う」(アメリカ政府)>
(年度内)北海道新幹線を「新函館――札幌」区間まで延伸

<2040年(頃)夏の北極海に氷がほとんどなくなる(米国立大気研究センター)>
・人類の夢、核融合炉は2040年の実用化を目指す!

<2042年(年度内) 日本の65歳以上人口が最多期【3878万人】を迎え、約4割が高齢者に(総務省予測)>

<2045年12月 セヴァストポリ軍港の駐留期間が終了>
(頃)コンピューターの知能が全人類を超える(2045年問題)
(年度内)中央リニア新幹線を延伸

<2047年7月 香港・特別行政区の設置期間が終了>

<2048年(年度内)日本の人口が1億人を割り込む(総務省予測)>

<2049年12月 マカオ・特別行政区の設置期間が終了>
(年度内)昭和時代に生まれた者が全員60歳以上になり、平成生まれの60歳以上の「高齢者」が出現する

<2050年12月 バイコヌール宇宙基地の租借期間が終了>
(頃)・各国GDP予測「中国24.5/米国24.0/インド14.4/日本4.1兆ドル」(日本経団連)
・福島第一原発の廃炉作業を完了(予定)
・対策を取らなければ世界の水害被害総額は約98兆円に達する見込み
・日本では温暖化の影響による海面上昇の影響で、台風による高潮と満潮が重なると約4m水位が上昇、水没危機地帯が増す
・日本の再生可能エネルギー発電が占める割合が70%台に
・日本とトルコが同盟国となり、トルコで戦争が勃発、大戦へ発展(『100年予測』より)

<「人口問題」が中国を押しつぶす ⁉>
<新興国を襲う少子高齢化という病>
<2050年にも残る一人っ子政策の影響>
・特に10億を超える人口を擁する中国が少子高齢化問題に直面した時のダメージとインパクトは並大抵ではない。

・現在、中国の一人っ子政策は全土で規制緩和に向かっている。

・スタートから30年あまり経った一人っ子政策は、中国に根づいてしまった。その政策の影で、二人目の子として生まれた子どもたちは黒孩子(クロヘイズ)と呼ばれる。
 210年に中国国家統計局が行った人口調査では、戸籍を持たない人の数が1300万人に及び、その大半が黒孩子だったという。黒孩子は戸籍上存在しない事になっているため国民として認められておらず、学校教育や医療などの行政サービスを受けることができない。そのため、第2子を作ることは中国でタブー化してしまった。

<外国人労働者増で社会が変貌>
<日本語は外国人労働者には最大の参入障壁となる>
・TPPが締結されれば、労働者も国家間を自由に移動できるようになる。その結果、2050年の日本には外国人労働者が大量に流入していると予想される。

<日本は大量の外国人労働者を受け入れることができるか?>
・少子高齢化で労働人口が減少し続ける日本は、海外労働者を受け入れなければ働き手もおらず、介護サービス、工場や建設はもちろん、税金などの収入減で社会保障も維持することが難しくなる。
 企業の代表となる経団連は「多様な価値観・発想力による組織の活性化、国際競争力の観点からわが国の多くの企業にとって、グローバルな人材マーケットから優秀な人材を獲得することが急務」と提言。早くから海外労働者の受け入れには積極的な姿勢を見せている。
 しかし、現在の日本の体制下で大量の外国人労働者を受け入れることは、経済・政治・文化においても大きな混乱を招くことが容易に予想できる。

・外国人労働者は、家賃の安い住居を求めて、自然と交通インフラが整っている郊外に集中する。そして街の一角で同じ国や、同じ宗教同士が集まり、独自のコミュニティーを形成することが予想される。
 地方自治体や継続的に郊外に住む少数の日本人移住者にとって、変貌する地域社会、経済環境、政治、文化、宗教、教育、犯罪などへの対策はこれからの懸念事項だ。
 外国人が多い企業や地域では公用語も問題になる。それに対する抜本的な対策と対応は、当然のごとく国に判断を求めることになる。
 2050年にもなれば、一時就労ビザで働く外国人と日本人間の子どもや、日本に帰化した外国人労働者の子どもなど、在日2世問題も多国籍化するだろう。と同時に、税金から社会保障、また保険の問題、そして参政権なども社会問題として浮上してくるはずだ。

<TPP締結で日本は破滅する?  母国なき富裕層と優秀人材の海外流出>
・高額課税を嫌い、ためらいなく母国を棄てる新富裕層、企業や研究所の冷遇を理由に外資系企業やアメリカの有名大学ラボに移籍する高度な知識を持った人材「富と知の海外流出」は、日本の損失でしかない。これを食い止めなければ2050年の日本は有力な武器を失っていることになる。

<低課税を求めて海外へ流出する新富裕層たちが止まらない>
・IT系や金融系事業の起業に成功し、若くして莫大な資産を手に入れた新富裕層たち、彼らの低税率の国々への移住に拍車がかかっている。たとえば、シンガポールは金融機関を通じた運用益は非課税。高所得税率は最大で26%と日本よりも低税率で、高所得者の得る恩恵は大きい。そのため日本からの移住者は年間1000人にも及ぶという。これは当然、日本に収まる税金が減ることを意味している。

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